皆さま、こんにちは。 TOMA税理士法人 ヘルスケア事業部です。 今回は「医療法人関連の医療法改正情報」の第1回、「認定医療法人制度の改正」についてお伝えします。 平成29年6月14日に公布された医療法等の一部を改正する法律により、持分の定めのない医療法人への移行計画の認定制度が改正され、平成29年10月1日から施行されました。 そこで今回はこの改正された認定医療法人制度の概要について、次回は新たに追加された認定要件とそれをクリアするための主な対策について、お伝えします。
1. 認定医療法人とは
現在、出資持分のある医療法人の社員(株式会社でいう株主のことをいいます)になられている先生方は理事長を兼任されている方も多く、以下のようなお悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。 「出資者の方にもしものことがあって、その相続人から持分の払い戻しを請求されたらどうしよう。」 「病院の運営を頑張ったおかげで法人の資産も増えたけど、親族外の出資者から持分の払い戻しを請求されたら大変だ。」 これは長年運営してきた医療法人の純資産の額が大きくなったために相続税額が高くなってしまったり、社員をやめることにより出資持分に応じた金額を支払わなければならなくなったり、という状況が現実問題として生じてきていることを意味しています。 厚生労働省は上記のような悩みを解決するために、出資持分を放棄することによって出資持分のない医療法人への移行を進めています。 この移行をするために厚生労働省の認可をもらった医療法人のことを「認定医療法人」といいます。
2. 改正前と改正後の違い
認定医療法人の大きなメリットとしては、世代交代のたびに発生する相続税を支払わなくてもよくなることです。 (デメリットとしては、出資持分という財産権を放棄することになります。) しかし、そんなに簡単に国税庁が相続税の免除を許すはずはありません。 移行前の医療法人の出資者が、その出資持分を放棄したことによって親族等の相続税または贈与税の負担が不当減少した場合には、相続税法第66条第4項の規定の適用を受け、医療法人を個人とみなし、医療法人に対し贈与税が課税されます。 この「不当減少要件」をクリアしているか否かにより、せっかく出資持分を放棄して相続税を支払わなくてもいいはずが、医療法人を個人とみなして医療法人に贈与税が課税されてしまう可能性があります。 これでは何のために出資持分を放棄したのかがわからなくなります。 改正前ではこの不当減少要件をクリアするための条件が厳しかったために、移行が進みませんでした。 改正前の制度は平成26年10月1日~平成29年9月30日までの期間で実施されました。 しかし、実際に移行された件数は平成28年9月30日時点となりますが、全国の持分あり医療法人数43,203件のうち61件(うち完了件数は13件)です。 (厚生労働省「持分なし医療法人への移行計画認定制度について」 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000106957_14.pdf より) 今回の改正により、この要件が緩和されたため移行しやすくなっています。 この要件につきましては次回お伝えする予定です。
3. 移行計画の認定制度と税制措置について
相続人が「持分あり医療法人」の持分を相続または遺贈により取得した場合、その法人の移行計画の認可を受けた医療法人であるときは、移行計画の期間満了まで相続税の納税が猶予され、持分を放棄した場合は猶予税額が免除されます。 また、出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分が増加することで、贈与を受けたものとみなして他の出資者に贈与税が課される場合も同様となります。 さらに移行計画に基づき「持分なし医療法人」へ移行した場合、出資者の持分放棄に伴う法人贈与税については非課税となります。 (1) 移行期間 平成29年10月1日から平成32年9月30日の間の3年間 (2) 移行の期限 移行計画の認定を受けた医療法人は、認定の日から3年以内に「持分なし医療法人」へ移行をしてください。 もし移行をしない場合は認定が取り消されて、遡及して課税されます。 (3) 移行後6年間の運営状況 移行完了後6年間は、毎年「持分なし医療法人」の運営状況を厚生労働省へ報告する必要があります。 移行が完了しても、その後6年間は厚生労働省へ報告義務がありますが、これをクリアできれば出資持分に伴う様々なリスクから解放されます。 地域医療の要として今後も安定して医療を提供するためにも、ぜひご検討してください。
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