皆さま、こんにちは。 AGSグループ、AGSコンサルティング・ヘルスケア事業部の影山です。 当社にて3月9日に開催いたしました「私的二次救急医療機関への特別交付税制度セミナー」について内容のレポート(2回目)をお伝えいたします。 今回は、この制度の具体的な申請方法についてです。
■ まずは担当者を決めるところから
さて、対象の病院同士の連携が取れたところで、いよいよ市町村との交渉に入ります。 しかし、どこの市町村に行っても、この特別交付税担当窓口はありません。 まずは病院が普段繋がりのある市町村の担当者などを訪ね、担当窓口を決めます。 事例の中では、健康増進課、健康推進課等、地域の健康推進事業に携わっている課が窓口になることが多く、交渉が進むにつれ財政課や企画課など予算の査定に携わる課へ話を上げていく流れになります。 最終決定権は首長(市長・町長・村長)にありますが、場合によっては、担当の窓口との交渉だけで制度の活用が決まることもあり、交渉の回数や頻度も市町村とのやりとり次第となるのです。
■ 病院側の努力も重要
市町村の予算計上というハードルを越える為には、病院側が一生懸命取り組むことも重要です。 市町村から依頼のあった資料を即座に作成したり、コンスタントに市町村へ検討状況を確認したり、院内業務とのバランスを見ながら、本件にもしっかり本腰を入れて交渉を進めることも非常に重要です。 また、市町村の予算計上には時間がかかる場合も多いので、交渉が数年にわたるケースも珍しくありません。 2年目以降も諦めず交渉を続けた結果、制度の活用が決定した事例もたくさんあります。
■ 交渉相手は市町村だけ?
まずは病院が所在している市町村との交渉がメインとなりますが、救急医療は二次医療圏で行っていることがほとんどなので、周辺の市町村を巻き込んで進めることも多いです。 その場合、周辺の市町村にも説明や交渉へ行き、広域にて検討をする為、長期戦になることが予測されます。 制度上、対象の病院が所在している市町村でなくても活用が可能な為、所在している市町村より、隣の市町村からの救急患者の受入が多い場合には、隣の市町村を交渉の対象とするケースもあります。 また、市町村の検討状況がなかなか進まない場合には、医師会や消防に協力の要請をすることも稀ではありません。
■ 病院群輪番制の補助金との関係性は?
病院群輪番制の補助金(以下、輪番の補助金とする。)との兼ね合いについては、ほとんどの市町村との交渉にて議論になります。 もともと輪番の補助金は厚生労働省の国庫補助金として、各市町村を通して対象の病院へ助成されておりましたが、小泉元首相の三位一体の改革にて国庫補助金から一般財源へ移行がされました。 その分、普通交付税の一部に補てんがされておりますが、一般財源には明確な内訳けがなく使途が決められていない為、何に使うかは市町村の自由となっています。 本制度については、市町村が対象の病院へ助成をしない限り、総務省から自治体への交付はしないことが決められているので、一種のひも付きの補助金とも言えます。 また、本制度は救急医療の体制補助として創設された為、輪番の補助金とは全く別の制度となりますが、そこの棲み分けが曖昧になりがちなので、交渉をするうえでの高いハードルのひとつです。
■ まとめ
ここまで制度活用の交渉において重要なポイントを上げてきましたが、交渉が順調に進んでいても、最後の最後で活用を断念せざるを得ないケースも多々あり、反対に、交渉がなかなか進まない状況が続いた後に活用がなされた事例もあります。 最終的には、さまざまな外的要因や市町村の財政状況も加味したうえで、市町村と病院が協力しながら、地域の医療を守る手段のひとつとして、制度の活用を選択することが最も重要と言えるでしょう。
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