「税務署の調査が来たらどうしよう。」「どのように対応したらいいの?」と税務署の調査対応について院長や奥様から相談をいただきます。 これまで税理士として100件ほど税務署による、「税務調査の立ち合い」及び「税務署対応」をさせていただいております。 その経験を踏まえてお伝えします。
■ 調査1日目に何を見るか?
最近の税務調査は2日間の日程で行われることが多い傾向にあります。 初日では診療科目、規模によって着眼点が異なりますが、一般的には次のようなことが調査されます。 そして、調査官は、帰署してから統括官(課長)に初日の顛末を報告し、2日目の調査の方向と手法をどうするか指示を受けます。
- 代表者に概況等を質問しながら、性格・思想・趣味・家族の状況等を確認します。
- 調査日現在の記帳状況、原始記録の整理状況、経理全体の信頼性、医院経理の流れを把握する。 また、内部のチェックシステムがどうなっているか、それぞれのセクションにどんな記録があるかを確認します。
- 現場確認調査によって把握された資料の内容と帳簿との突き合わせをします。
■ 調査2日目が分かれ道
- 2日間、調査をして特に問題がない場合は調査を終了するのが通例です。
- 調査を早く済ませるためには、質問に対して証拠書類を示して早めに回答する等、調査官に積極的に協力する姿勢を示すことが大切です。
- 病医院に精通した調査官の調査は厳しいですが、論点は整理されているので効率的に調査は進められますので早く片付くようです。
- 経費中心の調査は、二義的な調査で他に問題が少ないと判断して差し支えありません。 逆に、経費調査を省略している場合は、要注意です。
- 頭を下げる必要はありませんが、主張することは強く主張してください。 憶測で答える等、いい加減な返事は禁物です。
■ 反面調査と銀行調査
反面調査は、証拠書類の不備や取引内容に疑いがもたれる場合に、相手先に取引事実を確認するために実施されます。 例えば、下記のような取引です。
- 仕入先、外注先の発行した領収証で不審なもの。
- 特別償却の対象となる固定資産の購入で購入日付に疑問のあるものを相手方に直接確認されます。
銀行調査ですが、銀行は取引記録が長期間にわたって整理保存されているので、銀行業務に精通したベテランの手にかかると、余程計画的に不正経理をしていない限り、殆どの場合は、この銀行調査によって解明されるようです。
■ 調査が長期化した場合の対応
税務調査の着手日から1ヶ月以上経過した場合、以下の2点が考えられます。
- 調査が予定通り進展せず、膠着状態となっている。
- 反面調査、銀行調査等による文書回答が遅れている。
このような場合は、約10日ごとに担当の統括官へ電話にて進捗状況を確認することを、お勧めいたします。 また、帳簿等を税務署に持ち帰り、長期間返却してもらえない場合は、業務に差し支える旨を申し出て、返却してもらう方が良いでしょう。
■ 税務調査の結論の出し方
税務調査を早期に終わらせたいとの思いから、調査官の言うことを鵜呑みにして終了させているケースをよく見ます。 しかし、税務署員の中には、税法、通達を十分理解していない調査官もいますし、解釈を誤っている場合もあります。 結論を出す時は、事業所の代表者として院長(理事長)が納得できるまで説明を求め、安易に妥協してはなりません。 結論を出す前に心得ておくべきポイントは、以下の通りです。
- 問題点は、否認科目名、金額、加算税の種別を文書で提示させる。
(最近の調査の傾向を見ていると、文書での提示はしてもらえないこともあるので顧問税理士に確認してもらい書面化することをお勧めします。)
- 問題点について反論する時は、証拠書類を揃えて、院長(理事長)の考え方、法令通達の解釈、税理士の意見等を集約し堂々と申し立てる。
- 否認科目の内容によっては、他の科目に影響のあることを知っておく。
(例えば消費税の課否、地方税の税率アップ。)
- 重加算税を課すのは、医院の経理処理に「仮装隠蔽」があった場合に限られます。 特に、重加算税は、調査官の勲章です。
自院の税歴表のランクを悪くしますので、認める場合は慎重を要しますので、くれぐれも注意してください。 税務調査と聞くだけで恐れる方もいますが、税務調査には事業の健康診断といった側面もあります。 健康診断を受けたおかげで問題のあるところが治療されて健康になり、今後の事業の発展にも結びつく訳です。 医院経営をしていく限り、税務署と銀行とは縁を切る訳には参りません。 恐れる前に相手を十分知って対応することが何よりも大切だと思いますので相手を知り日々、準備をしていただくことをお勧めいたします。
|