■ スタッフの採用
開業をお考えの多くの先生は既にご存じと思いますが、スタッフの採用、特に看護師やコメディカルなどの専門職の募集費用は高額になっていますので、十分な予算を組まなければなりません。
募集方法は「紹介会社を利用する」や、「募集サイトを利用する」ケースが多いようです。
■ 紹介会社を利用したスタッフの採用
「紹介会社を利用する」場合の費用は「募集サイトを利用する」場合に比べて高額なことが多いのですが、採用したスタッフがすぐに辞めてしまっても、一定の期間ならば他の候補者を紹介してくれます。
しかしながら紹介会社では、そのスタッフの人間性や能力までは保証してもらえません。 「紹介会社だから」と言って面接をおろそかにしないことが重要です。
面接は院長先生お一人でせずに、配偶者の方など身近な方と一緒に面接し、その方の仕事に対する考え方や想い、人生観などを出来るだけ多く聴くことがお勧めです。
最近では、紹介会社で採用したスタッフも契約期間を過ぎてから辞めるケースが多くなっていますので、「その候補者が求める職場と、自医院が合っているのか?」を確認する必要があります。
院長先生や配偶者の方など身近な方に協力を求め、スタッフに本音を言ってもらえる様なコミュニケーションを取ることが必要になってきています。
■ 募集サイトを利用したスタッフの採用
「募集サイトを利用する」場合の費用形態は、様々になってきています。
費用の安い順に紹介しますと
- サイトに募集を一定期間掲示する
- 問い合わせ候補者ごとに課金する
- 採用が決まったら課金する
- 登録している候補者をスカウトする
などが多いようです。
一概にどのパターンが良いとは言えませんが、クリニックの状況によって判断することになると思います。
どのパターンを利用するにしても、そのスタッフの人間性や能力を知るために、紹介会社を利用する場合と同じく、面接は院長先生お一人でせずに、配偶者の方など身近な方と一緒に面接をし、その方の仕事に対する考え方や想い、人生観などを聴くことが重要です。
■ お知り合いの方の採用
費用が掛からず、人間性や能力が判っている信用できる方を採用するのが、最も良い方法と思います。 開業する時に以前よりの知り合いの看護師さんや医療事務さんに一緒に開業スタッフとして働いてもらうことも珍しくありません。
このケースの場合、開業してしばらくすると院長先生の意識と、「以前より知り合いのスタッフ」の意識の違いが問題になることが多いです。 それは、 今までは同じ職場の同僚として息が合っていましたが、開業後は雇用主である院長先生と被雇用者であるスタッフの関係になるからです。
今までは、ちょっとしたお願いやムリなど融通を利かせてくれていたスタッフも、多くのことが労働賃金などの要求に繋がります。 スタッフが院長先生へ不満を感じ始めると職務怠慢や無断の早出や残業、賃上げやボーナスの要求が激しくなってきたりします。
あるクリニックの院長先生は開業する時に、「以前より知り合いのスタッフ」に来てもらい、他のスタッフの取りまとめや全てのことをそのスタッフに任せていました。 開業して数か月後の年末に「以前より知り合いのスタッフ」が、「ボーナスを払って欲しい」という要求を申し出てきました。
院長先生は「開院したばかりなので、まだ払える状態ではない。 ボーナスは夏まで我慢して欲しい。」と言いましたが、「以前より知り合いのスタッフ」は院長先生の状況を理解してもらえませんでした。
数回の話し合いの後、スタッフの主になっていた「以前より知り合いのスタッフ」は、他のスタッフを巻き込み全員が一度に辞めてしまいまい、このクリニックは数週間診療が出来なくなってしまいました。
開業前は院長先生のことを良く理解してくれる「以前より知り合いのスタッフ」でも、立場が変わると「院長先生の状況を理解せずに自分の要求を主張するスタッフ」になってしまう場合がありますので、綿密なコミュニケーションが必要です。
■ 引き継ぎスタッフの継続雇用
事業継承や譲渡で以前のスタッフを引き続き雇用する場合にも、注意が必要です。 スタッフの採用の手間や教育の必要はありませんが、「中心的なスタッフ」がいる場合です。
「中心的なスタッフ」の多くは変化を嫌い、今までと違う、新しい理想のクリニックを作ろうとする院長先生と衝突する場合があります。 衝突した結果、「中心的なスタッフ」を敵にしてしまい、その後クリニック診療が上手く回らなくなってしまったケースもあります。
事業継承や譲渡で以前のスタッフを引き続き雇用する場合にも、出来る限り多くのコミュニケーションを取り、相互理解を深め、「中心的なスタッフ」の意見を聞きながら徐々に変えていくことが必要です。 |