■ 運用成果の確認
(運用成果-手数料) - 税金 = 手取りの運用成果 非常にシンプルな式ですが、金融商品を選別する際には最低でもこの式を頭に置きながら判断をしていくと良いと思います。 1) 運用成果はどの程度期待できるか? 株式や投資信託であればどのくらい値上がりが期待できそうか、債券であれば金利はどのくらい付くのか(最近では相場状況によって金利が変動するタイプのものが非常に多いのでこちらも購入する際は要注意)、しっかりと確認をします。 債券の金利であれば事前に決まっているため、具体的な数字を基にある程度判断ができますが、株式や投資信託に関しては将来の運用成果は保証されているものはありません。 営業の人から話を聞く際は、その話が「予測・予想」に基づくものか、それとも「客観的に見てある程度期待できる」ものかについても注意しながら判断していきます。 2) 手数料はどの程度かかるか?
- 株式
売買手数料
- 投資信託
購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額、成功報酬等
- 債券
売買手数料、(外貨建て債券であれば)為替スプレッド※
※ 為替スプレッドとは?
円と外貨を交換する際、売値と買値の差のこと。 投資家にとっては実質的に手数料と同様の取引コストとなります。
上記は各金融商品を取引する際にかかっている主な手数料です。 これらは全て投資家が負担をすることになります。 ここで注意をするポイントは2点。 1つ目は手数料が外出しで直接かかっているものと間接的にかかっているものがあること。 2つ目はその手数料が「率」で記載されているものと「額」で記載されているものがあることです。 上記の中では株式売買手数料・投信購入時手数料・信託財産留保額は「直接」の負担で「率」で記載されています。 一方で債券の売買手数料は債券の金利条件に含まれることが多いため、購入代金と別途でかかるケースはほとんどありませんが、為替スプレッドは「直接」の負担で「額」で説明されることが多いでしょう。 おすすめなのは全てのものを「額」で揃えて考えてみることです。 例えば、 「この投資信託の購入時に2%手数料がかかり、年間1.5%の信託報酬がかかる。」と考えるよりも、 「この投資信託を1,000万円購入する場合、20万円の手数料がかかり、毎年15万円の信託報酬がかかる。」と「額」に変換して考えた方が良いと思います。 最近では金融庁から金融機関への指導も、投資家に対して「額」で説明するように、ということになってきていますが、ご自身で気をつけるようにすると良いと思います。 3) 税金はどのくらいかかるか? 現在の税制では株式・公募株式投資信託の売買益は株式等の譲渡所得として利益額の20.315%の申告分離課税、債券の金利に対しては利子所得として20.315%の源泉分離課税となります。 税金は手数料と同様に、運用成果を直接圧迫するものなので確認が必要です。 NISAのような非課税制度を使うことや、損益通算(利益と損失を合算して税金額を減らす方法)を使うことにより、税金を軽減出来る可能性があります。 2016年から税制が変更になり株・投資信託・債券が全て同じくくりの中で損益通算できるようになったので気を配った方が良いと思います。
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■ 最終手取りは金利の半分に?
最後に外貨建て債券の取引を、具体的な金額を元に見てみましょう。 高金利の国として投資の対象となることが多いトルコの債券です。 トルコの通貨は「リラ」であるため、日本の「円」をトルコの「リラ」に両替をして取引をします。 【仮定取引条件】
トルコリラ 新規発行債券
- 3年満期
- 金利: 8.0%(税引前)
- 円トルコリラ為替: 45円
- 為替スプレッド: 片道2円
- 購入額面: 10万トルコリラ
※ 購入を円から行い、満期時には購入時と為替レートが変動しなかったものとして円で受取る。 利金は満期時の資金と一緒にまとめて円で受取るものとする。 購入時の金額は 10万トルコリラ × (45円 + 2円) = 470万円(このうち20万円が為替スプレッド) 外貨ベースでの1年あたりの手取りの受取金利は、税率が20.315%のため 10万トルコリラ × 8.0% × (1 - 20.315%) =6,374.8トルコリラ 3年分の合計の受取金利は 6,374.8トルコリラ × 3 = 19,124.4トルコリラ 3年後の元利合計での外貨金額は 19,124.4トルコリラ + 10万トルコリラ = 11万9,124.4トルコリラ これを当初と同じ為替レートで日本円にして受取ると 11万9124.4トルコリラ×(45円 - 2円) = 512万2,349円 結果として 投資金額470万円が512万2,349円となり、41万2,349円が利益となりました。 これを投資金額に対して1年あたりの率に変換した場合 (41万2,349円 ÷ 3) ÷ 470万円 ≒ 2.92% この債券を「上記のような内容に基づき費用がかかった上で利益が得られる。」、と判断し取引をされるのであれば良いと思います。 しかしながらもしも「年間8%で3年間運用できそうだ、税金と手数料で少し引かれてもいいかな。」といった感覚で運用すると、実際に手取りは3%を切ってしまうので自身の認識と大きく乖離してしまう危険があります。
※ 上記試算は現在の税制を適用し、かつ為替変動がなかったものとして簡易的に計算をしたものです。 為替が変動した場合、運用成果は増大・または減少することとなります。 また、為替スプレッドや各種取引条件については金融機関によってそれぞれ異なるため、実際のお取引にあたりましては金融機関に詳細をご確認のうえ、ご自身の判断と責任のもと行っていただくようお願いいたします。 特定の取引を推奨、または非推奨するものではございません。
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