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コンシェルジュ 小野 博史

リスクマネジメント・ラボラトリー

小野 博史

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている小野です。 今回は、クリニックの開業時における税務手続きについてご紹介します。

執筆は、m3.comに掲載されており、東京(本社)・大阪・名古屋・福岡・シンガポール・香港・マレーシアに拠点を構え、医療機関経営支援専門事業部をもつAGSグループ(AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング)の三宅 寿和税理士にお願いしました。

それでは、どうぞ。

クリニックの開業時における
税務手続きについて
青色申告制度の特典

クリニックの開業時における
税務手続きについて

青色申告制度の特典

皆さま、こんにちは。 AGSグループ、AGSコンサルティング・ヘルスケア事業部 税理士の三宅 寿和です。 今回は、クリニック開業時の税務手続きについてお伝えします。

 

■ 税務署への主な届出書類

クリニックを開業するときは、金融機関からの資金調達、不動産契約、医療機器の購入やリース、保健所・地方厚生局における開設手続きなど、様々な手続きが必要になります。 開業に際しての準備期間はケースにより異なりますが、物件探しから始まり、1年ほどで開業されるケースが多いです。

勤務医として働きながら、開業準備を進める場合は、多忙の中での準備になりますのでスケジュール管理をしっかり行うことが大切です。 クリニックを開業するときの税務手続きとして、代表的な届出書類は下記のとおりです。

  1. 個人事業の開廃業等届出書
  2. 所得税の青色申告承認申請書
  3. 青色事業専従者給与に関する届出書
  4. 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  5. 源泉所得税の「納期の特例」の承認に関する申請書
  6. 消費税課税事業者選択届出書
  7. 消費税簡易課税制度選択届出書

このように、開業時には様々な届出書類があります。 税務署に提出する届出のうち、「個人事業の開廃業等届出書」は、事業を開始した場合に提出します。

また、多くの場合「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。  この「青色申告」は、所得税の確定申告時に多くの方が提出される申告書ですので、聞き馴染みのある方も多いと思います。

国税庁によると青色申告者総数は、平成29年度において659万人、青色申告の中心となる事業所得者の青色普及割合(所得税の申告納税額のある納税者に対する割合)は、60%に達しているそうです。

参考資料: 国税庁「第67回事務年報」 8P
https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/jimunenpo/67/pdf/02.pdf

そもそも所得税の確定申告には、白色申告と青色申告の2種類があります。 前者の白色申告は原則的な確定申告で、一方の青色申告は一定の要件を満たす場合に、最高65万円の青色申告特別控除などの有利な特典を受けることができます。

つまり、青色申告は、帳簿付けなどを行い、正しく所得を計算・申告することで、税制上の特典を受けることにより、節税効果が期待できる制度です。

 

■ 青色申告の主な特典

【青色申告特別控除】

  1. 青色申告特別控除は、クリニックに係る取引を正規の簿記の原則により記帳し、貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合に、最高65万円を控除することができます。
  2. 上記1. 以外の青色申告者については、最高10万円を控除することができます。

【青色事業専従者給与】
青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に専ら従事している人に支払った給与は、事前に提出された届出書に記載された金額の範囲内で専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費に算入することができます。

なお、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

【貸倒引当金】
クリニックの事業の遂行上生じた売掛金、貸付金などの債権の貸倒れによる損失の見込み額として、年末における「貸金の帳簿価額の合計額」の5.5%以下を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認めるというものです。

【純損失の繰越控除】
クリニックの所得などに損失(赤字)の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除します。

このように、青色申告には上記のような特典が設けられています。 開業される先生にとって、特に恩恵として影響が大きいのは、青色申告特別控除・青色事業専従者給与・純損失の繰越控除でしょう。

一般的に、クリニックの会計事務につき記帳代行を会計事務所に依頼される場合には、依頼を受けた会計事務所は、正規の簿記の原則により記帳し、貸借対照表及び損益計算書を作成します。 その場合には、青色申告特別控除を適用できる可能性があります。

青色事業専従者給与については、親族等がクリニックで働く場合に検討できるでしょう。

さらに、ご開業当初はクリニックの所得が損失(赤字)になることも珍しくありません。 その場合には、開業時に生じた損失を、純損失の繰越控除によって翌年以後に繰り越すことができます。 ケースによっては、この純損失の繰越控除が、最もインパクトのある特典になるかもしれません。

開業時には税理士など専門家と相談しながら、青色申告制度の有効活用を検討してみることをお勧めします。

<参考文献>
e-Gov: 所得税法 第2、52、57、70、140、143、144、148、149条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340AC0000000033

e-Gov: 所得税法施行令 第144、145条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340CO0000000096
e-Gov: 所得税法施行規則 第56、57、61、63、65条
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=340M50000040011_20180401_430M60000040012

e-Gov: 租税特別措置法 第25条の2
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=332AC0000000026

国税庁: 「法第122条《還付等を受けるための申告》関係」 141-1
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/19/02.htm

コンシェルジュ 小野 博史

いかがでしたでしょうか?

クリニックを開業なさるときは、この青色申告制度の特典を充分に活用したいですね。

今回執筆をお願いした三宅 寿和税理士が所属しているAGSグループ(AGS税理士法人/株式会社AGSコンサルティング)では、医療機関経営に関しての総合的なコンサルティングを行っています。

お聞きしたいことがある先生は、ご相談なさるのもよろしいかと思います。

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