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相続対策!信託について考える

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

リスクマネジメント・ラボラトリー

宮地 孝郎

皆様、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの宮地です。 今回は、『相続対策!信託について考える』と題してお届けしたいと思います。

相続税の税制改正後、相続というキーワードは一層、耳にする機会が多くなったのではないでしょうか。 その中でも「信託制度」については、まだまだ実態として活用しているケースは多くないようです。

そこで「信託」について、税理士法人福岡中央会計の瀬戸所長にお願いしています。

それではどうぞ。

従来からある「教育資金贈与信託」や、今年度税制改正で導入された「結婚・子育支援信託」という制度は、税理士の評判は必ずしも良いものではありません。 それは同制度が俗に「税理士いらず」と呼ばれ、職域を侵害するからといった単純な理由からではなく、われわれ税理士に任せていただければ、もっとタイムリーかつ効果的な贈与計画を立てることができ、柔軟に路線変更もできるのにという歯がゆい思いがあるからです。

しかし、認知症の方が資産家の場合、その親族がまったく節税策をとれない悩みを身近にお聞きしてみると、判断能力のあるうちに使える制度を早めに使ってしまおうと考えることは、十分に合理的な判断なのだと思えてきます。

「教育資金贈与信託」や「結婚子育支援信託」は、信託銀行(あるいは銀行)が関与する制度であり、信託契約を活用したものです。 このため信託契約そのものが、信託銀行に利するだけの、融通の利かない使い勝手の悪い制度ととらえられがちですが、このイメージは払拭されるべきものでしょう。

とりわけ高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍と言われる高齢化社会においては、判断能力のあるうちに将来設計ができ、それに効力を持たせることのできる「信託」の活躍する場は格段に増えるのではないでしょうか。

■ お子様のいないご夫婦

例えば、お子様のいないご夫婦の相続対策として、「すべての財産を妻に相続させる」旨の公正証書遺言を作成することは、よくアドバイスされてきました。

何も手を打たなければ、妻と夫(自分自身)の父母や兄弟姉妹が相続人であるため、嫁として立場の弱い妻に財産が確保できないと考えるからです。 しかし、妻が亡くなった後、結果的に妻の兄弟姉妹に財産が移転することについて、必ずしも本意ではないケースもあったことでしょう。

自分の兄弟姉妹に財産を譲るつもりはないけれども、時折身辺の世話をしてくれる甥っ子には、先々財産を残しても良いと思っていたとします。 この場合、財産の管理を受託する者を「甥」に指定し、受益者を「自分自身」にする信託契約を結びます。

その際、自分が死亡した場合は「妻」が受益者になり、妻が死亡した場合には「甥」が受益者になるような内容も盛り込みます。 そして、この契約が効力を発揮すると、税務上の判断として当人死亡時には財産は妻に移転し、妻死亡時には甥に財産が移転することになります。

本人から妻への財産移転にあたっては、通常の相続と同じように小規模宅地の特例など税務上の優遇措置を使うこともできます。 契約自体は信託銀行に依頼する必要はありませんし、契約者のうち誰が認知症になっても契約が変更できるように、契約内容を組み立てることが可能です。

■ 経営の委託という選択

上場会社の例では、創業者一族は、「社団法人○○」に株式の信託を委託しています。 「船頭多くして船山に登る」様なことがないよう、経営者の選択を含めた経営方針は「社団法人○○」に委託し、その受益権を創業者一族が確保するような制度設計をしています。 このため、経営の舵取りは他に移しても、実質的な支配者は創業者一族のままでいられる訳です。

認知症によって判断能力がなくなるケース、当事者が多すぎて意思統一が図りにくいケース、後継者が若年で決定権限を与えるには時期尚早なケースなど、実際に舵取りを行う「受託者」と税務上の所有者である「受益者」を分けることができれば、選択の自由度は大幅に広がります。 今後一層検討されてもよい制度であると思います。

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

いかがでしたでしょうか?

医師の高齢化に伴い、相続や医業承継のニーズは高まっています。 今後はひとつでも多くの選択肢を知っておくことは重要ですが、幅広い視野で提案ができるブレーンを持つことも、重要な解決策かと思います。

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