■ 基金型医療法人の経営執行役
基金型医療法人の経営執行役にあたるのが、理事長、理事、理事会になります。 前回お話しました「社員」と「理事長、理事」は兼務できますが、「社員」と「理事長、理事」では役割が異なります。 一般法人(株式会社など)に基金型医療法人の経営執行役をあてはめると、次のようになります。 一般法人(株式会社など) : 基金型医療法人
- 代表取締役 : 理事長
- 取締役 : 理事
- 監査役 : 監事
- 取締役会 : 理事会
■ 理事の人数
医療法 第四款 役員の選任及び解任 第四十六条の五に 「医療法人には、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。」となっており、医療法人設立時に理事は基本的には最低3人必要になります。 東京都 医療法人設立の手引き 医療法人社団定款例では、 第31条 本社団に、次の役員を置く。 (1) 理事 ○名以上○名以内 うち理事長1名 (2) 監事 ○名 と、○の数字は任意で決めることができます。 医療法人設立申請時には、「院長先生、奥様、ご両親」3人の理事構成で申請する予定でも、将来は、「お子様、お子様の配偶者様、お孫様」が理事になることになっても良いように、理事の人数は「理事3名以上11名以内」と、理事になる可能性のある人数より、少し多めの人数で申請されるのがお勧めです。
■ 理事になれる方、なれない方
理事の選任に関するご質問で、「子供は何歳から理事になれますか?」とご質問をいただきます。 原則成人(現在は20歳、2022年からは18歳)以上です。 都道府県により異なりますが、高校卒業された18歳以上で認められている都道府県もあります。 また、「遠方の両親を理事にできますか?」というご質問も多くいただきます。 東京都 医療法人設立の手引き(平成29年6月版)には、「実際に法人運営に参画できない者を名目的に選任することは適当ではありません。」と書かれており、毎月理事会に参加できる距離に住んでいることが望まれます。 しかし、現在、遠方でも毎月クリニックへ来ている状況であれば、理事に就任できる可能性がありますし、毎月理事会出席に関わる交通費は、妥当な金額であれば、医療法人から費用として支払うことを認められることが多いようです。
■ 施設管理者(分院長など)を理事に必ず選任しなければならない
同法 第四款 役員の選任及び解任 第四十六条の五 6に、 「医療法人は、その開設する全ての病院、診療所、介護老人保健施設又は介護医療院の管理者を理事に加えなければならない。」とあり、 今後、分院や老人保健施設などサテライト展開をお考えの先生は、その施設管理者を選ぶ際に「単に施設を任せる勤務医」という視点だけではなく、「医療法人の経営に関わる理事として相応しい人か?」の見極めをされて施設管理者をお願いする必要があります。
■ 監事
監事は、医療法 第四十六条の五 8に、 「監事は、当該医療法人の理事又は職員を兼ねてはならない。」とありますので、設立時には最低、理事3名、監事1人合計4人が必要になります。(社員3人が理事3人を兼務した場合) 東京都 医療法人設立の手引き(平成29年6月版)には、 (3)監事は、当該医療法人の理事又は職員を兼ねることができません。 (4)(3)以外に、次の者は、監事に就任することができません。
- 医療法人の理事(理事長を含む)の親族(民法第725条の規定に基づく親族)
- 医療法人に拠出している個人(医療法人社団の場合)
- 医療法人と取引関係・顧問関係にある個人、法人の従業員
例: 医療法人の会計・税務に関与している税理士、税理士事務所等の従業員 (5) 監事の職務の重要性にかんがみ、実際に法人監査業務を実施できない者が名目的に選任されることなく、財務諸表を監査しうる者を選任してください。 とあり、監事は、親族や取引関係以外の第3者で実際に法人監査業務を実施できる方にお願いしなければなりません。
■ 理事長
理事長は、医療法 第五款 理事 第四十六条の六に 「医療法人の理事のうち1人は、理事長とし、医師又は歯科医師である理事のうちから選出する。」とあり、理事長は、必ず医師、歯科医師でなければなりません。
■ 理事会の議決権
理事会は、理事長、理事により構成され、主な権限には、
- 法人の業務執行の決定
- 理事の職務の執行監督
- 理事長の選定及び解職
- 競業・利益相反取引の承認
- 監事などの監査を受けた事業報告等の承認
などです。 ご注意いただきたい点は、理事会の採決は理事と理事長、各自一票の多数決で決まるので、理事長以外の他の理事が団結すると理事長の意思に関わらず「理事長の選定及び解職」ができてしまうことです。 理事の選任は、先生ご自身と意思疎通のできる信頼できる方を選ぶ必要があります。
■ 医療法人化経営計画シミュレーション + ライフプランニングがお勧め
前回お伝えしましたが、残念ながら基金型医療法人は、自動的に税金対策をしてくれる「システム」ではなく、院長先生の所得税・住民税を減らす「ツール」ですので、医療法人の仕組みを活用できなければの院長先生の所得税・住民税を減らすことはできません。 院長先生が将来のビジョンを描き、基金型医療法人の仕組みを活用した経営計画シミュレーション + ライフプランニングをされることで、院長先生とご家族の安心、安全、豊かで幸せな資産づくりができる可能性が高くなります。
■ まとめ
- 理事の人数は3人以上で上限は余裕を持った人数に
- 理事の選任は安易にせず、意思疎通のできる信頼できる方に
- 監事は、親族や取引関係以外の第3者で実際に法人監査業務を実施できる方に
- 法人の業務の執行決定などは、理事長ではなく理事会の採決
- 基金型医療法人の仕組みを活用した経営計画シミュレーション + ライフプランニングで、安心、安全、豊かで幸せな資産づくりを
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