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m3コンシェルジュ 森島 祥哉

リスクマネジメント・ラボラトリー

森島 祥哉

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの森島祥哉です。

「良質な人材の確保と定着」は、安定した医院経営を行う上で非常に重要なテーマのひとつですが、様々な理由で医院には合わない職員さんがあぶりだされてくるとその処遇にとても手を焼くお話をよく耳にします。

かといって、一度採用した職員を簡単に解雇することは相当な理由がない限りは難しいのが現状です。

Q. 『現在、どうしても辞めてもらいたいスタッフがいます。 しかし、下手に解雇などを行うと後で法的な問題を指摘されクリニック側にとって相当な不利益になるという話を聞いているので、日々我慢している状況です。 のちのちトラブルなどが発生しないよう、合法的にクリニックを辞めてもらう方法があれば、お教え頂きたい。』(本文一部抜粋)

こんなとき一体どのような選択肢があるのでしょうか?

執筆は、関西圏域で開業・経営などクリニックの顧問を多く持つ税理士法人エイアール税理士事務所 代表社員 原 知子税理士にお願いしました。

それでは、原税理士お願いします。

勧め方次第で円満解決!
「退職勧奨」という合意形成方法

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「退職勧奨」という合意形成方法

こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 最近、ご開業2年目の内科クリニックの院長からこのような相談を受けました。

「現在、どうしても辞めてもらいたいスタッフがいます。 しかし、下手に解雇などを行うと後で法的な問題を指摘されクリニック側にとって相当な不利益になるという話を聞いているので、日々我慢している状況です。 のちのちトラブルなどが発生しないよう、合法的にクリニックを辞めてもらう方法があれば、お教え頂きたい。」

という内容です。

合法的にクリニックを辞めてもらう方法というのは余程の懲戒事由がなければ難しいと思いますが、丁寧に話し合いをして合意の上で退職してもらうことは可能と考えております。

今回は合意の上、スタッフに退職してもらう「退職勧奨」についてお伝えしたいと思います。


■ 退職勧奨とは

退職勧奨は、雇用主である院長が労働者・従業員に退職を促すことを意味します。 つまり雇用主が一方的に当該労働者・従業員を辞めさせるのではなく、労働者・従業員がこれに応じてはじめて労働契約が終了して退職することを指します。

当然、労働者・従業員は雇用主からの退職勧奨を受け入れる義務などありませんので、労働者・従業員が断れば雇用主は労働者・従業員を退職させることはできません。

このように退職勧奨はあくまで労働者・従業員の退職を促す行為を指すため原則として労働法による規制はありません。 したがって雇用主は退職勧奨については比較的自由に行うことが可能です。

ただし、労働者・従業員が断ったにもかかわらず執拗に何度も退職勧奨したり、単なる「勧奨」を超えて辞めなければならないように勘違いさせたり、脅すような言動を用いれば当然問題になりますので慎重に退職勧奨を行うことが必要です。

 

■ 退職勧奨を進める際の流れ

退職勧奨を一言でいうと、クリニックを辞めてもらいたい旨を遠回しに伝え、本人に辞める意志を固めてもらうということです。 退職勧奨を行うには、対象となるスタッフと個別のミーティングを行います。 個別ミーティングの流れは下記のとおりです。

    1. 対象となるスタッフと面談を持って、現状の考えを話してもらう。 (おそらく不平不満が出る。)
    2. 院長としてというよりクリニックとしての考えを伝える。
      (クリニックとしては最大限の配慮をしているつもりだが対象となるスタッフの活躍できる仕事を与えることができない。)
      例)「これ以上は・・・難しい」など
    3. 上記 1.と2.の意向を整理してギャップを明確にする。
    4. このギャップを抱えたまま勤務し続けるデメリットを伝える。
    5. クリニックとして対象となるスタッフに提案を行う。 例えば次のような提案です。
提案1:
精神的ストレスが出ない職場を探す。
(その際、退職金の加算など退職金のメリットを伝える。)

提案2:
勤務を続けるなら・・・勤務日数を減らす。

提案3:
現在の業務から○○の仕事に専念してほしい。(配置転換)
※ 院長が許容できる提案を3つほどの選択肢として与える。
  1. 上記 5.の提案を受け入れるか最終的にはスタッフに意志決定してもらう。
  2. クリニックとしては合意退職か許容できる提案を受け入れてもらえることをゴールとして完了させる。

上記の流れで退職勧奨を行っていくわけですが、スタッフにとっては職を失いますので、積極的にクリニックを辞めることに合意してくれるとは限りません。

粘り強く説得を続ける、あるいはスタッフ側の不満を聴き要求を受け入れるなど、少しずつクリニックを辞めることに合意してもらう方向へ持っていきます。

この退職勧奨自体に法的な効力はなく、あくまで「クリニックと社員の間のコミュニケーション」という位置づけです。

 

■ 理想としては気持ちよく辞めてもらう

合意退職にしても、ご縁があって一緒に仕事をしたスタッフの方ですから感情的にしこりを残すことは極力避けたいところです。

退職したスタッフは「あのクリニックはブラックな職場だった」と、行政官庁への通報やインターネットの書き込みなど悪評を流されることもあります。

気持ちよく辞めてもらえることはないにしても、ある程度、悪い気持ちを抱かずに辞めてもらえるよう慎重に進めて頂くことをお勧め致します。

m3コンシェルジュ 森島 祥哉

いかがでしたでしょうか?

ひとくちに『退職勧奨』といっても、「どうせ辞めるのだから、どのように伝えても同じ」ではなく、どう伝えるかで相手が感じる印象やその後の医院に及ぼす影響にも差が生まれることが分かりました。

今回執筆をお願いした原田税理士が代表を務める税理士法人エイアール税理士事務所では、税務会計だけでなく各種規程整備や人事労務に関するアドバイスもしております。

お困りの先生は、ご相談されてみるのもよいとか思います。

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