■ ソレダメ失敗事例 Aドクターの場合
勤務医のAドクターは、「これだけ忙しいのに手取りがこの程度なら、開業をした方がいいのでは?」と常々疑問に思っていました。 Aドクターは、「外来でも相当な数の患者さんを診ているし、当直もしている。 オペ数もそれなりにこなしてきた。 同じ時間だけ開業して働くなら、もっと余裕で年収は増えるはず。 そこそこ駅に近い物件さえ見つかったら、退職して独立しよう。」と考えていました。 そんなある日、ある医薬品関係の開業支援チームから、医療モール物件の紹介がありました。 都心の駅から徒歩5分圏内というオススメ物件ということもあって、即決して、まずは契約をしました。 そして、開業・・・。 開業して半年した現在、Aドクターの悩みは、患者さんが想像していた以上に来ないということ。 そして、オープン当初のスタッフがなぜか辞めてしまったことでした。 財務的には借入の元本返済開始までまだ時間があるので、預金残高はなんとか保っているところです。 ただ、コンサルタントの話だと、外来患者数の伸び率が現在のまま続いてしまうと、おそらく借入の元本返済が始まる半年後には、口座残高が底をつき、親からさらに借入をするか、銀行からフリーローンで高めの金利による追加融資等を受けなければならないことが十分想定されるとのことでした。 Aドクターは、「こんなにいい物件なのに、どうして患者が来ないのか。 スタッフが定着しないのか。 利益がでないのか。」と不思議でたまりません。
■ 成功事例 Bドクターの場合
勤務医のBドクターは、「このまま勤務医でいるより、もっと患者さんに近い存在のかかりつけ医として、地域医療への貢献を果たしていきたい。 患者さん一人一人に向き合って、自分の考える医療を提供していきたい。」と常々考えていました。 というのも、勤務医でいると、病院の方針と自分の方針が合わないこともしばしばあり、臨床以外の色々なことに煩わされていたからです。 そこで、「自分のこの思いを果たすことができる物件を見つけて、開業しよう。」と考え始めました。 そんなある日、開業業者から物件の紹介を受け、このことをきっかけに開業についてどんどん現実味が増していくようになりました。 Bドクターは、「たくさんの情報に振り回されないように、自分がなぜ開業しようと思ったのか?」をノートに記すことにしました。 そして、開業・・・。 このノートには、「自分がどんな医療を実現したいのか」といった初心を書き留めただけでなく、開業したときに掲げたい診療理念や、自分の強み(コアコンピタンス)、コンセプトなども具体的に挙げていきました。 開業に際しては、この思いに共感してくれるスタッフも見つかりました。 コンサルタントからは、開業後最低1年は辛抱と話がありましたが、半年した現在、すでに外来は患者さんでいっぱいとなりました。
■ なぜでしょうか?
「開業を考えたら、診療理念と開業目的」を。 Aドクターのソレダメポイントは、診療理念や開業目的などが、自分でもはっきりとわからないまま開業してしまったことにあるかと思います。 何より成功の秘訣は、診療理念を掲げることにあります。 診療理念があれば、ぶれない経営を患者さんに対してだけでなく、スタッフにも示すことができ、自らも原点に立ち返ることができます。 開業しようと考える第一歩は、目的を明確にし、そして、何をしたいのか具体化することです。 どんな視点からでもかまいませんので、リストアップしていきましょう。 そして、開業するということは、ドクターという立場だけではなく、何より、経営者になること、管理者(スタッフのマネージャー)になることです。 自院のスタッフとベクトルを合わせるためにも、もっとも基幹となるものが診療理念です。 「開業を考えたら、まず、診療理念と開業目的」と意識しましょう。
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