皆さま、こんにちは。AGSグループ 株式会社AGSコンサルティング/AGS税理士法人 の山本純平です。 ご承知のとおり、現在、全国におきまして救急医療の確保が大変困難な状況となってきております。平成21年には消防法が一部改正され、都道府県ごとに傷病者の搬送及び受け入れの実施基準の策定が義務付けられました。 平成23年3月より当該基準に基づく救急搬送・受け入れの円滑な実施を推進するため、傷病者を受け入れた二次救急医療機関へ自治体が助成をした際の経費につき、総務省は地方交付税措置を講じることとなります。 しかしながら、多くの病院で当該制度の存在を知らず活用ができていないのが現状です。二次救急医療機関で傷病者の受け入れをされている病院につきましては、ぜひともご活用頂きたい制度であるため、今回は当該制度の内容をご紹介いたします。
■ 救急需要の増大
救急出動件数は、平成15年には483万件、平成20年には512万件であったものが、そこから右肩あがりで増加してきており、平成25年においては600万件弱にまで増加してきています。救急出動件数は10年間で約27%増加する一方、救急隊数は約8%の増加にとどまっています。 さらに、病院収容までの時間についても、平成14年には全国平均28.8分であったものが平成24年には全国平均38.7分と平成14年比9.9分遅延しており、過去最長となりました。また、救急車の現場到着時間においても、平成14年には全国平均6.3分であったものが、平成24年には8.3分となっており、10年間で2.0分延伸しました。 次に、平成24年の救急搬送において医療機関に受け入れの照会を行った回数については、
- 1回: 82.4%
- 2回~3回: 13.8%
- 4回~5回: 2.6%
- 6回~10回: 1.0%
- 11回~: 0.2%
となっています。4回以上照会を行った事案は全国平均で3.8%であり、ワースト1は奈良県の11.2%、ワースト2は埼玉県の10.4%となっています。 また、救急搬送において現場滞在時間については、15分未満:56.6%、15分以上30分未満:38.2%、30分以上45分未満:3.8%、45分以上60分未満:0.9%、60分以上120分未満:0.5%となっています。30分以上現場滞在した事案は全国平均で5.3%であり、ワースト1は埼玉県の16.7%、ワースト2は奈良県の13.6%となっています。
■ 救急搬送1件あたり1万3千円!!
平成23年3月の特別交付税制度の改正により、毎年4月1日~3月31日の期間における救急隊から二次救急医療機関へ搬送された傷病者の受け入れ人数1人あたりにつき、13,000円の助成を受けることが可能となりました。ただし、一医療機関あたり都道府県の上限が1千万円、市町村の上限が2千万円、合計一医療機関あたり毎年3千万円が上限になります。 地方交付税はいままで国公立医療機関にしか措置されておりませんでしたが、当該改正で要件を満たす全ての私的病院にまで措置が拡大されるという大改正が行われました。また、私的病院であっても医療法31条に規定する病院や公益法人等に該当する場合にはさらに大きな助成を受けることが可能です。 当該制度は救急車を受け入れていれば自動的に助成金が出るものではなく、病院の所在する自治体(都道府県及び市町村)から総務省へ申請することが要件になります。しかしながら、全国の自治体担当者が当該制度の存在を知っておらず、全国のほとんどの地域において活用がなされておりません。 もしも現在、二次救急医療機関でありながら、当該制度を活用されていないのであれば、自治体と一度話し合う必要があるかと思われます。 地方財政が厳しい状況でありかつ地域医療の確保が難しい中、国から助成を受けることができる当該制度を活用することは、今後の地域医療を支えるうえで非常に有益な制度であると考えられますので、対象病院様につきましては、早急に制度を理解し、毎年助成を受けられるように自治体と折衝を行うのがよいと思われます。 しかしながら、当該地方交付税制度の一部である特別交付税の制度は、条文解釈が難解で複雑であり自治体との交渉も難航するケースが多いため、自治体との交渉にあたっては、事前に十分な知識が必要不可欠となります。 出典元 「平成25年の救急出動件数等(速報)の公表」 総務省消防庁 http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/ houdou/h26/2603/260328_1houdou/ 02_houdoushiryou.pdf 「平成25年版消防白書」 総務省消防庁 http://www.fdma.go.jp/html/hakusho /h25/h25/pdf/part2_section4.pdf
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