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継承開業と新規開業のトレンド
第1回 第三者継承開業とは
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■ クリニック後継者問題の深刻化
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【河村 税理士】 これまでの開業医のご家族は、子が医師になり、そして継ぐのが当たり前でした。 ご家族や患者様もそして地域の方々もそれが当たり前だと考えてきました。 しかし、近年では「子が医師でない。」「子は医師になったが診療科目が違う。」「医師になったが実家には帰りたがらない。」等の様々な状況が見受けられ、医業継承が非常に厳しい時代だと思います。
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【米田】 近年の医学部ブームで、元から高かったはずの偏差値が過剰なほどに上昇し、開業医のお子様で親御様のクリニックを継ぐために医師を目指している方が医学部に入れないという話を聞いたことがあります。
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【河村 税理士】 医師になれても実家を継がないケースも多いのも事実です。 そもそもお子様の将来について「子どもには子どもの道がある」「自由にすればいい」と考えている親御様が多いように感じます。 その環境に育ったお子様が医師になった後、自分で進みたい道を当然に切り開いて行くのです。 その結果、親御様の開業したクリニックには戻ってこないという選択肢があるのも不思議ではありません。
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■ 第三者継承という選択肢
【米田】 そこで、最近は「第三者継承」が新規開業を考えているドクターの注目を浴びているわけですね。
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【河村 税理士】 その通りです。 後継者を探している医師と、開業を希望している医師をマッチングする「M&A(Mergers and Acquisitions)」が主流になってくるかもしれません。
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【米田】 譲渡側は、患者様に途切れることなく診療が可能となり、働いているスタッフがそのまま継続できます。 また、継承側は、低コストで開業でき、一定の患者数が見込めている。 共に安心できますね。
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【河村 税理士】 概ね間違いはないのですが、気を付けていただきたいのは「低コストで開業」です。 譲渡側のメリットは、今までの功績や築いてきた年数に応じた「クリニックの価値」があります。 その価値で継承者と売買することが大前提です。 それと、M&Aが成立した場合の、コンサルタントへの支払いです。 基本的に、売買金額の何割かを手数料で支払う必要があるので、最初に押さえていただきたいポイントですね。
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【米田】 「譲渡側はより高く、継承側はより安く」と思っていますけど、M&Aの仲介者もより高くを望むようになりますね。 M&Aのコンサルタントだけに頼るのではなく、医療に強い税理士にも協力してもらい、その売買価格が適正であるかどうかのチェック機能が必要ですね。
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【河村 税理士】 その通りです。 医療法人では「経過措置法人」「基金拠出型法人」がありますし、土地や建物は購入するのか、家賃で支払いをするのか、個人医院では、医療器械は買い取るのか、リース契約で支払うのか等、交渉時点で将来の展望と、収支の予測もしなければなりません。
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【米田】 いわゆる「言い値」で決めるのではなく、新規開業と同様、診療圏調査からみる医業収益の予測など今までの功績だけに特化せず、しっかりと調べることも重要ですね。
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