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m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている米田 弘司です。

クリニック開業 コロナ禍に学ぶ」の3回目は、「開業時には女性の第六感をフル活用」です。

開業時には先生の志だけでなく、周囲の協力が最も必要だと考えられています。 なぜなら、開業は医師として大きな決断でもあり、診療所開業は医療と経営の責任者となり、一般的に「孤独」ということになるからです。

そのような中、冷静に客観的に助言をくれるパートナーは、多くの場合、奥様になるでしょう。 奥様に事業意欲が強いのであれば問題がないのですが、開業に後ろ向きな方がいらっしゃるのも事実です。

現在、コロナ禍でクリニック経営は相当なダメージを受けています。 そのような中でも注目する、奥様の役割と組織を創ることに触れてみようと思います。

そこで今回は、奈良県香芝市に開業されている永野整形外科クリニックの永野光様にインタビューしてまいりました。

2009年に開業され、2015年には院長夫人を対象としたセミナーやソーシャルワーカーである技術を用い、経営支援を行うサポート事業として株式会社クリニックイノベーションサポートを立ち上げました。

それでは、どうぞ。

オンライン開業塾2020秋
第3回クリニック開業 コロナ禍に学ぶ
「開業時には女性の第六感をフル活用」

オンライン開業塾2020秋

第3回クリニック開業 コロナ禍に学ぶ
「開業時には女性の第六感をフル活用」

【米田】
開業11年が経過していますが、開業当初より順風満帆でいらっしゃいましたか?
 

【永野 氏】
開業当初は患者様が少なく、本当に不安な日々を送っていました。 そのような中、スタッフの言動に傷つき、孤独になり、どうしようもない気持ちでいっぱいでした。 今でしたら、うまくかわすこともできたのでしょうけど、懐かしいですね。

【米田】
私は、先生には開業を考えた時から、惜しまずに奥様へ相談し手伝ってもらうことを勧めています。 開業後はクリニック経営の最強パートナーとして、スタッフの一員として働いてもらい、人件費が軽減できるメリットもあります。

しかし、そこが重要ではなく、スタッフ採用の時、開業後のスタッフの気持ちを感じなくてはならない時、女性にしかわからないことが多いと感じています。
 

【永野 氏】
そうですね。 奥様がクリニック経営に参画することに対し、否定的な考えを持っている先生もいらっしゃいます。 それは一切否定しません。

一方、開業当初から手伝ってもらおうと決めている先生もいらっしゃいます。 その先生は是非、奥様の第六感を投入するかどうかを選択していただきたいと思います。

例えば、採用活動において、コロナ禍では電話面接やオンライン面接が一般的になっています。 そのためリアル面談でないため、受け答えを主に、感受性をフル活用します。

リアル面接では、靴・におい・つけまつげ・髪の色・爪・身だしなみ・化粧の状態・履歴書との格差・自己評価PR・アンケートの記載・言葉づかい・乗ってきた車・待機時の態度・二面性の有無・文字・動作スピード・質問への受け答えなど、実は女性にしか気づけない何かを感じることがあります。

【米田】
採用の入り口だけで、第六感フル稼働ですね。 採用後はいかがでしょうか。
 

【永野 氏】
入職ガイダンスでは労働条件の明示を行いますので、採用面接とは違った反応を感じることがあります。 どこにコミットメントして、どのようにクリニックで働こうとしているのかを言葉にせずして察知することがあります。

良い方向に向けばA、悪い方向に向けばBとリスクマネジメントを予知します。 他のスタッフに交じって働き始めると、人と人との化学反応を起こしだします。 起きている化学反応も様々です。

時間を要してじわじわくるもの、速攻変化の急速なものがありどちらにも感じ取ることができます。 もちろん化学反応にも良悪がありますが。

【米田】
開業後、院長先生は、家族よりも長い時間をクリニックで過ごします。 診療に集中することが一番なので、奥様はスタッフの一員との考えでいいでしょうか。
 

【永野 氏】
そうですね。 共同経営者なので、ただのスタッフと思われるのは疑問を感じます。 私はクリニックの経営支援をしているのですが、院長先生は、診療に集中したい思いから、面倒なことを見て見ぬふりをする傾向がよく見受けられます。 男性の気質なのかと思ったりします。

しかし、そのことが何年もかけて組織をむしばむこともわりとあります。 そういったリスクマネジメントの意味でも、放置か介入かの判断は先生が決め、介入の判断であれば、奥様の第六感を素直に頼り、奥様はフル稼働の時です。

スタッフへ声をかけるタイミング、第一声の言葉は女性ならではないでしょうか。

【米田】
男性の苦手な部分かもしれませんね。
 

【永野 氏】
そうこうするうちに5年が過ぎ、組織が良い意味でも悪い意味でも熟してくるとスタッフの新旧対立・担当業務の抱え込み・個別スタッフ間対立の組織への影響問題など、熟成後問題課題がひっきりなしに訪れます。 それらにも第六感はフル稼働でしょう。

【米田】
そもそも、組織の強固は医業問わずどこにでも必要な要素です。 しかし、それは非常に難しく、思い通りにはなりません。 医業だけに関して考えれば、組織の結束が必要な理由はどのような理由でしょうか。
 

【永野 氏】
今回の新型コロナウイルス感染症、台風や地震のような自然災害など、誰のせいでもない課題が私たちを襲い、そのことで組織力が問われたりします。

仲が良さそう、当医院は協力できているなどと思っていても、こういった原因のない障壁を乗り越えられずにいると、新型コロナウイルス感染症を恐れてスタッフが出勤しないクリニックも現実に現れています。

このようになってからでは遅く、未然に防ぐ意味でも常にアンテナを張っておかなければならないと日々思っています。

【米田】
組織は意外と脆く、経営側だけの想いで創り上げるものではないと感じました。 スタッフの変化には日々気を付けることですね。
 

【永野 氏】
Withコロナかつ多様性受容を求められる社会で、クリニックを安定的に運営するには、やはりスタッフという人的資源が生命線です。 クリニックの役目の中に、患者さんが安心かつ安全に医療で地域貢献することですが、それはすなわち夫婦でスタッフマネジメントに労を尽くすことも意味すると考えています。

なぜならば、夫婦でクリニックを作っていく志が一致していなければ、リーダーや事務長職が必要になります。 先生が診療に集中する環境がなければ、患者様に貢献できにくいからです。

なるべく、妻はバックオフィスを担当しながらかつ第六感を磨いて使う、さらに磨いて使う。 この連続です。

【米田】
人事労務に関して、奥様へ丸投げの先生をたまに見かけます。 しかし、組織力を高めるには夫婦で作っていくという心意気がなくては、ならないことがよくわかりました。

奥様へ開業を手伝ってもらおうと思っている、開業後クリニックに入ってもらおうと思っている先生に、奥様の気持ちになってお伝えしたいことはありますか。
 

【永野 氏】
私たち妻の存在は、スタッフにとって少しくらい苦にならないと、注意が入らないこともあります。 苦になりすぎるとハラスメントと訴えられ、クリニック内で居場所がほしいというのが本音です。

そのような気持ちを奥様だけに配慮していただけると、年月とともに、一緒に第六感を働かせてくれるスタッフに恵まれたりしますし、クリニックの組織力も高まり、過ごしやすくもなっていきますので、奥様の協力が必要と思っている先生は、女性の第六感をフルに活用できる環境を是非整えていただきたいものです。

【米田】
第六感とは勘やインスピレーションであり、全く理論的ではありません。 しかし、開業という一大事には理屈では通らないことも多くあります。

女性の鋭く物事の本質をつかむ心の働きは、このような時こそ注目すべきと思いました。
 

コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

今回は、コロナ禍における「開業時には女性の第六感をフル活用」と題して、医療法人康心会 谷口智康理事長にインタビューしてまいりました。
https://yao-taniguchi.com/

「夫の開業という一大事、最強の助っ人となるために、磨くべき第六感」といつも思っておられるようです。 院長夫人でありながら、ご自身の経験とノウハウを活かし、院長夫人やクリニック経営のサポートもされています。

毎日どこかのクリニックで起こる、労務問題に対応して活躍され、医療系雑誌社にコラム寄稿や、書籍「院長妻から院長夫人への42のメッセージ」を出版されています。

最後までお読みいただきありがとうございました。