皆さま、こんにちは。 AGSグループ(AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング) 税理士の宮澤 綾子です。 今回は、 災害時における税務上の取り扱いについてお伝えいたします。 先般発生いたしました九州北部における豪雨により、甚大な被害が発生しました。 亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。 医療機関においては、大規模災害をはじめとする危機的事象の発生により医療の提供が困難となる可能性を想定し、BCP(Business continuity planning)を盛り込んだマニュアル策定が進められるなど、災害後、長期的に病院機能の維持・継続ができるような体制づくりが求められています。 災害に被災した場合、経済的にも大きなダメージを受けることとなります。 そのため、被災者のための経済的支援として税法においても減免猶予の制度など課税負担や申告のための手続き負担を軽減する措置が設けられています。 平成29年度税制改正では、これまで個別に設けられてきた税務上の負担軽減措置が常設化されることとなり、法人税では災害損失の繰り戻しによる法人税額の還付制度が適用されることとなりました。 具体的には、災害欠損事業年度において生じた災害損失欠損金額がある場合には、還付事業年度の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付を請求することができることとされました。
図1: 災害損失の繰り戻しによる法人税額の還付請求例 (決算: 年1回3月 資本金: 1億円 青色申告法人 の場合)
図1の例では、法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額として286.8万円(358.5万円×1,200万円/1,500万円)の還付を受けることとなります。 災害損失欠損金額は棚卸資産等の資産の滅失損壊による損失、または価値減少による損失や原状回復等の費用にかかる損失の合計額をいい、保険金等により補填される金額は除いて算出します。 なお、この制度は、青色欠損金の繰り戻し還付制度(法人税法80条第1項)とは異なり、青色申告書を提出する法人以外の法人や資本金が1億円を超える法人であっても適用を受けることが可能です。 このほか、住宅取得等資金贈与の非課税特例や非上場株式等がかかる相続税・贈与税の納税猶予の特例などが常設化されています。 また、国税の軽減免除や申告納付の期限延長、納付猶予以外にも、地方税の軽減免除、国民健康保険の納付期限延長、徴収猶予、公共料金の減免などの施策が設けられています。 著しく異常かつ激甚な非常災害として指定された特定非常災害に該当する場合には、消費税の届出書等に関する特例、被災代替資産等の取得等をした場合の特別償却制度なども設けられており、東日本大震災後の災害では平成28年の熊本地震が特定非常災害に該当しています。(平成29年3月31日現在) 災害等に遭遇した場合、医療機関が医療の提供の維持・継続ができるよう、危機管理としてあらかじめ何かしらの手を打っておくことが重要です。 医療機関をサポートする役割として、クライアントの経済的損失額を軽減できるよう、適正な補償(保障)額、保険契約のご提案が求められると考えます。
災害に関する主な税務上の取り扱い
(内閣府 災害対策資料集より抜粋)
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