■ クリニックをいつまで続けるのか
クリニックを経営していてある程度のご年齢になると、「自分はいつまで診療を続けるのか」という疑問がわいてきます。
- 生涯現役で勇退など考えず、いつまでも診療を続けていきたい。
- 将来は医師になった子供にクリニックを承継し、自分は週に2、3日、昔からの患者さんの診察をしていたい。
- 子供にクリニックを承継した後は悠々自適に暮らしていきたい。
- 子供はだれも医師にならなかったが、地域医療の継続のため、だれかにクリニックを承継してほしい。
- 地域医療の継続のため、いつまでも診療を続けていきたい。
など、 「クリニックをいつまで続けるのか」という問題については多くの考え方があり、先生方お一人お一人、それぞれ異なります。
■ クリニックの継続(承継)
クリニックを子供に承継したいと希望されても、昨今は医師免許の受験資格を得るための医学部入学も簡単ではありませんし、子供が医師になったとしても専門科目が違ったり、開業志向がなかったり、もしくは結婚相手の状況で承継はできなかったりと、現実は希望通りになるとは限りません。 また、クリニックを第三者に承継してもらうとしても、「いったいどんな方法があるのか」「医療法人と個人クリニックはどちらの方が良いのだろうか」「権利を売却する場合のクリニックの価値はどの程度なのか」「承継してくれる先生はどのような診療方針なのだろうか」「スタッフの雇用は維持できるのだろうか」「地域の患者さんは納得してくれるだろうか」と、やはり悩みはつきません。 「クリニックをいつまで続けていくのか」という問題への回答の選択肢は前述のようにさまざまですが、能動的に承継方法を作り出すことがとても難しいのがクリニック経営です。
■ それでは、どのように考えていけば良いのでしょうか?
先生方のお考え通りに進めば良いのですが、承継する場合は相手がいますし、承継しない場合でも、ご家族への影響は避けられません。 例えば税金の問題を考えても、
- 「子供に承継する」場合は相続または贈与となり、相続税・贈与税の問題が発生します。
- 「第三者に承継する」場合は譲渡することになりますので、所得税の問題が発生します。
- 「自分で継続する」場合でも、万が一院長先生が死亡された場合、ご家族には相続税の問題が発生します。
結果としてどのような承継方法を選択することになったとしても、税金の問題は発生しますので、いずれの場合でもクリニックの財産価値が問題となるのです。 また、医療経営の資産と個人の資産とが明確に分かれていないのであれば、ご家族の間での「財産の分割の問題」も発生するでしょう。 承継の時点でどのような評価になりそうかという未来の予測のためには少なくとも現時点での財産価値の評価が必要です。 クリニックの承継問題と税の問題は切り離して考えることはできませんので、現時点での客観的な財産評価がなければ、将来の問題への備えを考えることはできません。 承継のためには個人経営のままが良いのか、医療法人が良いのかと迷われる先生方もおられますが、現状が見えてくれば「個人経営」「持分あり医療法人」「持分なし医療法人」と経営形態を検討するなど現時点でできる対策が見えてきます。 ご自身の未来の設計を考えていただくために、少しだけ時間がかかりますが、現状把握をしてみることをお勧めします。 では、未来の設計書通りに承継がうまくいったとして、先生の生活面での経済はどのように維持するのでしょうか。 ご勇退後の生活費の額を想定し、今のうちから貯めておく。 その一点につきますが、どのような方法で貯めていくのが良いのでしょうか。 この内容についてはまた別の機会にお伝えしたいと思います。
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