こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 節税ニーズのある個人診療所の先生に医療法人設立を提案するのは利点があることも多いですが、その中には必ずデメリットも潜んでいることを知っていただきたいのです。 本日は、節税対策として医療法人の設立を提案された場合、そのデメリットを把握でき、ご自身にとって有利かどうかを判断する質問事項を7つお伝えします。
1.節税額はいくらなのか?
まずは基本中の基本です。 「節税金額はいくらなのか?」 数字をもって把握することです。 税理士や会計事務所の担当者に、まずはじめに確認してください。
2.節税の行方は?
次に節税額の行き先を把握してください。 節税した金額すべてが、個人でそのまま使えるわけではありません。 法人に残る留保金額、法人設立にともない役員や職員の「社会保険料の法定福利費の支出」、家族に支払われる役員報酬の可処分所得、法人設立によって発生するコストなど節税の行方を金額で把握してください。
3.家族の可処分所得はいくらか?
法人で留保される金額、役員になっている家族全体の可処分所得の金額を把握してください。 「理事個人が、住宅ローンや教育費などを理事報酬内でやっていけるか?」を検討してください。
4.個人事業時代の負債を引き継ぐことができるか?
開業5年以内で医療法人を検討する場合は事業の借入金が残っている診療所が多いと思います。 この借入金をいくら医療法人が引き継げるのかをよくよく検討してください。 また、取引銀行ともよくよくご相談ください。
5.退職金で受け取った方がご自身にとって有利なのか?
「医療法人であれば引退するときに退職金を受け取れます。 退職金は、分離課税かつ1/2の課税ですみます。 退職金で受け取ることは税制上、有利です。」というような説明を受けられることもあると思います。 「はたして、ご自身にとって有利なのでしょうか?」 「今、役員報酬でとった方が良いのではないでしょうか?」 「将来的に退職所得課税も税制改正で1/2課税ではなくなるかもしれない」など、ご自分のライフスタイルから見てご検討ください。
6.医療法人名義で生命保険に加入して経費化しながらお金を貯めることができるか?
医療法人で保険加入して節税をしながら将来の退職金などお金を貯めることができます。 個人診療所でも小規模企業共済で節税しながら準備することもできますが、生命保険を活用することができないので、生命保険を活用できる医療法人にして資産形成するという面では非常に有利となります。
7.相続・事業承継の観点で見てどうか?
後継者が決まっているのであれば、私どもでは医療法人の設立を積極的に提案しています。 理由は、診療所の資産を後継者に課税されることなく承継できるなど事業承継においては、有利になるからです。 また後継者が決まっていない場合でも、勇退目安までの年数や収益および所得額ほか状況によって法人化のご提案をすることもあります。 医療法人設立は単なる節税目的だけではなく、この7つの質問をもとにして総合的に判断いただくことをお勧めいたします。
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