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クリニック開業

訪問診療専門クリニック

m3コンシェルジュ 米田 弘司

リスクマネジメント・ラボラトリー

米田 弘司

皆さま、こんにちは。m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリー大阪支店の米田です。

さて、新規開業にはいろいろな方法とスタイルがあります。お勤めの病院から程近い場所であるとか、診療圏調査の数字が思わしくなく、数々の要因や原因にて、落下傘開業をされる先生も多くいらっしゃると思います。

しかし、開業後の安定経営には「診療所に来院いただける患者が多くいる。」ことが最重要となり、経営は立地に左右されるとの考えも否めません。開業費用・建築費用・医療機器や当面の経営運転資金、戸建てやテナントなど、診療科目にもよりますが、数千万~数億円の借入資金に対し、返済期限も待ったなしです。不安を取り除くための早期安定経営はどの先生も願っています。

このような多額の資金が必要な開業に、医療機器もいらず、初期投資がわずかで済む、新たな開業方法が可能になるのはご存知でしょうか。今回は、開業スタイルの新しい方法として注目されている『訪問診療専門クリニック』について、解禁と背景をお伝えします。

■ 訪問診療専門クリニックの解禁と背景

1. 訪問診療専門診療所の解禁

地域包括ケアシステムの構築を目指す厚生労働省は、在宅への訪問を専門として外来患者を受け入れる設備を十分に持たないクリニックを、来年4月から新たに認める方向で検討を進めていると、2015年7月10日 塩崎厚生労働大臣が閣議の後に行った記者会見でその意向を表明し、「年末に向けて中身を詰めていく。」と語りました。

在宅診療を行える診療所

その中で、厚生労働省は訪問専門クリニックを開く場合に、いくつかの条件を付ける方向も示唆しました。
  • 施設ごとに担当地域を決め、住民から依頼があれば訪問することを義務付ける
  • 重症の患者を避けて軽症の患者だけ選んで診察するようなことがないように求める

この他に、診療所の看板もなく、医療機器もないため診察の義務はないものの、健康保険法上は患者が好きな医療施設を受診できると定めました。

訪問診療専門クリニックを訪れた患者も必ず診察するように促すとともに、診察の日程などを相談できるよう、診療所に事務員を置くことを求める方針を打ち出しています。

今後は、診療報酬を議論する中医協(中央社会保険医療協議会)にて、さらなる詳細をつめていき、2015年12月末までには最終案の決定を目指しています。

2. 訪問診療専門診療所解禁の背景

内閣官房が6月にまとめた推計によると、このまま改革をしないで放置すれば「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には約17万床が不足すると予測しています。

症状が安定した患者は病院ではなく自宅や介護施設で治療を受けやすくし、入院した患者が自宅での訪問診療に移ることで、訪問診療にかかる自己負担と保険給付を合わせた医療費の総額は1人あたり月に約32万円に対し、慢性期患者の入院(約53万円)より4割安く済むと、政府は試算しています。(平成27年7月10日掲載日本経済新聞から引用)

そのため、訪問診療専門クリニックの拡充は、診療報酬の抑制にも繋がると考えられ、大いに期待されています。

3. 都市部以外では

都市部の開業でも将来は在宅ニーズの高まりの波を迎え、いつでも在宅診療可能な状態へシフトできる、診療体制が不可欠と考えられます。 都市部以外では、現在も若年層の人口が少ないため、診療所へ受診する患者の数も限られていると考えられます。

よって、開業の魅力は薄れてしまうのですが、もし広範囲のエリアで車移動主体の訪問診療が可能であれば、可能性のある開業スタイルとも考えられます。

しかし、現段階では法的整備など不明な部分も多く、今後の診療報酬改定の内容や健康保険法の見直しにより、「訪問診療専門クリニック」が魅力ある開業スタイルであるかどうか、見守る必要はあると思います。

とは言うものの、今後の開業スタイルに1アイテムが増えたのは間違いなく、少しでも可能性をお考えの先生がいらっしゃいましたら、開業地域選定の他に、訪問調剤の確保はもちろん、訪問看護ステーションや地域のケアマネジャーとの連携強化を含めた開業前活動を忘れずにおこなっていただければと思います。

m3コンシェルジュ 米田 弘司

いかがでしたでしょうか?

訪問診療専門診療所は、理想の開業スタイルではないかも知れません。しかし、開業は成功しないとなりません。

中立な立場にて、かつ必要なタイミングでアドバイスできる専門家選びも重要事項といえるのではないでしょうか。

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