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コンシェルジュ 神吉 信明

リスクマネジメント・ラボラトリー

神吉 信明

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている神吉 信明です。

どなたにも訪れる相続・事業承継。 その準備を万全に進められている中、その計画が一変してしまう事態が起きたとしたらいかがでしょうか?

それが認知症問題です。 相続・事業承継中、ご本人に意思能力がなくなった場合、どうなってしまうのでしょうか。

昨今、メディアでも大きく取り上げられている「家族信託」。 家族信託は何が実現できるのかを、今号から全6回シリーズでお伝えしていきたいと思います。

それでは、どうぞ。

なぜ今、「家族信託」なのか?
第1回 相続・事業承継を確実に進めるために

なぜ今、「家族信託」なのか?

第1回
相続・事業承継を確実に進めるために

■ 成年後見制度の抱える問題を解決する、家族信託

家族信託は2017年2月28日にNHKの「クローズアップ現代+」という番組で取り上げられて以来、数々のテレビ番組の報道によって、一気にその知名度が向上しました。

制度としては、実は2007年9月30日の新信託法の施行の時から存在していましたが、当時は詳しい専門家が少なく、また家族信託の活用に必須となる銀行の対応が追いついていなかったため、日の目を見ないまま10年以上の月日が経過してしまいました。

その間、ご存知のように、日本社会の高齢化はさらに進んでしまいました。
(平成30年度の65歳以上の人口割合は28.1%・総務省調べ
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html

また、銀行等の金融機関に向けて、家族が介護費や医療費を本人の銀行口座から引き出しやすくなるよう、対応を要請する動きは一部あるものの、現場では金融機関の預金出金時の本人確認はまだまだ厳しく、70歳以上の方についてはATMでの出金を一定額に制限する取り組みを行う銀行まであるのが実状です。

認知症等により判断能力を喪失したご両親の口座から介護費等を引き出したい場合には、後見制度を利用する方法もありますが、後見制度は裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与があるうえ、本人の財産の利用方法の制限がされてしまうために、本人の親族からすると非常に使いづらい制度でした。

また、後見制度は専門家の関与による専門家報酬の負担も発生するため、経済的にも利用者を圧迫する構造がありました。

 

■ 認知症によって法的なサポートを必要する高齢者の増加。 成年後見制度の、制度上の問題の露呈

このような背景から、昨今その存在が見直され始めたのが家族信託の制度です。 家族信託はその名の通り、家族に財産の管理を信じて任せる制度です。

制度といってもその構造は当事者間の契約行為に過ぎず、

  • 財産を任せる側(高齢の親)
  • 任される側(子)

が信託の契約をするだけで、簡単に効力を発生します。

また、契約の内容は原則自由ですので、成年後見制度のように財産の利用方法に制限が加えられることはありません。 当然、裁判所の監督もなければ見ず知らずの専門家の関与もありません。

このように、裁判所の関与、専門家の関与、財産の利用制限という成年後見制度において問題とされていた部分を排除しつつ、高齢者の財産管理を法的にサポートするという従来の目的を実現できるのが家族信託なのです。

 

■ 家族信託利用の環境が整い、誰でも利用できるように

家族信託の利用が増加した大きな要因はもう一つあります。 それは、銀行等の金融機関と、法務・税務の専門家である税理士・司法書士の家族信託に対する対応が追いついてきた結果、家族信託を支える社会インフラが整ってきたという点です。

今までは家族信託に対応できる専門家はごく一部でしたが、テレビなどのメディアで家族信託の情報を得た顧客側からの相談が増加することにより、家族信託を取り扱う専門家は徐々に増えて来ました。

このように、この数年での知名度の向上、家族信託を活用する環境が整備されたことにより、高齢者の財産管理をサポートするために家族信託を活用する方が急速に増えています。

コンシェルジュ 神吉 信明

いかがでしたでしょうか?

国内の信託制度は、商事信託(貸付信託・年金信託など)を中心に発展を遂げてきましたが、その一方で、高齢化社会により家族信託への期待が高まってきていました。

法改正により身近な制度となった家族信託。 先生方の相続・事業承継を確実に成功させる選択肢になると思います。

次回からは、家族信託に関する具体的な基礎知識についてご案内をしていきます。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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