■ 個人でクリニックを経営していますが、最近、税理士さんから「医療法人の設立を検討してみてはどうですか?」と、アドバイスされました。 医療法人を設立するメリットは何ですか?
- 妻
「今月の医師会の会報で、医療法人設立の説明会の案内があったから、税理士さんに申し込んでみようかどうか相談してみたの。」
- 院長
「あっ、そうか。 前から、医療法人の税率は、今のうちの税率より低いから節税効果があるって言われていたからね。 でも、節税効果以外にメリットはあるのかな?」
- 妻
「父のクリニックも、かなり前に医療法人にしたけど、相続対策も考えてのことらしいわ。」
- 院長
「へえ、医療法人と相続対策とどんな関係があるんだろう?」
【解説】 医療法人の設立による、相続対策上のメリットは以下の通りです。
- 医療法人にプールされる利益には相続税がかからない
平成19年4月1日以降に設立される医療法人は、「持分のない医療法人」となり、その法人が解散した場合、法人に蓄積されている財産は、国又は地方公共団体のものになるという制度となっています。 その性格上、法人に蓄積されている財産は、その法人の出資者の相続財産からは除外されますので、相続税を軽減する効果が期待できます。
- 相続財産のコントロールができる
医療法人の財産は個人の財産とは別物ですから、役員報酬を多くすれば個人の財産が増えることとなり、逆に役員報酬を少なくすれば、法人の財産が増えることとなります。 院長の相続財産をあまり殖やしたくない場合は、役員報酬を低めに設定します。 その結果、法人の財産は相対的に増加することとなりますが、「1.」で述べたように、新制度の医療法人に蓄積される財産には相続税がかかりませんので、機動的な相続財産のコントロールが可能となります。
- 退職金の準備と支払ができる
退職金については、通常の給与と異なり、受け取った時の所得税が低く抑えられます。 また、死亡による退職金については、相続財産の計算上一定の控除額が認められています。 個人事業の場合、小規模企業共済を活用して、毎年の掛け金を経費としながら退職金を積み立てることは可能ですが、金額に上限があり、それほど多くの積立てを期待することはできません。 これに対し医療法人の場合は、保険契約を活用することによって保険料の一部を経費としながら退職金の積立てが可能となり、その支給金額については、下記の算式を目安として計算することができます。
<医療法人の役員退職金の目安>
退職時の月額報酬 × 役員としての在任年数 × 功績倍率 なお、医療法人を設立した場合のメリットは、相続税対策だけではありません。 一般的に、個人事業の場合は院長とそのご家族は国民年金に加入されていることが多いのに対し、医療法人の場合は、役員にも厚生年金への加入が義務付けられているため、現行の年金制度に照らせば将来受け取る年金額は国民年金に比べると多くなることが予測されます。 従業員についても同様のことが言えますので、福利厚生の充実につながり、求人面での優位性も確保できます。 上記「3.」のメリットは、旧制度・新制度の医療法人双方に共通するものです。 近年所得税と法人税の税率の差は広がるばかりです。 新制度の医療法人であれば増税となった相続税対策も兼ねられます。 これにより最近は医療法人化が急増しています。
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