皆さま、こんにちは。 AGSグループ(AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング) 税理士の宮澤 綾子です。 今回は、「改正社会福祉法」のポイントについてお伝えいたします。
■ 社会福祉法人制度改革の趣旨・概要
平成28年3月に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき、平成29年4月1日より改正社会福祉法が施行されました。 社会福祉法を根拠法として、同法に定める社会福祉事業の経営を目的として設立される法人が社会福祉法人です。 社会福祉法人は、法人税法においては公益法人等に該当するため、社会福祉事業である児童福祉事業や老人福祉事業のみを営む場合については法人税の課税はされませんが、これら以外に収益事業に該当する収入がある場合は法人税の申告納付が必要となります。 少子高齢化が進み、高齢者福祉、児童福祉のニーズが多様化している中、社会福祉法人は社会福祉事業の中心的な担い手としての重要性が高まっています。 一方で、「地域社会への貢献が十分でない法人」や「同族経営が行われ、経営が不透明である法人」などの問題が一部の社会福祉法人の運営に対して指摘され、このことを背景に社会福祉法人の公益性・非営利性を徹底し、国民に対する説明責任の履行、地域社会に貢献する法人の在り方を確立するなどの観点から今回の社会福祉法人制度の見直しが行われました。
■ 社会福祉法人制度改革の主な内容
具体的な改正の内容は、 (1) 経営組織のガバナンス強化 (2) 事業運営の透明性の向上 (3) 財務規律の強化 (4) 地域における公益的な取組を実施する責務 (5) 行政関与の在り方の見直し の5つとなっています。 上記(3)財務規律の強化については、社会福祉法人のいわゆる内部留保の問題が指摘されていたことを踏まえ、内部留保の明確化・社会福祉充実残額の社会福祉事業用への計画的な再投資を目的として、社会福祉法人が保有する財産について事業継続に必要な「控除対象財産」を控除したうえで、社会福祉充実残高(再投下可能な財産)を算定し、その結果、社会福祉充実残高が生じる場合には、社会福祉充実計画(社会福祉事業又は公益事業の新規実施・拡充に係る計画)を策定することが義務付けられました。
■ 社会福祉充実計画の策定について
社会福祉充実計画については、社会福祉法第55条の2において規定されており、毎会計年度において、「資産から負債を控除した額」が「事業継続に必要な財産」の額を超えるときは、既存事業の充実又は新規事業の実施に関する計画を作成し、これを所轄庁に提出して、その承認を受けなければなりません。 原則として5年間で社会福祉充実財産の全額を活用する内容とし、公認会計士、税理士等への意見聴取(地域公益事業を行う場合には地域協議会への意見聴取)、評議員会の承認を経て所轄庁へ申請・承認を受けることとなります。 所轄庁では、関係者への意見聴取を経て申請がなされていることを踏まえ、
- 計画に必要事項が記載されているか
- 手続きが適正に行われているか
- 計画に著しく合理性を欠く内容が含まれていないか
- 行政計画との関係で実現不可能な内容が含まれていないか
について審査されます。 また、社会福祉充実財産の増減など状況の変化に応じて、柔軟に変更が可能とされています。 社会福祉充実財産の算定は平成28年度決算で行われ、社会福祉充実残高が生じる法人においては平成29年度より社会福祉充実計画の策定を行うことが必要となります。 前項「(5)行政関与の在り方の見直し」においても会計監査人による会計監査や、公認会計士、税理士等の支援を受けた法人で要件を満たすものについては所轄庁による通常の「指導監査の周期」の延長を可能とする措置を予定しており、今後、社会福祉法人における公認会計士、税理士等の役割や責任が一層大きくなっていくものと考えられます。
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