■ 家族信託の登場人物と基本構造
家族信託には、「委託者」「受託者」「受益者」という、3人の登場人物が登場します。
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(1) 「委託者」
自分の財産を他人に預ける人。
- (2 「受託者」
(1) 「委託者」から財産を預かる人。
- (3) 「受益者」
(1) 「委託者」が、(2) 「受託者」に預けた財産から、生み出される利益を受け取る人。
この場合の「利益」とは、例えばご自宅であれば、家に住むこと、収益不動産であれば
家賃収入を受け取ることをいいます。
(1) 「委託者」と、(3) 「受益者」は同一人物とすることができます。 実は実務上、ほとんどの家族信託は、委託者と受益者は同一人物です。 ですから実質的な登場人物は、委託者兼受益者と受託者の2名になることがほとんどです。
家族信託は、委託者と受託者が信託契約を締結することによって効力が生じます。 この信託契約では、各登場人物に何かあった場合に備えて、あらかじめ後継者を定めておくことができます。
例えば、受益者について、受益者が亡くなった後は、受益者の子供や孫を次の受益者として定めておくことができます。
また、家族信託が終了した時(信託契約で定められた委託者又は最終的な受益者が亡くなった場合等)に、信託財産を帰属させる人をあらかじめ定めておくこともできます。
この性質を利用することで、家族信託は委託者の遺言のような機能を持たせることもできるようになっています。
■ 家族信託の意義
家族信託を利用する理由として最も多いのは委託者の認知症対策です。 認知症を患い、物事を判断することができなくなってしまうと、その方1人ではほとんどの法律行為はできなくなってしまいます。
例えば、不動産の売買契約や賃貸借契約などは、ほぼできなくなります。 また銀行口座からのお金の出金や振り込みも、「認知症が進み自ら意思表示ができない!」、と銀行に判断された場合は、原則、成年後見制度を利用しなければなりません。
しかし、成年後見制度を利用すると、裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与、専門家に対する報酬の支払いの発生、本人の財産の利用方法の制限など、余計な負担がたくさんついてきます。
更に成年後見制度は、一度開始してしまうと本人が死亡するまでやめることができません。 後見人報酬は安くても月額2~3万円といわれていますので、本人が亡くなるまでこの支払いが続くとすれば、支払いの合計金額は相当高額になってしまうことも考えられます。
これらの不利益を回避するために利用されているのが「家族信託」です。
家族信託によって、あらかじめ親から子へ不動産の名義や預金を移動しておけば、親が認知症になったとしても、受託者である子が、親に代わって不動産の売却や賃貸をすることができます。 また、銀行の手続きも、元気な受託者であれば何の問題もなく行うことが可能です。
家族信託であれば、裁判所や第三者である専門家の関与はなく、後見人報酬が発生してしまうこともありません。 成年後見制度が抱える問題を一掃できるといっても過言ではないのが「家族信託」なのです。
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