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m3コンシェルジュ 高橋 和宏

リスクマネジメント・ラボラトリー

高橋 和宏

1月29日、日銀のマイナス金利政策の導入は、日本経済に大きな衝撃を与えました。

確実に利益が出る投資」というものは存在しませんが、マイナス金利政策の導入により、確実に損をする投資」が出てきてしまったかもしれません。

今回は、そんな「確実に損をする投資とはどういうものか?」というお話をさせていただきます。

現在すでに資産運用を行っている方や、これから検討される方は、こうした危険なファンドに引っかかることがないように、ぜひ注意をしていただきたいと思います。

自分の身を守る投資 第10回
要注意! 必ず損をする運用?

自分の身を守る投資 第10回

要注意! 必ず損をする運用?

■ 危ない投資ファンド!?
その1 ― 日本国債ファンド ―

2016年1月末時点において、公募投資信託の数は5,920本となっており、実に様々な対象に投資ができるようになっています。
(日本投資信託協会、投資信託の全体像より
http://www.toushin.or.jp/statistics/
statistics/data/


その中で、運用リスクが最も小さい分類になるのは、「日本国債ファンド」です。  この、運用リスクが最も小さいはずのファンドが、実は「確実に損をする投資」につながる危険があるのです。

「日本国債ファンド」は、その名の通り、日本の国債のみを集めて運用を行うファンドです。 株価の変動や為替の変動リスクがなく、日本の国債から入ってくる金利、そして国債の価格の上昇が、このファンドの収益となります。

通常、日本の国債利回りは、短期のものほど利回りが低く、長期になるにつれて利回りが上昇する「順イールド」と呼ばれる状態になっています。 銀行は、預金者から預かった資金の一部を国債で運用しており、定期預金の金利も、国債利回りに連動して「順イールド」の状態となるため、短期の預金より長期の預金の方が高い金利に設定されるというわけです。

「日本国債ファンド」には、ファンドの運用ならではの優れた特徴があります。 通常、15年や20年の国債は、個人の投資家が保有することはできません。 しかし、「日本国債ファンド」は、そのような長期の国債をファンドとして集めて運用するため、ファンドを通じて15年、20年の国債を保有するのと同様の効果を得ることができます。

例えば、ファンドを3年しか保有しなかったとしても、実質20年債を3年間保有していた場合と同程度の利回りを受け取ることが可能となるのです。

ところが、日銀のマイナス金利政策導入を受け、2月9日には長期金利(10年国債利回り)が初めてマイナスとなりました。 その後の変動により、マイナス域は脱したものの、2月18日時点での10年国債利回りは0.027%となっています。
(財務省、国債金利情報
http://www.mof.go.jp/jgbs/
reference/interest_rate/


ここで忘れてはならないのは、投資信託には「信託報酬」と呼ばれる運用コストがかかるということです。 国債ファンドを保有すると、利回りが得られると同時に、運用コストがかかっていることになります。

日本国債で運用をしているファンドは、株式や海外に投資をするファンドと比べると信託報酬が低い傾向にありますが、約0.5%前後の運用コストがかかっています。

例えば、平均残存期間が10年ほどの国債で運用しているファンドに投資をすると仮定しましょう。 このファンドには、0.5%の信託報酬がかかっているとします。 そうすると、毎年0.5%の運用コストを払って、0.027%の利回りで運用してもらうことになります。

これでは、運用を継続することによって利益が積み重なるどころか、運用すればするほど損が膨らんでいく事態になりかねません。 しかも、このようなファンドは、ごく一般的な日本国債のファンドなのです。

日銀は、必要があればさらなるマイナス金利政策を導入するとアナウンスしています。 さらなるマイナス金利政策が実行された場合、国債に買いが集まり、国債価格が上昇する可能性も残されています。

その場合、「日本国債ファンド」の基準価格が上昇する要因となるため、今の段階で「日本国債ファンド」への投資が必ず損をすると言い切ることはできませんが、注意が必要ですね。

■ 危ない投資ファンド!?
その2 ― 安定型バランスファンド ―

投資信託の中には、1つの商品で国内外の株式、債券に分散投資をしてくれる「バランスファンド」と呼ばれるものがあります。 実は、この「バランスファンド」の中にも、危険なファンドが潜んでいるのです。

「バランスファンド」は、1つの商品で分散投資を実現する手軽さに加え、運用している間に崩れてしまった資産配分を運用会社が調整してくれるので、管理に手間がかからないというメリットがあります。 投資歴が比較的浅い投資家や、手間をかけずに放っておきたい投資家に人気があるファンドです。

そんな「バランスファンド」の中身は、実に様々なものとなっています。 例えば、株式や海外資産などのリスク資産を多めに組み入れた「積極型」と呼ばれるものや、国内債券などを中心に組み入れ、リスクを抑えた運用をする「安定型」と呼ばれるものなどです。 今回特に気をつけないといけないのは、安定型のバランスファンドです。

安定型バランスファンドの安定資産の一番の収益源は、「日本国債」です。 「日本国債」は、先ほども登場しました。 安定型バランスファンドであれば、日本国債の投資割合が50%を超えるものがほとんどです。 もし、日本国債に60%投資をする安定型バランスファンドがあった場合、利回りと運用コストの割合はどうなるでしょうか。

「バランスファンド」の場合、運用コストである信託報酬は、約1.0%~1.5%かかるものが一般的です。 ここでは、仮に信託報酬を1.3%として計算してみましょう。

日本国債の利回りを、先ほどと同じ0.027%と仮定した場合、日本国債以外で運用している部分で年間3.2%の利回りを出せば、信託報酬を埋めることができます。

過去の長期の目線で言えば、海外株式の期待リターンは5%を超えており、利益を出すことが決して無理とは言いません。 しかし、年間3.2%の利回りを超えてようやくプラス水準というのは、利益を出すためのハードルとしてあまりに高すぎるものです。

■ こうやって見分ける! 要注意ファンド

さて、今回ご紹介させていただいた「要注意、投資ファンド」ですが、該当するものを持っていないかどうか、以下の方法で確認することができます。 投資信託は、購入した金融機関のホームページなどに、その商品情報が載せられています。 保有している投資信託の名称や運用会社名で検索し、「月次レポート」をご確認ください。

  • 日本国債ファンドの場合
    「最終利回り」と「信託報酬」を比較してみて「最終利回り」の方が低かったら要注意
  • バランスファンドの場合
    「日本国債の割合が50%以上」かつ「信託報酬が1.2%以上」であれば要注意

もし該当する商品を保有している場合は、売却して現金化してしまうか、あるいは他の運用方法を検討されると良いかもしれませんね。

m3コンシェルジュ 高橋 和宏

いかがでしたでしょうか?

ここ数年のマーケットを見ると世界的に株、為替ともに上昇を続けていたため信託報酬を十分超えるだけの運用成果が出ていましたが、国債利回りの低下、世界経済の不透明感が出ており、より慎重な運用スタンスが必要になっています。

 

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