皆さま、こんにちは。 TOMA税理士法人ヘルスケア事業部です。 先生方からよくいただくご質問のひとつに、「医療機器を導入したいけど、リースがいいの? それとも買った方がいいの?」というお話があります。 これは、開業時でも開業後でも良くいただくご質問ですが、その医院の現状に応じて回答は変わってきます。 判断を間違えて「しまった!」とならないように、医療機器の導入方法についてお話しさせて頂きます。
■ リース取引の基本
まず、リース取引の基本からまとめてみたいと思います。
1. リース取引とは?
リース取引とは、リース会社がメーカー等から医療機器を購入して、それを賃貸する取引をいいます。そのため、医療機器を所有しているのは、リース会社になります。
2. 中途解約不可
リース契約は、原則として中途解約が出来ません。仮に中途解約する場合には、残っている債務(リース代金の累計額)を返済しなければなりません。
3. リース取引の特徴
リース契約にすると初期投資が抑えられるため、運転資金に余裕ができます。逆に、初期投資にお金を出せる状況であれば、リースではなく購入にすると支払総額が少なく済む事が多く、最終的に自分のものにもなります。
■ リース取得と購入のメリット・デメリット
次にリース取得と購入のメリット・デメリットをまとめてみたいと思います。
1. リース取得の場合
【メリット】
- 医療機器を保有していると通常かかってくる保険料や固定資産税がリース料の中に含まれているため、固定資産税の申告や損害保険の契約手続きが不要です。 事務手続上の煩わしさが少なくなります。
- リースは借入ではないため、借入枠を残しておくことができ、いざという時借入をすることができます。借入と比べ、比較的審査手続きが簡単に短期間で済みます。
- 刷新が多い医療機器については、契約更新の際に新しい医療機器に切り替えることで、医療機器の陳腐化を防ぐことができます。
- 購入して償却方法に定率法を選択した場合には購入当初の費用計上額が多くなります。 それに比べリースの場合には毎年一定額の支払となるため、費用を平準化することが出来ます。
【デメリット】
- 基本的に中途解約不可であるため、使わなくなっても残ったリース債務について、違約金として返済義務があります。 つまり、解約する意味がなく、医療機器を使わなくなってもリース料を支払い続ける必要があります。
- 購入に比べるとリース会社の利益や諸経費などを負担するため、支払総額は割高になることが多いです。
- リース契約形態によっては、設備投資に関する税務上の優遇措置を受けられない場合もあります。
- リース期間が終了しても自分のものになりません。 リース契約後も再リース料が発生し、支払ったリース料に追加で費用が発生してしまいます。 刷新が少なく長く使える医療機器については、このデメリットが大きくなるため、購入の方が有利になることが多いです。
2. 購入の場合
基本的にリース契約の場合と逆の関係になります。
【メリット】
- リース会社の諸経費が掛からないので、支払総額がリース取得よりも少なくすむことが多いです。
- 一定要件を満たす場合に、税法上の優遇措置である医療用機器等の特別償却や生産性向上設備投資促進税制の適用を受けることが出来ます。
- 一括購入の場合には、その後の支払いが出ないため、資金管理がしやすくなります。
- 定率法で減価償却した場合に、購入当初においては費用計上額が大きくなります。
【デメリット】
- 医療機器が自己所有となるため、償却資産税の申告や損害保険の加入など事務上の手続きが負担になります。
- 借入を行って購入する場合には、借入の枠を使ってしまうことになります。
- 医療機器の切り替えの際には、再度購入が必要になります。
■ まとめ
以上のように、リース取得と購入はメリットとデメリットが相反関係にあります。 医院のその時の現状に応じて、判断していきます。 また、医療機器を導入する際には、先生ご自身の実現したい医療の内容や、診療方針に合っているか、だけでなく、資金繰りや採算を考慮して検討します。 高額な医療機器を導入してもその機械をスタッフが使いこなせない場合、そもそも対象疾患の患者が集まらない場合など、「しまった!」事例も見受けられます。 月間の稼動回数予測から、月間収入、年間収入を予測し、投資回収までの期間を試算することが大切です。 収入見込みによっては、導入予定の医療機器より仕様を落とした機器を検討するなど、無理のない設備投資計画を立ててください。 医療機器の導入に際しましては、気を付けるべき事項が多数ありますので、お早めに専門家に相談することをお勧め致します。
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