こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。
今回は「病医院経営者として知っておいて欲しいコストの考え方」についてまとめてみました。 では早速参りましょう。
■ コストには二つの種類がある
まず、コストには「戦略コスト」と「節約コスト」があることをご認識いただくよう推奨しております。 以下、戦略コストと節約コストについて解説いたします。
A. 戦略コストとは
戦略コストとは、患者満足度を高める資産投資(例:患者の期待値に応える医療機器の導入、業務効率を生むソフト導入など)や、人材投資(例:人件費、研修費、福利厚生費など。
「企業は人なり」という言葉がありますが、医療業も同様と考えています。 患者満足度を高める人材を確保し続けるための投資)と定義しています。
B. 節約コストとは
節約コストとは、言葉通りで節約するべき(一般的に無駄なコスト)で、削減あるいはカットすべきコストと定義しています。
節約コストは単に経費の勘定科目だけで判断してはいけません。 同じ勘定科目の中でも戦略コストと節約コストが混在している勘定科目は多くありますので、勘定科目だけで判断しないでいただきたいと思います。
例えば、給与費の中でもダラダラ残業は節約コストになりますし、診療所に貢献してくれるスタッフに対して特別ボーナスを支給するのは戦略コストと考えられます。 節約コストは、毎月固定的に支出するものから見直していくことをお勧めします。
■ 約束した支払うべきコストは払う
外部内部問わず、約束した支払うべきコストは払うという当たり前のことを遵守する。 これは極めて大切なことです。
何も価格交渉するなと言っているのではありません。 コスト削減やカットに努力をする姿勢は経営者として必要です。
しかしながら、一旦約束した支払うべきコストを「ケチをつけて支払わない」あるいは、「値切る」のは信用を失墜することになりますし、それでコスト削減、カットに成功したとしても必ずしっぺ返しを受ける事例をたくさん見てきました。
繰り返しになりますが、約束した支払うべきコストは必ず払うことを忘れてはなりません。
■ 経営者の見栄のために聖域を残さない
これまで倒産した企業の事例をたくさん見てきましたが、倒産した企業の一つの共通点は経営者が自分の見栄のための支出を続けるという事実です。
聖域を残さない自らを律する姿勢が極めて大切です。 ぜひ、このようなリスクが潜んでいないか院長先生自身、振り返りチェックしていただきたいと思います。
■ 創業精神を忘るべからず
「自院の会計状況を言えるだろうか?」「単純に毎月収入がいくらで、支出がいくらというキャッシュフローで大まかにとらえているだろうか?」 おそらく創業期(新規開業の頃)は、綿密に計算されていたのではないでしょうか。
そして、100円のお金を使うのにも躊躇された経験を持っておられるのではないでしょうか。 まさに、お金の大切さは創業期にあったと思います。 創業期の精神を忘れないでいただきたいと思います。
上記のとおり、節約コストを少なくして戦略コストへシフトさせることが経営の維持発展に必要なことは言うまでもないことですが、残念ながら、節約コストを戦略コストへシフトさせている経営者は極めて少ないと日々のコンサルティング活動を通じて多々感じます。
私自身、税理士法人の経営者として創業精神と謙虚さを忘れずにコストに向き合っていきたいと思います。 |