■ 自然大災害発生時用のBCP
【開業医の先生からの質問 クリニックの事業継続計画BCP】 第1回で少し触れましたが、自然大災害発生時のBCPと新型インフルエンザ流行時のBCPは、リスク特性が異なる為、予想される被害や準備すべきことが大きく内容が異なってきます。
今回は、自然大災害発生時用のBCPについてお話ししたいと思います。
■ 自然大災害発生時の事業継続方針: 「できる限り事業の継続・早期復旧を図る」
「大災害時には、診療しない」とおっしゃる先生もいらっしゃるかもしれませんが、私が出会った多くの先生は、「大災害時でも、地域の患者さんの為に、いつも来てくださる患者さんの為に自分が医師としてできることをやりたい。」とおっしゃる先生が多くいらっしゃいました。
患者さんからすれば、「先生も大変な時に自分や家族を助けてくれた」その患者さんは、先生の応援者になり、近くにライバルのクリニックができてもきっと離れないでしょう。
もちろん、先生方は人気取りではなく、患者さんを救う為に診療をしていることは十分判っていますが、地域の患者さんを大変な時に救うことができれば、その見返りは大きいと思います。
大変な時でも「患者さんを救う診療をする為」の必要な要素をいわゆる「ひと」「もの」「かね」に分類して考えてみたいと思います。
■ 「ひと」の確保と連絡手段の準備
- 院長先生お一人でも診療されるのか?
- 必要な人材は、どれくらい確保すれば診療できるのか?
- スタッフの状態により、どのレベルまで患者さんを受け入れるのか?
- クリニックスタッフは、電車、バスが不通でも徒歩や自転車、バイク、自動車などで出勤できるのか?
- 状況により院長自ら、自転車、バイク、自動車などでスタッフ宅へ迎えに行くのか?
- 家族を残して、クリニックに来られる環境なのか?
- スタッフとの連絡手段は、固定電話、本人の携帯電話、家族の携帯電話、メール、ライン、など多くの連絡手段を確保できているか?
最低人員の確保について、職員の被災や、交通の遮断、家族の反対などによって多くの職員が参集できない、あるいは参集が著しく遅れる可能性を分析し、その上で、被災下であっても参集できるように、近隣の居住の職員を採用する。
バイクや自転車、自動車などの参集手段を確保する。 家族への理解を得ておくなどの方策を講ずるとともに、参集した少ない職員での業務の能率的な運用方法を策定し、それが遂行できるように訓練をしておく必要があります。
■ 「もの」の準備ポイント
自然大災害時には、クリニック自体の内外装の倒壊や、電気、ガス、水道などのインフラの遮断が起きる可能性があります。
インフラが遮断されると電子カルテやレセコンを利用している先生は、動かないと診療が難しい可能性があります。 また、レントゲン、その他医療機器、診察室の採光、水、お湯などの確保をどの様にしていくのか?
その為には、大容量バッテリーや発電機の準備、浄水器を備え、地下水や井戸水が利用できるようにしておく。 受水漕が倒れない、給水管が破断しないように補強措置を講じておく。 近隣で食料が確保できない可能性もありますので、食糧は最大人数で計算し備蓄しておくなどの対策も考える必要があります。
そして、通常外部から供給されていた物の供給が遮断される場合があり、薬剤や衛生材料など診療に使用するものが、長時間入手できない可能性があります。
数日分の診療ができる様に備蓄を準備する必要があります。
■ 「かね」の準備ポイント
新型インフルエンザ流行時と同じく、資金準備はとても大切です。
ある院長先生は、「新型コロナウイルスの影響で患者さんが2~3割しか減っていないものの、スタッフの給与の支払い、賃料の支払い、開業時の借入金の返済、子供の学費、住宅ローン返済など支払いが今までよりも多く感じ、いつまでこれが続くのか?とても不安になる」とおっしゃっていました。
十分にゆとりのある返済計画で、十分な資金をお持ちの先生ですが、それでも不安になっていらっしゃいました。
政府や地域の支援がもらえない場合もありますので、新型インフルエンザや自然大災害時に備え、ゆとりある資金計画や休業補償、所得補償の確認をしておいてください。
スタッフの給与、家賃、借入金返済などの固定費が、毎月100万円かかるクリニックの院長先生の保障を確認したところ、休診保障が月額20万円でした。
先ずは、現状の確認をされることをお勧めします。 保障一覧表の作成や簡易事業計画の作成、確認を無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。 |