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全3回シリーズ 「院長先生の相続・事業承継」
第1回目 「最近の税制改正の動向」
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リスクマネジメント・ラボラトリー
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皆さま、こんにちは。 m3コンシェルジュ、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーの佐々と申します。 今回より3回シリーズで「院長先生の相続・事業承継」をお届けします。 執筆は、東海3県を中心に500件超の医療機関を支援している医療特化の会計事務所、税理士法人ブレインパートナーの上條税理士にお願いしております。 第1回目は「最近の税制改正の動向」についてです。 それでは、どうぞ。
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税理士法人ブレインパートナー、税理士の上條と申します。 今般、「院長先生の相続・事業承継・M&A」を上梓させていただきました。 本書は院長先生やそのご家族の現実的な悩みについて様々な事例をもとに会話形式を取り入れました。 その中から「最近の税制改正の動向」をまとめました。
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■ ドクターは税務署にねらわれている?
- 院長
「やあ、久しぶりだね。 買い物の帰りかい?」
- 友人
「ちょっと本屋で相続税関連の本を買ってきたんだよ。」
- 院長
「そうなんだ。 たしかに最近やたらとテレビでも相続の話を特集しているね。 でも相続税って、ずっと先のことのようで、なんだかピンとこないよな。 それに増税になったといっても、自分には関係なさそうだし。」
- 友人
「僕もそう思っていたんだけど、いろいろ調べてみたら、そんなことはないみたいだぞ。うちのクリニックは、親の土地に建て直したんだけど、その際、親とは別居したから、相続するときに税金が不利になるみたいなんだよ。 だからあせっているんだ。」
- 院長
「それじゃあ、うちだって同じことじゃないか。 うちも考えないとまずそうだなあ。でもうちの親はまだシャンとしているからなあ。」
- 友人
「いつも治療は早く始めたほうがいいと患者さんにいっているけど、相続対策も始めるなら、早いにこしたことはないんじゃないかな。」
- 院長
「それもそうだね。 税理士に相談してみるよ。」
なぜこれほどまでに相続対策が意識されるようになったのでしょうか。 |
■ 基礎控除額が40%引き下げ
一つには相続税の「基礎控除額」が大幅に減額されたからです。 相続税には基礎控除額というものがあります。 わかりやすくいうと、財産が基礎控除額以下なら相続税は関係ないということです。 平成27年1月1日より、この基礎控除額が引き下げられました。
例えば、5,000万円の財産を子ども1人で相続するとします。 昨年までは、基礎控除額が5,000万円 + 1,000万円 × 1人(法定相続人の数) = 6,000万円ですから相続財産は基礎控除額以内であり相続税は課せられません。
しかし、平成27年1月1日以降は、基礎控除額が3,000万円 + 600万円 × 1人 = 3,600万円になるため、基礎控除額を超える1,400万円に対して相続税160万円が課せられることになりました。
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■ 税務署はお金持ち優遇しない
二つ目は相続税の税率構造が見直され、各段階での税率があがり、最高税率が50%から55%に引き上げられたからです。 平成27年1月からは、所得税の最高税率も引き上げられました。 累進税率の強化は富裕層や高所得層への課税強化といえるのです。 今や、ドクターは富裕層の代名詞ともいわれています。 ドクターはねらわれているのです。
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■ 税務署も手間がかかることはしたくない
もう一つ、気になるのが税務調査の実態です。 これまでほとんど税務調査が無かったというクリニックのご家族は要注意です。 前述の通り、今回の相続税の基礎控除引き下げにより相続税を納める人がこれまでの1.5倍くらい増えると言われています。 これは、正味の遺産額(税率をかける前の価格をいいます)約1億円前後の階層の方が増えるということです。 一方で、相続税が課税される方を階層別に見ると、課税価格5億円超の件数は5.6%なのですが、相続税収全体で見ると実に61.5%を占めています。 (財務省HP 相続税の合計課税価格階級別の課税状況等(平成25年分)https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/138.htm より) 緊縮財政により、税務調査の数そのものは減少傾向にある一方で税務調査1件に要する日数は増加しています。 より大口な事案にターゲットを絞っていることがおわかり頂けるかと思います。 やはりドクターやご家族はねらわれているのです。
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■ 税制は毎年コロコロかわる
こうした増税社会に立ち向かっていくためには、院長はクリニックの経営だけでなく、今後の税制改正の動向も把握しておく必要があります。 相続税対策の王道は、長期的な対策です。 早めに対策を講じておくことが肝心です。 しかも、決められたルールの中で合法的に実行しなければ、後々多額の負担を強いられる可能性があります。 日々の業務に追われ、なかなか税金のことまで考え、判断をする余裕がない方もいらっしゃると思いますが、一度ゆっくり考える時間を取ってみてはいかがでしょうか。
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