皆さま、こんにちは。 岡本雄三税理士事務所の津田 直明です。 事業(従業員)承継をした場合、事業主と残った従業員には少なからず考え方に相違が出てくると思われます。 事業主が新たな経営理念を掲げて事業に取り組んでも、「以前はこうではなかった!」と言われ、思うように働いてもらえないケースが多く見られます。 このような事象を未然に防ぐためにも、就業規則を事前に整備するとともに、従業員への周知が重要です。 就業規則を整備する際は、以前の事業主が作成した就業規則の内容と併せて、実情がどうなのかも確認する必要があります。
■ 就業規則で特に整備すべき事項とは
1. 服務規程 従業員に「して欲しいこと」や、「禁止していること」などが記載されています。 服務の基本や心得が、自身の理想とするものとかけ離れていないか、禁止したいことが禁止行為の中に定められているか、などの確認が必要です。 また、以前のクリニック従業員ではなく、承継後のクリニック従業員であることを、再認識できるような事項を追加するのも効果的だと思われます。
<服務規程例> 〇〇クリニックの従業員であることを自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、法令及びクリニックの定める諸規則を遵守し、クリニックの指示命令に従って、お互いに協力して明るい職場を築くよう目指し、職場の秩序維持に努めなければならない。
2. 就業時間、休憩時間、休日 事業承継の際、クリニックの診療時間や休診日等を見直し、患者数の増加や労働環境の改善を図ることがあります。 3. 賃金 従業員を承継して雇用した場合、新たに雇用契約を結ぶため、勤続年数がリセットされます。 「以前から雇用されている従業員」と、「新規に雇用された従業員」とでは、年齢、職種、勤続年数等に差がなくとも、賃金格差が生じる場合があります。 このような場合にも従業員から不満が出ないよう、事前に賃金規程を整備する必要があります。
<賃金規程例> 基本給及び手当は、日給月給制とし、本人の経験、年齢、技能、職務遂行能力等を考慮して個人ごとに決定する。 ただし、パートタイム従業員は時間給制とする。 尚、クリニックが特別に必要と認めた者に対し手当・時間給を加算することがある。
4. 退職金規程 どういった場合に退職金を支払うか、退職金をどのように計算するか、退職金を支給する従業員の範囲はどこまでか、などが記載されています。 事業承継の場合は、いったん雇用契約が終了するため、退職金が支払われることになります。 承継後のクリニックでは、退職金を計算する際の起算点を明確にする必要があります。
<退職金規程例> ○○クリニックで勤続3年以上の従業員が退職し、または解雇したときには退職金を支給する。
■ 就業規則に経営理念等を記載することもできる
自身のクリニック運営に対する思いや目的を、就業規則に載せて従業員に周知することで、これまでのクリニックとの違いを明確にできます。
■ さいごに
就業規則を整備すると、従業員側の労働環境が大きく変化します。 後々のトラブルを未然に回避するためにも、就業規則を整備する場合は変更点を明確にし、事前に従業員一人ひとりと話し合いをしたうえでの手続きが重要です。 常時10人未満の事業所においては就業規則の作成・届出の義務がないため、就業規則が存在しないクリニックもあります。 そうした場合も、健全な経営や誠実な従業員を守るために、これまでの慣行や上記の留意点をふまえ、新しく就業規則を作成されることをお勧めします。 就業規則に関しましては下記URLをご参照ください。 厚生労働省 「モデル就業規則について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou /roudoukijun/zigyonushi/model/index.html
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