こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 最近、開業地に関する相談が増えてきております。 成功のキーワードの1つは、「立地が最優先」となっているようです。 やはり、診療圏が無いと言われているので、よほどなのでしょうか。 今回より、開業を目指される医師及び奥様方からの相談事例をもとに医院開業についてお伝えします。 【相談内容】 開業地の候補地が絞られてきました。 来院患者数を予測する診療圏調査を行い、開業地を決めようと考えています。 診療圏調査の方法及び開業地の選定方法を教えてください。 【回 答】
■ 診療圏調査の方法
診療圏調査は開業場所の選定をデータ面から検証する作業であると同時に、事業計画を作成する上での見込患者数を算出する資料となります。 医院開業をサポートする医薬品卸会社やリース会社などは診療圏調査のソフトで調査を行います。 ソフトで計算しても自前で診療圏調査を行っても下記のプロセスで診療圏調査は進めていきます。
- 情報の収集(町丁別人口統計他)
市町村役場で町丁別、年齢別の人口統計や最近の人口動態の資料を入手し地図を用意します。 ソフトの場合は国勢調査のデータをもとに行われます。 最新の人口統計は管轄の市町村で入手可能ですのでご確認ください。
- 診療圏の設定
自院の診療圏を設定します。 診療科や地域の状況によって異なりますが、例えば都市部における内科診療所の場合、概ね半径500メートル範囲内と考えられます。 特殊な診療科の場合や郊外であれば当然、範囲も広くなります。 弊社では診療科別診療圏設定表をまとめていますのでご希望があればお申しつけください。
- 診療圏マップ作成
地図に開業予定地と競合医療機関、公共の交通機関などポイントとなる箇所にプロットや印をつけていきます。
- 患者数の推計
設定した診療圏内の人口に受療率(人口10万人当たりの1日当たり推計患者数)を掛けて計算します。 受療率は厚生労働省が3年に一度行う「患者調査」の結果をもとに傷病別、性別、年齢別などに計算されています。
- 見込患者数の算出・総合判断
上記4.で算出した患者数は他に競合する医療機関が全く無いことを想定した場合の診療圏内の潜在的な患者数を意味します。 大病院など診療圏外に患者が流出している。 もしくは、診療圏内に同様の診療科がある場合にはこれらを割り引いて最終的に開業後の自院の見込患者数を算出できます。
■ 開業地の選定方法「ロケーション調査」
地域を歩きどこに何があるのかを把握することを弊社では「ロケーション調査」と呼んでいます。 地図を片手にその地域をご自身で歩いてみて、どこに学校・スーパー・会社・役所等があるか。 人通りや車の交通量はどうか。 競合となる医療機関の様子をご自分の目で見ていただくことをお勧めしています。 また、時間帯を変えて下記の視点で開業地周辺の朝・昼・夜の顔(状況)を知っていただきたいと思います。
- 土地条件面
土地の広さ、用途などが開業に適しているかどうか。 チェックポイントとしては建ぺい率・位置・間口・用途制限などがあります。
- 交通面
主に利便性をチェックしていきます。 チェックポイントとしては駐車場・公共の交通機関・道路整備状況・渋滞状況・人の流れなどがあります。
- 将来面(地域性)
活気があり将来性のある地域かどうか。 チェックポイントとしては人口の動態・交通事情の整備・都市宅地開発の有無などがあります。
- 競合面
競合となる医療施設の状況。 単に多い少ないだけでなく競合の院長年齢・得意分野・患者数などチェックしていき将来的に自院の患者数増加が期待できるかをチェックします。
診療圏調査で得られた結果はあくまで「目安」数値データです。 むしろ、これを「目標」と捉えて現地をご自分の目で上記の視点で観察していただき、開業コンサルタントが提案する診療圏調査や事業計画書に書かれている患者数に対して、達成イメージが持てるかが重要なポイントです。 開業は人生の大きなイベントです。 上記の視点で慎重かつ迅速に決定していただくことをお勧めいたします。
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