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m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

リスクマネジメント・ラボラトリー

宮地 孝郎

皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの宮地です。

日本の社会保障制度は複雑だと聞くことがあります。 勤めている時は病院の総務課などが手続を代理してくれていますが、開業され事業主になるとご自身で手続をしなければなりません。

医療経営におかれましては、なじみ深い「健保」や「国保」といわれる医療保険制度について、理解を深めておく必要がありそうです。

今回(前回)は、川庄公認会計士事務所の北原氏より、「開業から医療法人化を意識する ~社会保障 医療保険をどう検討していくか~」と題してお話させていただきます。

【開業準備から医療法人化を意識する】 第2回
社会保障 医療保険をどう検討していくか

【開業準備から医療法人化を意識する】 第2回

社会保障 医療保険をどう検討していくか

私どもも、顧問先の先生方から公的な社会保険について多くのご質問をいただきます。

今回は社会保障の中でも、名称が多く複雑だといわれている「医療(健康)保険」についてスポットを当ててみます。

 

■ 日本の社会保険制度とは

(国民皆保険・強制保険などと呼ばれることも)
厚生労働省「日本の社会保障制度概要」より
?厚生労働省「日本の社会保障制度概要」より

4つを合わせ社会保障といわれます。 一般的にいわれる社会保険とは医療(健康)保険と年金の2つをイメージされる方が多いのではないでしょうか。

 

■ 開業するとどう変わる 医療(健康)保険

勤務医の先生であれば被用者保険といわれる「健康保険(協会けんぽ)や共済組合」に加入しています。 個人で開業されると市町村の国民健康保険(国保)に変わります。

しかし多くの先生方は市町村から加入するのではなく、医師国民健康保険組合(通称: 医師国保)に加入されます。

なぜ、多くの先生方が医師国保を選ばれるのでしょうか?

【福岡市の国保の場合】
市町村加入の国保は収入によって保険料が決まります。 いわば収入が高い方ほど保険料の負担は大きくなります。

?課税所得が1,000万円の場合 月額保険料74,167円
??年齢 40歳~65歳

【福岡県の医師国保の場合】
医師国保は収入・所得によって保険料は変わりません。 扶養人数によって保険料が変わりますので扶養人数が多いほど保険料の負担は大きくなります。

  • 扶養人数0人の場合 月額保険料27,600円
    年齢 40歳~65歳
  • 扶養人数3人の場合 月額保険料55,500円
    家族 40歳以下 1名9,300円

このようにそれぞれ特徴が違います。

国保の保険料は扶養人数に関係ないものの、所得に影響するため、開業後順調に所得が推移すると負担も増加していきますが、医師国保は扶養人数によって負担増しになるものの、所得に関係なく一定額となります。

こうした特徴から所得の高い開業医の先生方は、医師国保を選ばれるケースが多くなります。 ただし医師国保は医師会の会員であることが前提になります。

では医療法人化すると、どうなるでしょうか?

原則、全国健康保険協会(通称: 協会けんぽ)の加入になります。 しかし「個人事業時代から医師国保に加入していること。」を条件に医師国保を継続することが可能です。

医師国保継続が認められた事業所に従事する従業員についても医師国保への加入が認められます。 大きなメリットとしては、事業主の負担がありません。 協会けんぽの場合には労使折半となり、保険料の半分は法人が負担することになります。

こうした条件を知らず、案内をしなかった税理士が損害賠償請求をされた事例もありますので、開業時から医師国保への加入を検討しておくことが重要です。

それぞれの扶養人数と報酬月額によって変わっていく保険料を比較してみます。

扶養人数と報酬月額によって変わっていく保険料を比較

先生方は一般的に所得が高く、保険料が一定の医師国保にメリットがありますが、スタッフの場合は労使折半のある協会けんぽの方が負担の少ない場合もあります。

医師国保という選択肢があるだけに、開業準備の段階でよく意識することが重要になってきます。 社会保障制度は事業側が負担すべき義務もあり、またご自身が享受する社会保障も変わりますので、理解を深めていくことも大切です。

m3コンシェルジュ 宮地 孝郎

いかがでしたでしょうか?

保険料の負担の違いだけでなく、就業不能になった際の「傷病手当金」の有無の違いもあり、医師国保や協会けんぽの方が、国保に比べ保障内容としては充実しています。

年金については勤務医時代と医療法人化した時は同様の厚生年金加入者となりますが、開業して間もなくは、個人事業であれば厚生年金加入から一度外れます。

今後は、少子高齢化時代に突入し、社会保障制度も変更していくことも予想されますので、制度については注視していきたいものです。


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