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m3コンシェルジュ 光明 孝幸

リスクマネジメント・ラボラトリー

光明 孝幸

医業継承において相続の問題は必ず取り上げられますが、何をどう対策すればよいのかよくわからない点もあるかと思います。 そこで、今回は特に相続評価の高い不動産にフォーカスし「個人所有の病医院の土地、相続税対策」を2回にわたってお届けしたいと思います。

執筆は、400件超の医療機関を支援している医療特化の会計事務所、税理士法人アフェックス医療事業部の内山 稚圭弘税理士にお願いしております。

それでは、どうぞ。

個人所有の病医院の土地、相続税対策 その1
クリニックの相続の基礎知識: 相続対策

個人所有の病医院の土地、相続税対策 その1

クリニックの相続の基礎知識: 相続対策

【光明】
昨年より相続の税制が改正されたと聞いていますが、どのように改正され、どれくらいの税金がかかるのでしょうか?

【内山 税理士】
平成27年より、相続税の最高税率が5%上がり、基礎控除額も4割削減されています。 今年に入り、マスコミでは毎日のように相続税対策が取り上げられています。 改正により「相続税の納税者数が倍に増える」「納税資金の確保のために生命保険の加入件数が急増している」と言った報道がよくされています。 まず、相続税の基礎知識を理解しておくことが必要です。

【基礎控除額の改定】
改正前 5,000万円 + 1,000万円×法定相続人の数
改正後 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数
国税庁ホームページ 相続税の計算より抜粋(平成27年1月1日より改定)
https://www.nta.go.jp/taxanswer
/sozoku/4152.htm


【改正による相続税額の増加】
前提 遺産総額 5億円、相続人 配偶者 子ども2人
改正前 相続税額の総額 1億1,700万円
改正後 相続税額の総額 1億3,110万円
改正による増税額 1,410万円

【光明】
個人が所有する病院の土地の相続税対策はありますか?

【内山 税理士】
個人が所有する病院敷地の土地は、医業を継続していくために不可欠な財産です。 税法も事業が継続できるように、相続税を軽減できる特例を設けています。 税法の規定をしっかり理解する必要があります。

事業用宅地や居住用宅地に対してそのまま相続税を課税すると、相続人は相続税の支払いのために当該宅地を売却しなければならない事態に陥る可能性があります。 そこで、税法では、事業用や居住用に使われていた宅地等(土地や借地権)で一定の建物又は構築物の敷地のように供されており、相続後も事業用や居住用として継続使用している場合には、その宅地等の評価額の一定割合を減額し、事業や居住の継続をしやすくする特例を設けています。

この特例を「小規模宅地等の特例」と言い、この制度を利用すると相続税の負担はかなり低くなります。 その概要は、次のとおりです。

【小規模宅地等の特例の概要】
小規模宅地等の特例の概要
国税庁ホームページ 相続と税金より抜粋
https://www.nta.go.jp/taxanswer
/sozoku/4124.htm


相続財産に対する基礎控除が縮小され、税率もアップするため、小規模宅地等の特例も改正されました。 すなわち、事業用と居住用の特例がそれぞれ別々に適用可能になったため、最大730平米が減額の対象になります。

  1. 特定事業用宅地等の要件
    被相続人が病医院を営んでいた宅地等を、事業を承継した親族が取得し、相続税の申告期限まで引き続きその宅地等を保有し、かつ、その事業を営んでいること
  2. 特定同族会社事業用宅地等の要件
    特定同族医療法人等(被相続人等が出資金等の50%超を有する医療法人等)の事業用宅地等を、その医療法人の役員である親族が申告期限まで引き続き保有し、かつ、医療法人等が事業用として使用していること
  3. 特定居住用宅地等の要件
    被相続人等の居住用に供されていたもので、被相続人の配偶者や被相続人と同居していた親族で、相続開始から相続税の申告期限まで引き続きその家に居住し、かつ、その宅地等を有していること
  4. 貸付事業用宅地等の要件
    被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等を、相続人が申告期限まで引き続き保有し、かつ、貸付事業として継続していること

【光明】
院長夫人が既に亡くなっている場合の留意点はありますか?

【内山 税理士】
事業用と居住用の特例が別々に適用できるようになったので、その特典を極力利用できるような対策を講じることが節税のポイントとなります。 クリニックは副院長の長男が相続するので、特定事業用宅地等の特例が適用できますが、特定居住用宅地等の特例を適用するためには、次のどちらかの要件を満たさなければなりません。

  1. 長男が相続開始時から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地用地等を相続税の申告期限まで有すること
  2. 相続開始前3年以内に、長男が所有する家屋や長男の配偶者が所有する家屋に居住しておらず、その宅地用地を相続税の申告期限まで有すること
生前に、どちらの要件で居住用宅地等の特例を適用するか、決めておくことが必要になります。
m3コンシェルジュ 光明 孝幸

いかがでしたでしょうか?

相続税が改正になり、クリニックの医業継承をする際、相続は切り離せない大きな問題です。

実際に相続が発生してしまうと対策が出来ない場合もあります。

相続が発生する前にドクターの相続・事業承継の経験豊富な税理士法人に相談されてみるのは、いかがでしょうか?

次回は「個人所有の病医院の土地、相続税対策 その2」をお伝えします。

⇒ 税理士法人アフェックス へ相談