こんにちは。 税理士法人エイアール税理士事務所の原 知子です。 いざ開業すると、経営者として一番頭を悩ませるのはスタッフの採用など人事労務のことです。 開業するまでは勤務医であった先生方の多くは人事労務問題に面と向かって対峙された経験をお持ちではありません。 このため、スタッフへの対応にも不慣れな点が多く見受けられます。 今回はスタッフ採用、スタッフ教育、スタッフとのコミュニケーションでの失敗事例とその対策をお伝えいたします。
■ 失敗事例1 スタッフ採用編
スタッフを新たに募集したところ、未経験者(34歳 女性)の応募があり面接をした。 「通信講座で医療事務を勉強してきた」「パソコンも得意です」「前職(飲食業)で学んだ接遇を生かしたい」「私の笑顔で患者さんの心を癒してあげたい」「一度、注意されたことは二度と間違えないようメモをとり復習をする習慣があります」など、前向きかつ意欲的な発言が好印象で採用して仕事をしてもらったところ、 「レセコンへの患者さんの氏名入力も時間がかかる」「患者さんの対応も無愛想で笑顔がまったくない」「同じミスを繰り返す」など面接での発言とは正反対で他のスタッフを困らせたあげく、「こんな体力のいる仕事をやることを面接の時には聞いていません」と逆ギレして最後は無断欠勤となり、辞めてしまった。
< 対 策 >
面接で受け応えに問題がなく発言が前向きで意欲的な人は未経験者でも好印象を与え採用するケースも多くありますが、注意したい点は未経験者経験者を問わず自院でやって欲しい仕事の具体的なイメージを面接時にすり合わせをすることです。 多くの未経験者の方は、クリニックの仕事は清潔で体力のいらない事務仕事というイメージを持っていて、実際にやって欲しい業務とはかなりギャップがあるケースが多い。 実際の事例ですが、受付スタッフは受付事務業務だけでなく診療助手やリハビリ助手も兼務でおこなっているクリニックの院長が次のような質問をしました。 「うちのクリニックの受付事務スタッフは受付事務の仕事だけでなくリハビリ助手もシフト制でやっていただいています。 リハビリ助手の仕事はリハビリ機器の操作や取り付け、時には患者さんを支えるなど体力のいる場面もたくさんありますが体力に自信はありますか?」 と、質問すると 「じつは私は握力が弱く患者さんを支えるような仕事はできません」というような回答があり採用を見極める具体的な回答を引き出しています。 自院でやっている具体的な業務やたいへんなことを伝えて、それでもこの仕事をやりたいのか(できるのか)を確認していくことをお勧めしています。 面接で見極めることが難しい人材の場合は「体験入職(時給を払って仕事をしてもらう)」ということで1日~3日ほど実際の仕事を見てもらい、実際にやってもらってお互いが判断するというクリニックもあります。 また、採用後も職場に合うか合わないかお互いが見極める機会(例えば面談)を作っておくことも大切です。
■ 失敗事例2 スタッフ教育編
これまで受付事務スタッフの新人教育を現場に任せて院長は放置していた。 入職後2年経過している受付事務Aさんについて患者さんから「あのAさんは診察の順番を間違えるし保険証の返却を忘れたことがこれまで3回ぐらいあった。 間違いだけなら良いが、なによりも間違えているのに言い訳をして謝らない。 ちゃんと教育して欲しい。」と院長に直接クレームを伝えてきた。 院長から見てもこのAさんの業務レベルは低いので教育を直々にしたが、厳しい口調で指導すると泣き出す。 また、周りのスタッフが注意指導しても同じミスを繰り返してしまう。 最後はこの仕事は自分に向いていないということで退職をした。
< 対 策 >
2年間、放置された後に熱心な教育指導を受けたAさんは「先生や先輩方からいろいろ言われることが多すぎて頭がパンクしそうです。 指導を受けた内容は頭に残らないけど嫌な気持ちだけは心に残る!」という言葉を残して退職されました。 私はこの経験から入職後の教育を現場任せで放置しないことを肝に銘じて現場のコンサルティングにあたっています。 「鉄は熱いうちに打て!」という言葉がありますが、最初が肝心です。 入職直後から院長をはじめ周りのスタッフが真摯に新人スタッフと向き合い応援していく環境を整えていくことがポイントです。 新人教育に熱心なクリニックの院長は「新人のうちに教え叱り承認を繰り返すことこそが新人スタッフに成功体験を積み重ねさせることができ、仕事のおもしろさを発見し、気づきの力を養うことができるのです」と語っています。 心の底から「本当にやりたいことだ!」と発見するためには小さな成功体験を積み重ねることが必要です。 私たちはこの小さな成功体験を、小さなガッツポーズのできる体験を増やそうと伝えています。 ぜひ、小さなガッツポーズのできる職場を作っていただきたいと思います。
■ 失敗事例3 スタッフ間、部門間のコミュニケーション編
スタッフ間のコミュニケーション、特に部門間のコミュニケーションが悪いのでレクリエーション委員会を立ち上げ、バーベキュー、飲み会、テニス大会など企画しているが、看護スタッフと受付スタッフがよく揉めている。 理学療法士などリハビリスタッフと受付リハビリ助手スタッフとが対立しているなど、スタッフ間のコミュニケーションに一向に改善が見られない。
< 対 策 >
スタッフ間のコミュニケーションについて改善させるのはクリニックのトップである院長がスタッフといかに向き合うかがポイントとなります。 スタッフ一人一人に対し向き合うか。 中心となっているスタッフと向き合うか。 クリニックの規模によって違うところもありますがクリニックの実状に合ったやり方で実践して欲しいと思います。 スタッフ間のコミュニケーションを改善するために部門長や中心となっているスタッフに対し個人面談を実践しているK院長がいます。 K院長の個人面談の内容は(1)承認(何を言っても受け入れる) (2)傾聴する(話を最後までじっくり聴く) (3)フィードバックする(次の行動へつなげる) 特にフィードバックに重点を置いて個人面談をやり続けています。 フィードバックの目的は弱点を強調するのではなくスタッフの強みと改善点を洗い出しさらに向上するためにおこないます。 次の3つの事項をフィードバックしていただくと効果的です。
- Keep to do 効果あるものを実践し続けること。
- Start doing さらに良くするために新たに取り入れること。
- Stop to do 避けるべきこと。
K院長はスタッフの目に映る自分が変わることでスタッフが必ず変わると信じて実践しています。 上述した個別面談を2年間続けた結果、個々のスタッフが変わりスタッフ間のコミュニケーションも良くなっているという手ごたえを感じているようです。
|