m3QOL君m3.com QOL君 メルマガ

クリニック

診療圏を数値で読み解く

m3コンシェルジュ 森島 祥哉

リスクマネジメント・ラボラトリー

森島 祥哉

みなさん、こんにちは。 m3コンシェルジュ、リスクマネジメント・ラボラトリー大阪支店の森島です。

さて、新規開業をするためには、先ずご自身の開業に適した物件を見つけないことには始まりません。 ただし、そのような物件にめぐり合ったとしても、ご自身の診療に適しているかどうかの判断基準がしっかりしていないと選びようがありませんよね。

そこで、物件を見つける際の判断基準の一つとして『診療圏』を数値で読み解いてみたいと思います。

1. 都市部診療圏は半径500m~1km、郊外型診療圏は3km

個人診療所のマーケティングを考える場合、診療圏の『距離設定』は重要なテーマといえます。

外来患者さんがどのエリアから来院されるのか、そのエリア内でどの程度のシェアを目指すべきか、競合となる医療機関はどこか、専門医療機関の連携先はどこにすべきかなど、これらはいずれも、診療圏を設定することによって、はじめて具体的にイメージできるようになります。

では、診療圏は具体的にどれくらいの広さを見込めばよいのでしょうか。 診療所と病院では若干異なりますが、基本的に外来診療圏を考える場合は、都市部で半径500m~1km、郊外で半径3kmを目安としています。

この距離をどのように導き出したのか、【図1】をご覧ください。 これは、支援してきた診療所における、外来患者さんの自宅からの距離別分布です。 患者さんの7~8割が住んでいるエリアは、都市部ではだいたい半径500m~1km、郊外では半径3km前後だということがお分かりいただけると思います。

当然、同じ都市部でも、オフィス街ではより狭い範囲になり、郊外でも人口密度が低ければ、より広い範囲になります。 また、医療機関の特徴によっても異なり、不妊治療や児童精神科、特殊な治療を行う医療機関では、全国から患者さんが来院されることもあります。

2. 診療圏を移動時間で考える

この500m、3kmという距離を、移動時間という観点から考察してみます。

一般的に患者さんが移動する手段は、徒歩、自転車、自動車のいずれかです。 そして、患者さんが体調の悪いときに移動できる時間は、おそらく5分以内が理想、10分なら何とか、といったところではないかと思います。

不動産でよく使われる「駅から徒歩〇分」とは、1分間に80mとされていますが、これは通勤時間帯における早歩きの歩行スピードです。 体調の悪い患者さんの場合、徒歩で時速4km(分速67m)、自転車で時速12km(分速200m)、自動車で時速40km(分速666m)とした場合、理想の5分または限界の10分で移動できる距離はそれぞれ、徒歩で333m・666m、自転車で1km・2km、自動車で3.3km・6.6kmとなります。

つまり、都市部の500m診療圏は徒歩で7.5分・自転車で2.5分の距離、郊外の3km診療圏は自転車で15分・自動車で5分以内の距離となります。 (【図2】診療圏と移動手段・移動時間の関係)

【図2】診療圏と移動手段・移動時間の関係

3. 診療圏に基づくマーケティング戦略

診療圏の概念は、さまざまなマーケティング戦略を考えるためのヒントを提供してくれます。

たとえば、診療圏内に住所地がある人の数を住民基本台帳で推定し、そのうちの何人が自院の患者さんになっているかという『シェア』の概念です。 また、競合としてどこの医療機関を意識すべきかということも明確になります。

さらに、看板や求人広告、チラシの配布といった広告宣伝の『エリア』もある程度決めることができるため、効果的・効率的なマーケティング施策を打つのに役立ちます。

通常、医療機関の診療圏は、実際の患者さんの来院データをレセコンから地図にプロットすることですぐにわかります。 しかし、まだデータのない新規開業の場合は、物件を選ぶ際の診療圏の設定基準として、ここに挙げた2つの数値、『500m』、『3km』でお考えいただくと良いと思います。

m3コンシェルジュ 森島 祥哉

いかがでしたでしょうか?

先生方のゴールは、開業後の順調な医院経営になるかと思いますが、その前にある開業までにもすべきことは山のようにありますね。

一つ一つ決断するのは先生方ご自身ですが、それを先生方ご自身で正確に判断するための物差しを、中立な立場かつ必要なタイミングでアドバイスしてくれる専門家選びも重要事項といえるのではないでしょうか。

リスクマネジメント・ラボラトリーでは今回の開業塾のメイン講師である河村会計事務所の他、各種医院経営のスペシャリストとの連携を密にして、クリニック経営を積極的にサポートしています。

更に、先生方の医業経営をバックアップされている『奥様』を対象とした、『奥様医業開業塾』、『奥様医業経営塾』なども、各地で開催しております。

⇒ 河村会計事務所へのご相談はこちら