■ 就業規則の作成義務と種類
常時10人以上の労働者(パートタイマー、アルバイトも含む)を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届出をする必要があります。
常時10人未満の労働者を使用する使用者については、作成・届出の義務はありませんが、職場のルールを明文化することは労使どちらにとっても重要ですので、作成の必要性はかなり高いと考えます。
また就業規則と一概に言っても規程の種類は多岐にわたり、職場におけるルールをきちんと明文化するとなると規程の数はそれなりに多くなるのが現状です。
一般的には、賃金規程、育児介護休業規程、退職金規程がありますし、パートタイマーやアルバイト、嘱託労働者など、複数の雇用形態がある事業所においては、その雇用形態ごとの就業規則も必要になってきます。
就業規則の種類の一例
- 就業規則
- 賃金規程
- 育児・介護休業等に関する規程
- パートタイム就業規則(正職員と異なる労働条件のある場合)
- 嘱託職員就業規則
- 退職金規程
- 出張旅費規程
- ハラスメント防止規程
- 慶弔見舞金規程
■ 就業規則に定めるべき事項
就業規則には必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)があります。
- 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇
- 賃金(賞与などの臨時的なものは除く)の計算方法と支払い方法
- 賃金の締切日と支給日
- 退職、解雇に関すること
上記の項目の記載がなければ、就業規則として成立しません。 また、それぞれの事業所に下記のルールがある場合には、就業規則に規定する必要があります(相対的必要記載事項)。
- 退職金
- 臨時の賃金等(賞与など)
- 安全衛生
- 職業訓練
- 災害補償、業務外の傷病に対する補助
- 表彰、制裁(解雇など)
- 事業所のすべての労働者に適用される事項(休職・出張旅費など)
一方で、規定しなければならない事項であったとしても、明確に規定した結果、柔軟な対応ができなくなるケースも出てきます。
例えば、業績によって毎回支払う金額が異なる賞与については、明確な金額を規定してしまうことで業績が苦しい時でもその金額を支払わなければならなくなり、さらに資金繰りを悪化させる原因となりえます。
そこで下の赤字のような規抽象的な規定のし方をすることも場合によっては必要になってきます。
第〇条 賞与は、原則として下記の算定対象期間の診療所の業績等を勘案して支給する。
- ただし、診療所の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、または支給しないことがある。
- 算定対象期間12月1日から5月31日: 賞与支給月6月
- 算定対象期間6月1日から11月30日: 賞与支給月12月
- 前項の賞与の額は、診療所の業績及び職員の勤務成績、在籍期間などを考慮して各人ごとに決定する。
- 賞与は、支給日当日に在籍している者を対象として支給する。
■ 就業規則の効力
就業規則の内容は、法令や事業所の労働協約に反することはできません。 仮に就業規則の内容が法令や労働協約に反する場合には、労働基準監督署は就業規則の変更を命令することができます。
同時に就業規則はその事業所の全労働者が一様に対象となりますが、経験・スキルなどを理由に労働者ごとに差を設けたいと思われる事業主も多いと思います。
その場合には、個別の労働条件については、雇用契約書で示すということが一般的です。 ここで気を付けなければならないことは、雇用契約書の労働条件は就業規則の労働条件を下回ることはできません。 上記の関係は次のような序列があると言えます。
法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約
■ 周知の義務
就業規則は作成しただけでは法的に効果が発生せず、労働者に周知して初めて有効となります。
周知の方法として、
- 事業所の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること
- 書面を労働者へ交付すること
- PC等の機器にデジタルデータとして記録し、労働者がいつでも見られるようにすること
のいずれかと決められており、部署内に就業規則棚が設けられていたり、労働者を採用する際に雇用契約書(労働条件通知書)と一緒に提示したりするのが一般的です。
また、就業規則を変更した後も労働者へ周知する必要がありますので、労働関係法の改正の多い近年においては、十分に認知してもらいやすく、かつ周知の手間のかからない方法を選択されるのがいいでしょう。
いくら完璧な就業規則を作成したとしても、労働者に十分に認知・理解してもらわなければそれはなかったものと同じですので、作成よりも周知に重点を置くことが必要です。 |