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コンシェルジュ 佐久間 洋

リスクマネジメント・ラボラトリー

佐久間 洋

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている佐久間 洋です。

先生方は「お金のこと」「ライフプランのこと」など、医療以外の周辺知識についても様々なことで悩まれています。 特に開業されてからは「クリニックの経営のこと」「税金のこと」「職員のこと」などそのお悩みは多岐にわたります。

我々がコンサルティングの現場で先生方から「開業前にこの情報を知っていたらこんなに悩まなかったのに。」とよく言われる内容について、6回に分けてメールマガジンとセミナーでお伝えしていきます。

コラム4回目の今回は、来年1月のセミナーテーマでもある「ライフプランを実現するためのクリニック経営計画の作り方」について、セミナーでも講師を担当するドクター総合支援センターの近藤隆二氏に聞きました。

それでは、どうぞ。

【開業前に知っておきたいクリニックの作り方】
その4 ライフプランを実現するための
クリニック経営計画の作り方

【開業前に知っておきたいクリニックの作り方】

その4 ライフプランを実現するための
クリニック経営計画の作り方

■ クリニック経営を取り巻く環境

このところ、クリニックの開院を検討しているドクターからご相談をいただくことが多くなっています。 「厚生労働省がクリニックの開院制限をするのではないか?」という噂などが影響しているのかもしれません。

しかし、これからのクリニック経営を取り巻く環境は厳しさが増していく可能性があるため、慌てて拙速な開院をすることは慎まなければなりません。

現在、外来医療需要というマーケットが減り続けるにもかかわらず、毎年多くのクリニックが開院していて、その数は増え続けています。 ご年配の先生が閉院され、若くて多くの患者さんを診ようという意欲のある先生が開院しているので、厳しい競合相手が毎年増え続けているのです。

つまりは1クリニックあたりの受診患者数は減り続けるということです。 (地域によって状況が違いますので、個別の判断が必要です。)

患者さんは現在通院しているクリニックに余程の不満がなければ、あえて他のクリニックを受診しようとは思いません。 そのため、開院するということは既にある多くのクリニックと競合するということになります。

このような厳しい状況にも関わらず、クリニック開院のご相談をいただく先生の中には、しっかりとした経営計画書を用意せず、詳しい分析や対策などの根拠を持たないままクリニックの開院を決めている方がおられます。

先日、ご相談いただいた先生は、

  • 多くの業者さんに聞いてみたが、「クリニックを開院してうまくいっていないというケースは見たことがない。」との返答。
  • 「医局の先輩であまり優秀でなかった先生でも開院しているので、自分たちも開院しても大丈夫だろう。」などとみんなと話しています。

と仰っていました。

これは認識が甘いのではないでしょうか?

業者さんはクリニックを開院してもらわないと商売にならないので、クリニック開院に関して厳しいことを言わないこともあるでしょう。 また、開院した後に詳しく経営の状態まで把握している業者さんはほぼいないと考えて間違いありません。 ですので、業者さんの言葉を鵜呑みにすることは大変危険です。

また、医局の先輩のクリニック経営について、外から見ているだけで内情までは把握できませんし、経営がうまくいっているかは数年かけて判断していく必要があります。

 

■ 実現可能な経営計画書を作成する

私は開院を検討されている先生に、「経営計画書は作っていますか?」とお聞きするようにしています。 多くの方は「作っています。」と答えますが、「先生のライフプランを実現できる計画ですか?」とお聞きするとほとんどの方は首をかしげます。 経営計画書があっても、その内容を理解していない方が多いようです。

私がこれまでに見てきた経営計画書の多くは書類上ではクリニック経営がうまくいくようにはなっていました。 しかし、その計画書に描かれている院長先生の必要生活費はどれもほぼ同額になっていました。 中には生活費や、税金・社会保険料、借入金返済などを考慮していないものもありました。

これはクリニック経営の結果、現実に手元に残るお金と、先生の生活で実際に必要になるお金のことが考えられていないということです。 このような計画は絵に描いた餅で意味がありません。

例えば、私立医学部に通う長男をはじめ、これから医学部を目指す兄弟が3人いる先生と、生まれたばかりのお子さんが1人いる先生とでは必要生活費は大きく違いますが、そのような個別事情を考えずに計画書が作られているのです。

また、利益が増えるごとに税金は多額になっていきますが、その支払いなどが計算に入っていないことも多いのです。 私はクリニックを開院する前の経営計画はできる限りリアルな情報をもとに作ることをお勧めしています。

まず、どのようなコンセプトのクリニックを作るのかを決めることが重要です。 それがあって初めて必要なクリニックの広さや家賃、内装設計、施工費、導入する医療機器などが見えてきます。

また、どの職種のスタッフを何人採用するのか、人件費はいくら必要なのか、その他の経費がどれくらい必要なのかなどが導き出されます。 そして、設備投資資金や運転資金がいくら必要なのか、そのためにはいくらお金を借りる必要があるのかがわかってきます。

これらの情報に加え、診療圏調査などで見込める患者数や診療単価、原価率などをもとに経営計画書を作り、利益がいくら出るのかを計算します。

利益が出れば税金を払いますが、その後に残ったお金で借入金の返済をしなければなりません。 それらを差し引いた後、やっと手元に残るお金がいくらになるのかがわかるのです。 そして、そのお金で家計を賄わなくてはなりません。

もし家計費が賄えないのなら、クリニックの経営を継続することはできません。 それでは困りますから、どうすれば家計費を賄えるようになるのかを考えます。

患者さんから選ばれる工夫をして患者数を増やす、新たな治療方法を取り入れて診療単価を上げる、業務の効率化を図り人件費などの経費を削減するなど、様々な対策をシミュレーションしてそれを計画書に反映させます。

これを繰り返し、自分が納得できるかつ実現可能な計画を作る必要があります。 このように書くと簡単なように思えますが、実際に経営計画を作ろうとするとなかなか大変です。

まず、経営計画書を作るには具体的な将来のシミュレーションや損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の知識が必要です。 また、将来のシミュレーションをする上でライフプランの考え方も知っておかなければなりません。 そして、それらの情報を1枚の計画書にまとめなければならないのです。

これを1人で行うことは至難の業です。 身近に何でも相談できるクリニック開業の専門家を見つけておくと良いかもしれません。

また、私が講師を務める今回の1月13日のセミナーでは、クリニックを開院する前の正しい経営計画書を作るための基本的な知識をわかりやすくお伝えします。 皆さまのご参加をお待ちしております。

コンシェルジュ 佐久間 洋

いかがでしたでしょうか?

経営計画がないまま開業の計画を進めるということは、船で例えれば外洋にレーダーや羅針盤もなく出かけていくことに近いです。 予測できる波であればどのように乗り越えるのか、予測できない波が来た時のためにはどう備えるのか、など開業前にしっかりと考えていただく必要があることがわかります。

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