皆さま、こんにちは。 日本中央社会保険労務士事務所の内海正人です。 先日、ある院長から、「協調性に問題がある職員を解雇することができますか。」とご相談を頂きました。
■ 職員を解雇したいと思ったら
まず、大前提として、労働契約法16条によると、就業規則上の解雇事由にあたるからといって、ただちに解雇できる訳ではありません。 解雇するには、「客観的かつそれ相当の理由」、そして、「誰がみても解雇に値する相当性」が必要であり、さらに、下記のような段階的な対応も必要とされます。
- 問題言動の発生を記録(いつ、どこで、誰に対して、どのような内容で)
- 口頭にて注意を実施(コミュニケーションによる改善、まずは軽めに注意する)
- 書面にて改善指導(口頭注意で改善がみられない場合、正式文書として発行、裁判等になったときの強力な証拠となる)
- 懲戒処分(就業規則に「懲戒の事由」と「処分内容」を必ず記載しておく、弁明の機会を設ける)
- 退職勧奨(懲戒処分にも関わらず、問題行動の改善がみられなければ、退職することを勧める)
- 解雇(退職勧奨により自ら退職を選択しない場合は解雇を実施)
これらのプロセスの目的は、問題職員に改善をしてもらうことです。 実際に改善されれば、懲戒処分、退職勧奨、解雇等を実施する必要はなくなります。 先日のご相談の場合、決定的な理由はなく、誰がみても「解雇に値する」という判断ができないので、解雇は難しいと考えられます。 このように、協調性のない職員の解雇を考えるにあたっては、次のカジマ・リノベイト事件(東京高・平成14・9・30)が参考になります。
■ 事例
この事件は、協調性を欠く問題行動を繰り返し行ったことを理由に、従業員を解雇した事例です。 裁判所は、それらの事実を個々に取り上げると些細なものが多いと思われるとしながらも、会社全体として、統一的かつ継続的な事務処理が要求される事柄に対し、
- 上司の指示に従わず、自己のやり方を変えない態度が顕著であり、
- この協調性の欠如が、会社全体の非効率や過ちに繋がり、支障が生じる、
と判断しました。 そして、4回のけん責を通告されても、
- 改善する姿勢がみられないこと、
- 弁明する機会が与えられたこと、
- 就業規則に「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」との解雇条項があること、
などから、解雇を有効としました。 それでは、この事例をもとに、解雇を有効にするための条件について解説します。
■ 解雇を有効に実施するには
この事例で解雇が有効となった条件として、
- 具体的にどのような点に問題があるのかを本人に伝えていること
- 会社として記録を行っていること(多くの会社はこれが抜けることが多い)
- 改善を促していること(口頭のみ)
- 口頭のみの改善で効果がなければ、文書を用いて改善指導を実施していること
- 会社の正式な文書として発行し、裁判となった場合の証拠力を高めていること
- 些細なことでもきちんと記録をとり、それに対して口頭注意を行い、さらに、改善指導書を発行し、就業規則通りに細かく実施していたこと
が挙げられます。 このように、解雇を実施するには細部に気を使い、就業規則の条文等を遵守することで、その有効性が高まるのです。
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