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m3コンシェルジュ 高橋 和宏

リスクマネジメント・ラボラトリー

高橋 和宏

大相続時代になり、相続を考える際には「争族」ではなく「円滑な相続」になるように準備しておくこと、あるいは相続税をしっかり準備できるよう十分に考えられる方が多くなってきました。

こういった相続の全体像を考えることは非常に重要ですが、相続財産個別の問題も掘り下げておくと、より万全ではないかと思います。

今回は、有価証券の相続の際のポイントと注意点をお伝えします。

自分の身を守る投資 第15回
有価証券の相続

自分の身を守る投資 第15回

有価証券の相続

■ 相続の際の手続き

もし相続が発生した場合、その手続きは有価証券を預けている証券会社に相続が発生した旨を伝えるところから始まります。

相続発生の連絡
 ↓
被相続人の口座の凍結
 ↓
書類手続き
(各社所定の相続手続き書類、死亡証明書、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、相続人が複数いる場合は遺産分割協議書など)
 ↓
相続手続き完了

一般的には上記の流れで手続きを行っていくこととなります。

ポイントとしては
  • 有価証券を預けている証券会社全てにそれぞれ手続きが必要になる
  • それにともなって、それぞれに書類を用意しなければならない
  • 証券会社によっては相続人の口座を新しく作る必要がある
  • 相続人が複数いる場合、1つの書類に相続人それぞれが記入する必要がある(遠隔地にお住まいの場合には、より大変です)
などがあげられます。

金融機関における相続は1つでも提出書類に不足がある場合や、1箇所でも記入に誤りがある場合には正式な手続きとして認めてもらえません。

ただでさえ心身ともに負担のかかる相続の際に、金融機関相手に手間や時間をかけているのは非常に大変です。

そのため有価証券の相続のポイントとして、有価証券を保有している方がお元気でいらっしゃる間に、使っている証券会社をまとめていくことをお勧めします。

株式であればどこの証券会社でも移管は可能ですし、他に投資信託や債券をお持ちであった場合でも他の証券会社に移管できるケースもあります。 また、金融機関での手続きは本人が行うことが大原則ですので、本人がお元気なうちに手続きを行う必要があります。 保有している有価証券を金融機関ごとにリストアップして、できる限り少数の金融機関にまとめておくと良いと思います。

なお、金融機関が破綻した際、銀行預金が1,000万円までしか補償されないのに対して、証券会社に預けている資産は投資家自身の資産として管理されているため、1つの証券会社に預けている有価証券の評価額が1,000万円を超える金額になっても問題ありません。

■ 相続後、困ることとは

煩雑な手続きを終えて、無事に相続が終わったとしても実は意外に困ることが出てきます。

それは、「株や投資信託を相続してもどうして良いか分からない」と言う問題です。

相続人がこれまでに投資の経験がある場合にはその限りではないかも知れませんが、全く投資の経験がない方が相続をした場合に困惑してしまうケースが非常に多いです。

「正しい活用方法」と言うのは存在しませんが、もし有価証券を相続した場合には以下のように考えられてみてはいかがでしょうか。

  1. 配当や株主優待が受け取れる株はそのまま保有する
  2. 親族の関連企業など、応援する企業の株はそのまま保有する
  3. 上記以外特別な思い入れがない場合は見直しを検討してみる

相続した株には手をつけたくないが、定期的に配当や株主優待としてもらえるものは使うことに抵抗がなく、嬉しいものです。 また投資家の中にはお子様やお孫様がお勤めの企業を応援する意味で株を保有されている方も多くいらっしゃいます。 そういった企業の株はそのまま保有していても良いと思います。 

もしそれ以外の企業の株や、知らない国へ投資している投資信託、債券などがある場合にはより良い投資ができないか見直しを検討してみるのも良いと思います。 ただしこの際には資産運用についてしっかりと知識を持ち、自身が納得できる見直し先が見つかるまでは実際に売買はしない方が良いでしょう。

時間があるにも関わらず、あせって行動しなければならない理由は全くないので、分からないことはやらずにじっくり知識をつけながら実行に移せば良いのです。

■ あるご婦人のお話

ご主人様が他界され、約10銘柄、評価額にして500万円ほどの株式を相続された奥様がいらっしゃいました。 奥様に投資経験はなく、受け取った株はご主人様が投資目的で購入されたものでしたが、損失が出て売るに売れなかった状態だったそうです。 名前も知らない企業の株だったため奥様も大変困っていました。

相続した当初は、とりあえず何も分からないのでそのまま保有すると言うことでした。 多くの方は同じようにされるのではないでしょうか。

しばらくした後、久しぶりに連絡を取る機会がありお話を伺ってみると、意外な答えが返ってきました。

年に1回20~30万円分を売却し、お嬢様との旅行資金として使っていると言うのです。

特に売却時の株価は気にせずに、使う時期に売ってしまうそうです。 どのようなきっかけで奥様が株を売却して旅行に行ってみようと言うお考えになったのかは分かりませんが、相続した株の活用としてはシンプルで非常に素敵なものだと思います。

亡くなられたご主人様も大切な奥様とお嬢様が一緒に旅行をされているのを見てきっと喜んでいるのではないかと思います。

m3コンシェルジュ 高橋 和宏

いかがでしたでしょうか?

有価証券は常に価格が変動しているため、「もっと良い値段で売れるのではないか」、「今売ってしまって後悔はないか」などといろいろ考えてしまい、手放す際には非常に勇気がいるものです。

機会があればご家族の中で保有している有価証券の情報を共有し、将来どのように活用していくのかを相談しておくと良いかも知れません。


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