■ 「バイ&ホールド戦略」 長期でみると人口増加、世界の経済成長が株価を支える
図1 IMF World Economic Outlook Databese (http://www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=28)より筆者が面グラフを作成 上記のグラフは1980年より2020年まで、IMFが推計している全世界のGDP(国内総生産)の合計値の推移です。 GDPは、新しく生産された商品やサービスの付加価値の総計を表します。 新しい商品やサービスを提供するのは他でもなく各国の企業であり、株価は各企業が提供した商品・サービスから生まれてくる利益に対する投資家からの評価となります。 「売買による株式取引」をするのであれば、この拡大するGDPの内訳を分析し、どの地域・企業が今後伸びるのかを予測する必要があります。 しかし前回お伝えしたとおり、「売買による株式取引」は分析に対する労力が多大であり、失敗したときのリスクが大きいため、老後資金のための運用としてはあまり現実的ではありません。 そこで「バイ&ホールド戦略」により、この世界の経済成長を自身の資産に反映させることをおすすめしたいと思います。 そのためには投資対象を絞らずにできるだけ幅広い地域・企業に投資をする「国際分散投資」をするのが良いでしょう。 いってしまえば世界経済を丸ごと購入するというやり方です。
■ 「国際分散投資」 より多くの企業に投資をする
株式への投資は、より多くの企業に分散投資をすると運用成績が安定します。 例えば、自動車メーカーの株式へ投資するとします。
- 国内自動車メーカーA社のみの株を買う
- 国内自動車メーカーA~E社の株を買う
- 国内A~E社 + アメリカV~Z社 + ヨーロッパO~S社の株を買う
上記3つの方法を比較した場合、1に比べて2あるいは3の方が失敗する可能性を減らす(成功する可能性を増やす)ことができます。 「どこの国のどのメーカーの自動車が売れるかは分からないが、世界中で自動車販売が増加しそうな場合、様々な自動車メーカーの株を購入しておけばトータルでプラスになるだろう。」という戦略です。 ここで問題になるのは投資する費用についてです。 日本企業の株式を購入する場合、安い会社で数万円、高い会社であれば100万円ほどの費用がかかります。 仮に1社あたり30万円の費用だとすると、日本の同一業種の5社に分散するだけでも150万円、アメリカ、ヨーロッパに同額の資金を分散するとしたら自動車メーカーへの投資だけで450万円かかります。 自動車のみならず、様々な分野の企業に投資をしたいので、20業種に分散投資をするとして9,000万円の費用がかります。 個別に企業の株式を購入していては、いくら資金があっても十分とはいえませんね。
■ 「分散投資」を実現するためには投資信託の活用を
そこで個人投資家が利用すべき金融商品としては「投資信託」があげられます。 投資信託とは少額から分散投資ができるように生まれた金融商品です。 個人個人が投資するお金が少額であったとしても、多くの人から資金が集まれば数百億円以上の規模となり、様々な資産に分散投資が可能となります。 投資信託はより細かく分散投資がされているものだと、1つの投資信託で1,000社以上の株式に分散されているものがあります。 投資信託の多くは1万円から投資ができますので、1万円から世界中の企業に幅広く分散投資ができるのです。
■ 世界中の企業の所有者になるために
図2 IMF World Economic Outlook Databese (http://www.imf.org/external/ns/cs.aspx?id=28)より筆者が円グラフを作成 上記は、先ほどの「世界各国のGDP推移」のうち、2016年における世界各国のGDPの内訳を円グラフで表示したものです。 もし現時点で100万円を世界経済の規模に基づいた割合で世界中の株式に投資をするのであれば、上記のグラフから少し数字を丸めて
- 日本株式ファンド 5万円
- 先進国株式ファンド 55万円
- 新興国株式ファンド 40万円
という配分でそれぞれの投資信託を購入すれば、各国の経済規模に基づいた割合で、世界中の企業の所有者となることができます。 銀行に置いておいても何も生み出さなかった資金が、投資信託を購入することで、そのまま世界各国の企業の株式へと変わり、自分の老後生活を助けてくれるようになると考えれば、期待も膨らみ、運用による値下がりリスクとも上手に付き合っていけるようになると思います。
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