こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 前回に続き、クリニックの人事マネジメントについてお伝えしたいと思います。
■ 個別面談実践の落とし穴
私が個別面談を導入した当初、失敗したお恥ずかしい事例をお伝えします。
1. 『いつでも聞いてね』では、スタッフからは聞けない! 私は、スタッフが聞きやすい雰囲気を作りたいと思い「疑問点、問題点など何かあったらいつでも聞いてね!」と伝えていました。 しかし、この言葉はスタッフにとって、却って聞きにくい状況を作っているという意見を耳にしました。 スタッフからは、院長先生に話しかけにくいと思いますので、1日の勤務の中で1分~3分程度でいいので、院長先生からスタッフと対話していただくことをお勧めします。 ちなみに私は、朝のミーティング後に1分~3分対話をするようにしております。 2. ゴール明示なくして実行なし! 仕事を依頼するときは、仕事の出来映えをはっきり伝えることが重要です。 私は、仕事のゴールを明示することなく、「こんな感じで」「様式はお任せするわ」など、あいまいな表現で仕事を依頼することが多いと、あるスタッフから指摘されショックを受けた経験があります。 また、時間当たりの生産性向上の観点から仕事のアウトプットは雑でも丁寧過ぎてもいけません。 明確なゴールを明示し共有しておくことが大切です。
3. 原因追及はほどほどに! 次に繋がる対話を展開する。 私は、よく次のような質問をしていました。 「なぜ、十分な期間を与えているのに期限を過ぎても仕事ができないの?」 「こうすれば期限内に仕事を終わらせることができるのに、なぜこういう風にやらないの?」 「何回も言っているでしょ! この仕事は法律で定められている期限があるから、なぜ私が言うようにやらないの?」 という具合に、質問というよりは詰問を浴びせていました。 その結果、スタッフは答えようもなく黙り込んでしまい、段々と溝ができてコミュニケーションが悪くなるのを自分自身でも実感できるほどでした。 気を付けているつもりでしたが、ついつい、このような原因追及するような会話パターンが続いてしまうケースがあり、スタッフとの間の溝がどんどん広がってしまった失敗経験を持っています。 こうなってしまいますと、お互いの関係を良好にするのはかなり困難です。 このように「なぜ? なぜ?」を繰り返して詰問していく対話を、私どもは「原因追及型の対話」と呼んでいます。 スタッフとのコミュニケーション方法が「原因追及型の対話」だけでは、問題の本質を見抜き、スタッフを問題解決に導く会話に繋がらないことは、院長先生、奥様ならお分かりいただけると思います。 人は決して理論だけで動いているわけではなく感情を持っています。 理論と感情との整合性が取れないとき、上司と部下の間に溝ができてしまう状況になります。 それでは、こういう失敗をしないためにはどのような対話方法を採ればよいのでしょうか? ここで、マネジメントが苦手な私でもうまく行ったメソッドをお伝えします。 それは、「結果思考型」の対話を行うということです。 「何だろう? その結果思考型の対話って?」と思われる方も多いと思います。
■ 「結果思考型の対話法」で実現したい結果を得るための動機付けを行う
「結果思考型」とは、こうなりたいなど実現したい結果、得たい結果にフォーカスし、そこから発想する考え方です。 この「結果思考型」では、何か問題が起こったとき、問題の原因追及を少なくし、問題を起こしたスタッフに対して次のような質問をします。 「あなたはどういう状況にしたいの?」「何を実現したいの?」「いますぐできることは何?」と、実現したい状況を確認することです。 次に、「それが実現したとき、どのような状況が想像できますか? どのような気持ちになりますか?」と、五感を駆使して状況を具体的にイメージさせます。 このような質問をスタッフに答えてもらうことで、容易に「実現したい結果」と「現状の姿」とのギャップが醸成され、実現したい結果を得るための動機付けを行うことができました。 多くの問題は原因を追及するよりも先に、実現したい結果をビジュアライズして現状とのギャップを埋めていった方が問題解決の行動に導きやすいと、日々クライアントの皆さまのコーチングをしていて実感していることです。 院長先生、奥様は、スタッフに「なぜ?」という言葉を繰り返し使っていませんか? 私はこの「なぜ?(関西弁で言うと「なんで?」)」をスタッフに頻繁に使っていました。 また、原因追及なくして問題解決はあり得ないとも考えており、「私は正しい! 間違っていない!」と、思い込んでいました。 しかし、「それでは問題解決に導くどころかスタッフとの溝を作るばかりですよ!」と、ある優秀なスタッフから指摘を受けました。 その瞬間、私の頭の中で「ガ~ン」という音が響き渡りました。 「私のこれまでのコミュニケーション方法は間違っていたんだ!」と、最初は受け容れにくい事実でしたが、私の心に大きく刻み込まれました。 子供のころから父に『失敗したときほど、単に「失敗した!」と落ち込むのではなく失敗から何を学ぶのか、何が学べるのか、それを自分にどう活かしていくのかと発想を切り替えていかなければならない。』と言われていたので、私も日々失敗をプラスに変えられるよう発想を柔軟にしていきたいと思っています。 しかし、こういう出来事があると落ち込みます。 院長先生、奥様は、私と同じ轍を踏まないように、ご参考にしていただければと思います。 それでは、最後に「結果思考型」の質問例をお伝えします。
■ 「結果思考型」の質問例
- 満足な状況を実現するために、まず何ができますか?
- 満足な状況と現在の状況は、どこが違いますか?
- 満足な状況と現在の状況のギャップを埋めるためには、どのようなことができますか?
- 満足な状況が100点満点とすると、現在の点数は何点ですか?
- 現在の点数になるために、どのようなことが役に立ちましたか?
- 現在の点数になるために、どのような障害がありましたか?
- 満足な状況を実現したことは、どのような状態になると分かりますか?
以上です。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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