開業セミナー 「本当に開業して大丈夫?
~開業判断のモノサシを知る~」
開業の現実(リアル)
コロナで何が変わったのか? |
■ パンデミックから学べた損益分岐点
【米田】
損益分岐点について教えて下さい。
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【河村 税理士】
クリニック経営において、医業収益と経費がゼロになる部分を言います。 医業収益が損益分岐点を上回れば利益となり、下回ると損失(赤字)となるわけです。 |
【米田】
開業を志している先生からすると、赤字という言葉はとても不安です。
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【河村 税理士】
そうですね。 科目によって収益構造が違いますし、立ち上がりのスピードも違う。 開業スタイルや必要な医療器械によっては、借り入れの額も変わります。 ましてやコロナ禍になってからは、常識が通用しなくなった感は否めません。 |
【米田】
新型コロナウイルスでの受診控えに、介護保険サービスの自己負担増や、令和4年10月からは後期高齢者の窓口負担増が予定され、益々受診控えが進むのではないでしょうか。 高齢者を対象に診療をする先生にとってはかなりの痛手だと思うのですが、いかがでしょうか?
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【河村 税理士】
「受診控え」、という点は後期高齢者の患者負担割合の増加による影響(2020/10/28日本医師会)、コロナ禍による長引く受診控え(2022/3/27日本経済新聞)などを見ても今後益々難しい問題になると思われます。
後期高齢者の患者負担割合のあり方について2020年10月28日日本医師会定例会見
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20201028_2.pdf
コロナ下、認知症治療22%減 健康寿命縮む恐れ 2022年3月27日付日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59440240X20C22A3MM8000/ |
【米田】
医師にとっては、人口減少問題と医師過剰問題も気がかりです。
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【河村 税理士】
そうですね。 ただ、医療がなくなるわけでなく、厚生労働省は地域包括ケアを推進し、かかりつけ医の存在をアピールしています。 コロナワクチン接種で身近な言葉になった「かかりつけ医」が今後のキーワードだと私は感じていますし、多くの国民も同様に感じているのではないでしょうか。
すなわち、予測不可能な不安やいろいろな問題がある中で、これからの新規開業は損益分岐点を1日でも早く利益へと導くことが必要だと思います。 それを実現するには、ローコスト開業が今後重要になってくると感じています。 |
【米田】
ローコスト開業について、具体的に教えて下さい。
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【河村 税理士】
人口動態上の自然減はやむを得ないものの、不動産バブルによるタワーマンションラッシュで都心部への人口流入が加速しています。 いままでオフィス街であった街に若いファミリー層が増えたため、小児科や耳鼻科、高所得者をターゲットとした皮膚科、形成、歯科が盛況しています。
いままでの都心型クリニックのスタイルは、仕事の合間や就業時間後をターゲットとしていました。 しかし、現在はリモートワークが進んだ結果、慢性疾患等の内科系は自宅近所のクリニックを受診するようになり、郊外のクリニックが盛り上がりを見せ、安定しているように感じます。
このような時代の変化と波に対応できるよう、開業したらどのような診療方針で、どのような治療の提供したいのかしっかりと考え、最新の診療圏調査を基に慎重に考えることです。 立地も大事ですが、家賃は毎月かかるコストであり、本当にそこでなければならないのか等、どこにお金をかけるべきか、慎重に見極めるのが重要です。
戸建ての場合は、土地は賃貸や定期借地にする。 土地オーナーと交渉次第では上物を含め賃貸も可能な場合もあります。 医療モールの場合は可能な限り値引きを行う。 また、モールのメリットが有効活用可能か確認する。
例えば、他のクリニックにレントゲンがあれば購入せず、診々連携で患者を紹介すれば他クリニックとの相乗効果も期待できます。 しかもレントゲンの購入費用がなくなり、連携加算がもらえる等のメリットも生まれます。
診療圏調査では平均年齢や社会保険と国民健康保険比率がわかるので、今後起こりうる受診控えなどの予測も忘れないことです。 お金をかければ患者が来る。 そのような時代は終わったと私は思っています。 |