皆さま、こんにちは。 AGSグループ、AGSコンサルティング・ヘルスケア事業部の市川です。 最近、CMでも消費税の軽減税率に対応するレジが紹介されているように、消費税増税はいよいよすぐそこまで迫ってきました。 今回は、消費税増税と同時期に起こる診療報酬改定についてご説明させていただきます。 そもそも税金は納税の仕方で大きく直接税と間接税に分かれます。 直接税とは、担税者(税金を負担する人)と納税義務者(実際に税金を納める人)が同じ場合であり、間接税はこれらが違う場合です。 法人税、所得税などが直接税であるのに対し、消費税は間接税です。 消費税は消費者が負担すべき税金を製造業者、卸売業者、小売業者などが申告・納税しています。
■ 消費税及び地方消費税の負担と納付の流れ
参考資料: 国税庁「消費税のしくみ」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_3.htm しかし、ここで注意していただきたいのは、保険診療は消費税が係らない非課税であるという点です。 薬品、診療材料等の仕入で医療機関や薬局等が消費税を払うのに対し、患者さんからは消費税を受け取れません。 したがって、消費税率があがることにより、医療機関や薬局等の仕入に係る消費税負担が増加することになってしまうのです。
■ 消費税と診療報酬改定率の推移
そこで今回の診療報酬改定では、消費税率の引き上げに伴い、初診料、再診料などの基本診療料及び調剤基本料に増税分の点数を上乗せすることとなりました。 外来医療の報酬項目ごとの点数比較一例 ※ 妥結率とは「各医療機関が購入した医療用医薬品の薬価総額」と「各医療機関が、卸業者との間で取引価格が決まった医療用医薬品の薬価総額(規格単位×薬価の合算)」の割合のこと。 参考資料: 厚生労働省「消費税率 10%への引上げに伴う対応」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000459040.pdf このほかにも、外来診療料、オンライン診療料、小児科外来診療料などのその他の個別項目や在宅医療、入院基本料などに対しても消費税率の引き上げに伴い増税分が上乗せされます。 消費税増税に伴った診療報酬改定は今回に限った話ではなく、消費税導入時、5%及び8%の消費税率の引き上げ時にも点数を上乗せし、医療機関や薬局等の消費税負担増加に対応してきました。 消費税導入・引き上げ時の診療報酬改定率の推移 参考資料: 日本内科学会「診療報酬の仕組みと改定」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/12/105_2320/_pdf 厚生労働省「診療報酬改定について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000459040.pdf
■ まとめ
今年の改定率で薬価が減少しているのは、消費税引き上げに伴う上乗せ分の点数0.42%と、実勢価改定(市場実勢価格を踏まえた調整)マイナス0.92%が相殺されているためです。 2019年2月における中医協総会の答申においても述べられているとおり、今回の改定は、診療報酬への補てんには限界があるとの認識の下、NDBデータ(レセプト情報・特定健診等情報データベース)等を用いたりすることによって、できるだけ精緻な対応を図り、補てんの不足やばらつきが生じないことを目指しました。 また、今回は消費税増税に合わせて10月に診療報酬が改定されますが、定例の改定はその半年後、2020年4月に通常通り予定されています。 今回の診療報酬改定が補てんの不足やばらつきがなく適切なものであるか確認するためには、1年間の調査を要し、2020年の改定には間に合わず、早くても2021年になってしまうとの見方を厚生労働省は示しています。 今回は、10月の消費税引き上げに伴う診療報酬改定について解説させていただきました。 一般的に、保険診療の非課税、消費税増税に合わせた診療報酬改定は患者さんにはしられていない事柄です。 ふとしたきっかけで質問などがあるかもしれません。 そういった時に現場での混乱を避けるため、スタッフ間で知識を共有すると良いかもしれません。
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