■ 「受取る順番」と「受取る年」をいつにするかで退職所得控除の額が変わる
40歳から現在のお勤め先に所属され、同時に確定拠出年金に加入された方が65歳で退職されるケースを考えてみます。 65歳の時点では勤続年数は25年となり退職所得控除は1,150万円となります。 800万円 + 70万円×(25年 - 20年)= 1,150万円 65歳時点で退職と同時に確定拠出年金の一時金を受取る場合、お勤め先からの退職金と確定拠出年金の受取り額を合算した金額から、退職所得控除額1,150万円を引いた金額を2で割った金額が退職所得となります。 それでは、60歳の時点で確定拠出年金を先に解約した場合はどうでしょうか? この場合、60歳時点で確定拠出年金の一時金に対して800万円(20年×40万円)の退職所得控除が使えるうえ、65歳時に受取る退職金にも1,150万円の退職所得控除が使えるため、先ほどのケースよりも税制上有利に退職金を受取ることができます。 ここでのポイントは、受取る年を5年以上空けて、受取るタイミングをずらしているところにあります。 お勤め先から退職金を受取った場合、過去4年以内に別の退職手当の支給を受けているケースでは重複している期間に応じて2回目に退職金を受取る際に、退職所得控除を減らして計算する必要があります。 しかし、4年より多く期間を空けている場合には、2回目の退職金についても1回目と同様に勤続年数に応じた退職所得控除が認められています。 ここで注意しなければならないのは、この受取る順番を逆にして65歳で退職した後、70歳になってから確定拠出年金の一時金を受取った場合、このようなメリットは使えないということです。 確定拠出年金の場合は、過去14年以内に別の退職所得があった場合、退職所得控除の計算に含めるため、65歳時点で退職金を受取った際に使った退職所得控除の金額は除かれてしまうのです。 つまり、65歳時点での退職金の額が1,150万円よりも多く、退職所得控除を全て使っている場合には70歳で受取る確定拠出年金の一時金には退職所得控除は使えず税金が計算されることになるのです。 税効果のみを考える場合には、確定拠出年金の老齢給付金を一時金で受取り、4年より多く期間を空けてお勤め先から退職金を受取るケースが最も有利となります。 しかし確定拠出年金は一時金ではなく年金で受取ることも可能ですし、確定拠出年金の拠出金を運用商品にしている場合には、そもそもの金額が株価や為替等によって変動してしまうことにも注意が必要です。 ※ 実際の受取時の課税関係については税務署や税理士の方にご相談のうえ、慎重にご判断いただくようお願いいたします。 現行の税制に基づいた内容となっておりますが、今後税制が変更になる場合もございますのでご注意ください。
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