前回に引き続き、開業時に届け出が必要な人事労務に関する書類についてお伝えします。 今回は社会保険(健康保険・厚生年金保険)に関する書類を届け出る年金事務所です。 年金事務所には、「新規適用届」と「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の届け出をします。 前回、ご説明をした労働保険・労働基準法上の書類は、原則、職員(労働者)を雇用した時点で届け出義務が発生しましたが、年金事務所に届け出をする書類は、社会保険に加入する要件を満たす事業所のみ、届け出義務が発生します。
■ 「新規適用届」
次に該当する事業所は、社会保険の強制適用事業所となります。
- 法人事業所で常時従業員(事業主のみの場合を含む)を使用するもの
- 個人事業所で常時使用する従業員が5人以上の事務所、工場、商店等
したがって開業時が職員4人以下(先生を除く)でしたら、新規適用届等の届け出は必要ありませんが、職員4人以下でも社会保険に加入することができます。 これを「任意適用事業所」といいます。 職員の「2分の1以上」が社会保険加入に同意していることが必要で、職員4人の場合は、最低2人の同意を得ることで申請の条件を満たします。 年金事務所に「任意適用同意書」と「任意適用申請書」を提出し、厚生労働大臣の認可を受けることで社会保険に加入します。 ただし、任意適用の認可を受けると、仮に加入に反対をした職員がいても、その人も社会保険に加入しなくてはならないので、注意が必要です。 開業時は、社会保険の加入要件を満たすことがあまりないかもしれませんが、職員を増員して常時使用する職員が5人以上になる、もしくは法人成りをした時は、その日から5日以内にクリニックの所在地を管轄する年金事務所に新規適用届の届け出をします。 また、「常時使用する」という意味は、常勤職員もしくはフルタイムのパート職員を使用するということです。 例えば常勤職員3人、パート職員2人(2人とも週20時間程度の勤務)で開業した場合、職員の人数は5人ですが、「常時使用する」職員は3人という扱いになりますので、新規適用届を届け出る義務(=社会保険に加入する義務)はありません。
■ 「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」
次に「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」ですが、初回は新規適用届と一緒に届け出をします。 資格取得届には、社会保険に加入する職員の氏名・生年月日・住所・基礎年金番号・月額給与等を記載します。 基礎年金番号は年金手帳に記載されており、番号がわかれば、資格取得の手続きは可能ですので、年金手帳の提出は必要ありません。 職員から基礎年金番号を教えてもらうか、基礎年金番号が記載されている年金手帳のコピーを入職書類と一緒に提出してもらいます。 資格取得届に記入する月額給与ですが、基本給だけでなく、家族手当や住宅手当等、職員に支給する全ての給与の合計額を記入します。 もし、通勤手当を3ヶ月分もしくは6ヶ月分支給しているのであれば、3もしくは6で割って1ヶ月あたりの通勤手当を算出し、月額給与に加算します。 職員の中には、配偶者や子供を扶養している人も多いと思います。 社会保険加入は職員にとって傷病や産前産後休暇中の補償もあり、さらに厚生年金にも加入するので、将来受給できる年金額も増えるといったメリットは多いですが、雇用主である院長先生にとっては保険料の半額を負担することになりますので、メリットばかりではありません。 そこで次回は、家族を扶養に入れる条件や手続き、院長先生からの相談も多い医師国保・健康保険のメリット・デメリットについてご説明をします。
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