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m3コンシェルジュ 高橋 睦

リスクマネジメント・ラボラトリー

高橋 睦

事業を始め、確定申告をする際は「青色申告」か「白色申告」を選択します。 どちらも記帳・帳簿書類の保存が必要ですが、「青色申告」を選択した場合、より厳しい水準の帳簿の備え付けや、日々の取引の記帳が義務付けられます。

それでは、なぜ多くの個人事業主は「青色申告」を選択するのでしょうか?
それは、煩雑な記帳義務を上回る、税制上の特典が受けられるからです。

「こんなときどうすればよいですか?」税務編
-第2回
青色申告制度

「こんなときどうすればよいですか?」税務編
-第2回

青色申告制度

皆さま、こんにちは。 「岡本雄三税理士事務所」の税務担当、小島美貴です。

今回は、この「青色申告制度」を選択することにより受けられる特典についてお伝えします。

 

■ 事例1 個人事業を手伝ってくれる親族への給与は、経費にならない?

「当院の事務スタッフが急に退職することになり、急遽、妻が手伝ってくれることになりました。 妻にも給与を支払いたいのですが、経費にできないでしょうか?」

意外に思われるかもしれませんが、生計を一にする配偶者、その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合に、その親族等に支払う給与は、原則として必要経費に算入できないというのが原則です。

しかし、一定の要件を満たした場合、白色申告者については「配偶者は86万円、それ以外の事業専従者は1人につき50万円」を所得の計算上控除することができます。 そして青色申告者は控除額に上限がなく、実際に支払った給与の金額を必要経費とすることができます。

ただし、今回の事例の場合、以下の注意が必要です。

注意1 青色事業専従者に支払われた給与であること
青色申告者の「配偶者」であれば、誰でも受けられるわけではありません。

青色事業専従者として認められるには、次の要件のいずれにも該当する人になります。

  1. 青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族であること。
  2. その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
  3. その年を通じて6月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること。

「新しいスタッフを採用するまでの2、3ヶ月の間だけ…。」や「他でも働いている…。」などの場合は、必要経費として認められません。

注意2 あらかじめ税務署への届出書が必要です
青色事業専従者としての要件を満たしていても、奥様へ支払った給与を必要経費にできるわけではありません。 必要経費に算入しようとする年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

この届出書には青色事業専従者の氏名、職務の内容、給与の金額、支給期なども記載しますので、奥様への給与の支給は計画的に行う必要があります。

注意3 給与金額について
前述した要件をクリアしても、奥様への給与金額があまりにも相場とかけ離れていて、労務の対価として相当ではないと判断されると、必要経費として認められない可能性があります。

奥様の給与金額を決める際は、他のスタッフや同業種の給与金額の相場などを参考にします。 また、青色事業専従者として奥様が給与の支払いを受ける場合、事業主である院長先生の方で38万円の配偶者控除を受けることができません。

院長先生、および奥様の納税シミュレーションを行うことをおすすめします。

 

■ 事例2 開業後1年目は赤字の見込み。 それでも確定申告は必要?

「当院は、今年の9月に開業しましたが、様々な費用がかかり、今年は赤字の見込みです。 確定申告はしなくてもよいですか?」

開業した年や、多額の設備投資を行った年などは、赤字になってしまうことがあります。

青色申告者は、事業所得などに赤字の金額がある場合で、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額があるときは、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、その年に生じた損失を、翌年以後に発生した所得金額から控除することができるという特典があります。

この特典を受けるには、その年分に青色申告書を提出し、その後において連続して確定申告書または損失申告書を提出する必要があるため、赤字でも確定申告をすることをおすすめします。

 

■ 事例3 開業準備でパソコンを購入したけど、一括で経費にできる?

「購入年に全額経費計上することができると聞いたのですが・・・。」

備品などの資産を購入したときは、その取得するために支払った費用がそのまま必要経費になるのではなく、これらの資産の種類、構造、用途などの別に、耐用年数を基にして計算した減価償却費だけがその年分の必要経費になります。

しかし、青色申告者が取得価額30万円未満である減価償却資産を、平成18年4月1日から平成30年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件の基に、その取得価額に相当する金額をその年に一括で経費にすることができます。

一方、白色申告者は10万円未満の減価償却資産を取得した場合にしか、一括で経費にできません。 年間合計300万円の上限枠はあるものの「備品」以外の減価償却資産、また中古資産も対象になるため、上限や選択適用を利用して、有効活用されてはいかがでしょうか?

 

■ その他の特典

「青色申告制度」には、今回ご紹介した内容以外にも、ご開業される院長先生が実際に活用できるものとして、以下のような特典もあります。

1. 医療用機器の特別償却
1台500万円以上の高額な医療機器(高度な医療に資するもの、または医薬品、医療機器など法の指定を受けてから2年以内のもの)などを取得した場合に、その取得金額の12%を特別償却費として経費にすることができます。 (例、X線CT診断装置、超音波画像診断装置など)

2. 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除
一定の要件を満たし、従業員への給与等の支給総額が基準事業年度から増加した場合に、その増えた給与額の10%を所得税から控除できます。

m3コンシェルジュ 高橋 睦

いかがでしたでしょうか?

2014(平成26)年1月からは、「白色申告」でも記帳と帳簿類の保存が義務付けられました。 双方の手間が以前よりも変わらなくなってきています。

「青色」か「白色」、運動会などを思い出しますが、申告制度では「青色」に軍配が上がりますね。

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