■ 取り巻く環境
現在、開業医全体の4分の1が70歳以上と高齢化していること、都市部診療所医師のうち90%以上が後継者不在(帝国データバンクより)であること、アーリーリタイアを求める医師が増えていることなどから、第三者承継(M&A)による開業が増加しています。 従来は親族間の承継が当然のように行われていたかと思います。 しかし、現在では、大学に残って研究を続けられたり、別の専門科目を選択されたりと、跡を継いでもらえないといった状況も多いようです。 第三者承継が珍しくない時代になってきたようですね。
■ 第三者承継の検討事項とは?
- 自分の目指す医療と承継施設の規模、地域、内容が一致しているか
- 無形の「のれん代」等により、価格条件で折り合えるか
- 承継の時期が開業予定時期に合致するか否か
- 施設の老朽化が著しく、不測の修繕が必要ではないか
- 自宅併用のクリニックの場合、診療部分と住宅部分の区別が明瞭であるか
上記以外にも検討事項はたくさんあります。 もちろん、決断するのは先生方ご自身ですが、的確なタイミングで、必要なアドバイスをくれ、客観的に進められる専門家選びも重要ですね。
■ 譲渡時期による違い
1. 生前譲渡の場合
- 利益等に応じて営業権が発生することが多い
- 開業直後から一定の患者数が見込める
< 事例 > 医療法人の承継。 前院長が高齢となったため、引退。 前院長との引き継ぎを経て承継したため、休院期間なし。 引き継ぎ後、1~2割程度の減少があったが、1年足らずで承継前の患者数まで増患。 2. 死後譲渡の場合
- 営業権が評価されないケースが多い
- 前院長時代の患者様が離れてしまい、立ち上がりが厳しくなる
< 事例 > 前院長が急逝、1年間の休院を経て承継。 前院長の際は100人/日程度の来患数があったが、現在70人/日程度で推移。 閉院してから時間が経つと、患者さんは他の医療機関を受診しますし、スタッフの雇用継続も難しくなります。 前院長のリタイア時期と、引き継ぐ先生の退職時期とのタイミングを合わせることが理想的です。
■ 第三者承継の「メリット」は?
< 承継で開業した先生たちの声 -よかったこと- >
- 「最初から固定の患者さんが来院してくれたため、経営が楽だった。」
- 「前院長が開院後も数ヶ月の間、診察を手伝ってくれたため、患者のスムーズな引き継ぎができた。」
■ 第三者承継の「デメリット」は?
- 売り手との地域、価格、タイミングのマッチングを考えなければいけない
- 内装や医療機器は前経営者が選定したものなので、自由度が少ない
- 医療法人の場合、前経営者の税務調査のリスクや労務リスクなどを引き継ぐことがある
< 承継で開業した先生たちの声 -大変だったこと- >
- 「空調や医療機器など老朽化していたため、修繕費が想像以上にかかった。」
- 「患者対応、従業員間すべてにおいて、前医院のローカルルールがあったため、最初はやりにくいことが多々あった。」
■ まとめ
新規開業の状況は年々厳しくなっており、特に都心部での開業は厳しい立ち上がりとなるケースが多く見られます。 リスク軽減の一形態として、第三者承継による開業の割合は増加しており、案件は限られているが、優良な案件に巡り合えれば経営は安泰です。 より有利で、より低リスクの開業をするためにも、あらゆる面で診療所の開業・運営に熟知したコンサルタント・専門家に相談することをお勧めします。
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