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クリニックの税務

医療法人や開業医(医療機関)の消費税

m3コンシェルジュ 小野 博史

リスクマネジメント・ラボラトリー

小野 博史

こんにちは。m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリー東京支店の小野です。

今回は消費税10%への引き上げ前のおさらいとしまして、医療法人や開業医(医療機関)の消費税について、ご紹介いたします。

執筆は、m3.comに掲載されており、東京(本社)・大阪・名古屋・福岡・シンガポールに拠点があり、開業・経営などクリニックの顧問を多く持つ AGSグループ 株式会社AGSコンサルティング/AGS税理士法人南税理士にお願いしました。

それでは、どうぞ。

皆さま、こんにちは。AGSグループ 株式会社AGSコンサルティング/AGS税理士法人 税理士の南高志です。今回は税理士の視点で、医療法人・開業医(医療機関)の消費税について、ご紹介いたします。

 

■ 消費税について

(1) 消費税とは

消費税は、消費一般に広く公平に課税する間接税です。国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸し付け、及び役務の提供が課税の対象とされ、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。

ただし、社会政策上の配慮などから、医療機関が行う一定のサービスについては、非課税取引とされています。

 

(2) 消費税の負担者

消費税は、事業者に負担を求めるものではありません。消費税は事業者が販売する商品やサービス価格に含まれており、最終的に商品を消費し又はサービスの提供を受ける消費者が負担することとなります。

 

(3) 税率

消費税の税率は、8%(消費税6.3%・地方消費税1.7%)の単一税率です。 なお、平成29年4月1日より『酒類や外食を除く食品全般』及び『新聞』を除き、消費税の税率10%(消費税7.8%・地方消費税2.2%)に改正され、8%と10%の複数税率となる予定です。

■ 納税義務者

(1) 納税義務

医療機関は事業者であるため、原則として消費税の納税義務を負います。 ただし、事業者の納税事務の負担等を軽減するために、その課税期間*1 の基準期間*2 における課税売上高*3 が1,000万円以下の事業者は、その課税期間における課税資産の譲渡等について、納税義務が免除されることとなります(この事業者を「免税事業者」といいます)。

なお、医療機関の課税売上高には健康保険法、国民健康保険法などによる医療にかかる売上高(非課税売上高)は含まれません。

また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間*4 の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、当課税期間から消費税の課税事業者となります。

特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。ただし医療法人などの法人で、出資金の額が1,000万円以上の法人は開業当初から課税事業者とされます。

 

(2) 申告及び納付

消費税の納税義務者は、主に製造、卸、小売り、サービス(医業を含む)などの事業者となります。納税義務者は、納税地の所轄税務署長に対して、課税期間の末日の翌日から2ヶ月以内(個人事業者の場合は翌年の3月31日まで)に消費税及び地方消費税の確定申告書を提出し、消費税額と地方消費税額を併せて納付します。(納付期限 = 申告期限となります。)

 

(3) 用語の説明

  1. *1 課税期間とは、納付すべき消費税額の計算の基礎となる期間。 原則として、個人事業者は暦年、法人は事業年度をいいます。
  2. *2 基準期間とは、原則として、個人事業者についてはその年の前々年、法人についてはその事業年度の前々事業年度をいいます。
  3. *3 課税売上高とは、消費税が課税される取引の売上金額と輸出取引等の免税売上高の合計額をいいます。
  4. *4 特定期間とは、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後の6ヶ月の期間をいいます。

■ 消費税の計算の仕組み

(1) 納付税額(原則的な方法)

納付税額は下記の算式により計算します。
課税売上にかかる消費税 - 課税仕入れにかかる消費税(

)課税売上に対応する課税仕入れにかかる消費税のみが控除の対象となります。 そのため、非課税売上の比率が高い医療機関は課税売上割合が低く、課税売上にかかる消費税から差し引ける金額が少なくなります。

 

(2) 課税取引と非課税取引

公益性の高い医療サービスは、消費税になじまない取引の一つとして非課税として扱われています。非課税とされる売上高については、課税売上高から除くこととされていますが、全ての医療サービスが非課税取引ではないため、医療機関の収入及び支出について正しい区分を行うことが消費税の計算では重要となります。

● 課税取引(非課税取引に該当しないもの)
  • インプラント、健康診断、予防接種 他
  • 医療機器等の資産の売却収入
  • 売店での物品販売
● 非課税取引(消費税法6条)
  • 健康保険法、国民健康保険法などによる医療
  • 労災保険、自賠責保険の対象となる医療 など
    (ただし、美容整形や差額ベッドの料金及び市販されている医薬品を購入した場合は非課税取引に当たりません。)

 

(3) 納税事務の負担軽減措置

事業者の納税事務の負担等を軽減するために、原則的な方法のほか次の措置が設けられています。

1. 免税制度 ・・・・・ 基準期間の売上高が1,000万円以下の事業者は、免税事業者となり消費税を納める必要はありません。

2. 簡易課税制度 ・・・・・ 基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、課税売上高から納付する消費税額を計算する簡易課税制度が選択できます。なお簡易課税制度とは、課税売上高にみなし仕入れ率を乗じて納付する消費税額を計算する制度です。

【みなし仕入れ率】
  • 病院の売店での物品販売 ・・・・ 80%(第2種)
  • 医療機器等の売却 ・・・・ 60%(第4種)
  • 自費診療報酬等 ・・・ ・50%(第5種)

■ まとめ

消費税は事業者に負担を求めるものではなく、最終的な消費者が負担する制度です。しかし、医療機関が医薬品や設備等を仕入れる際には消費税を支払いますが、自費診療を除く医療サービスは非課税であるため仕入れ税額控除ができず、医療機関が支払う消費税は、医療機関の負担となります。

また、医療機関は、非課税売上の比率が高い業種であるため、『免税制度』や『簡易課税制度』の有利選択の検討のほかに、『課税売上割合に準ずる割合』を承認申請する方法も考えられます。

消費税の10%への引き上げが決定したため、いまいちど税制改正による影響を検討しておく必要があると考えられます。

今回は、医療法人・開業医(医療機関)の消費税について、取り上げさせていただきました。私ども AGSグループ 株式会社AGSコンサルティング/AGS税理士法人では、開業前の事業計画の策定や実行支援のお手伝いをさせていただいております。お気軽にご相談ください。

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