m3QOL君m3.com QOL君 メルマガ

コンシェルジュ 神吉 信明

リスクマネジメント・ラボラトリー

神吉 信明

皆さま、こんにちは。 m3.com上において、株式会社リスクマネジメント・ラボラトリーのコンシェルジュを務めている神吉 信明です。

今回は、家族信託について5回目の内容となりますが、読者の先生からいただきました質問にお答えをする、Q&A形式でお送りいたします。

これから家族信託を実際に行うにあたり、他の先生がどのようなお悩みがあるのか、またその解決策についての一部をご紹介させていただきます。

また最後に、家族信託の活用方法をお伝えさせていただきます。 今後のご参考にしていただければ幸いです。

それでは、どうぞ。

【家族の財産をしっかり守る!家族信託】
第5回目 先生からのご質問にお答えします

【家族の財産をしっかり守る!家族信託】

第5回目 先生からのご質問にお答えします

■ Q1.家族信託を検討するタイミングについて

私は大阪市内でクリニックを経営している60代の医師です。

いずれは妻と息子達に資産を承継することになりますが、私自身まだまだ元気ですし、息子達もそれぞれ独立していますが、仲良くやっていて家族関係も良好です。

今のところ揉めるリスクもないため、特に対策は急ぐ必要はないと考えており、仕事をリタイアした後、時間が取れたらゆっくり考えようと漠然とイメージしていますが、いつ頃から「自分の死後」の対策を意識していけばよいでしょうか?


A1.
結論から申し上げると、家族信託をはじめとする資産防衛対策、相続対策をするタイミングは、「早ければ早いほど良い!」ということになります。

なぜなら、家族信託は委託者(財産を託す人、主に高齢の親)と受託者(財産を託される人、主に子)の契約の締結によってその効力を生じるため、契約を締結する両当事者に意思能力があることが条件となるためです。

懸念されるのは、高齢の委託者が認知症を発症したり、突然の病気・事故などで意思能力・判断能力を喪失してしまったりするケースです。 厄介なのが、上記のような状況に誰がいつ何時陥ってしまうかは、誰にも分からないということです。

実際、資産防衛対策や相続対策は、資産を持っている委託者からすると、その必要性をなかなか実感しにくい性格を持っています。 自分が元気なうちから、将来認知症になることや、事故や病気で意思能力を失うことを真剣に心配している方はとても少ないのが現状です。

しかし誰の身にも起こり得る不測の事態。 この「いつ検討するのか?」という質問は、単純なようでこれ以上に重要なことはありません。 判断を間違えると想像もしない負担をご家族に背負わせることになりかねません。

「何か起こってからでは遅い!」、この一言に尽きます。

 

■ Q2. 遺産の一部を今後の「国内の医療技術発展」に役立ててほしい

都内で開業医をしている者です。  私には子供もおらず両親も他界しているため、私が死亡した場合の相続人は兄弟達になります。

兄弟達はそれぞれ独立して立派に生活しており、私の財産をあてにしている者はいません。 最低限の財産を兄弟達には相続してもらい、できることなら残りの財産は、信頼のおける医療団体に寄付したいと考えています。

家族信託はオーダーメイドで融通が利くと知人の弁護士から聞きましたが、こんな希望も叶えられるのでしょうか。



A2.
はい、可能です。

さらに、委託者の死亡時に一括で全額を寄付するのではなく、死後長期にわたって分割して寄付を継続していくことも可能です。

「時空を超える」ような、継続的な寄付に違和感を覚えるかもしれませんが、家族信託を活用することで可能になります。

詳細については、法的にかなり深い領域であるため、全てをここではご説明しかねますが、例えば、一般社団法人を設立し、ご自身の判断能力喪失後の財産管理をこの一般社団法人に委ねます。

つまり一般社団法人を受託者として指定することで、先生の大切な財産は、先生の身に何かあっても、一般社団法人を通じて医療団体に継続的に寄付が行われることが可能となり、先生の想いは達成することになります。

コンシェルジュ 神吉 信明

いかがでしたでしょうか?

今回はドクターの先生からの実際にあったご質問とお答えをほんの一部ですが、紹介させていただきました。

家族信託は契約行為ですので、委託者の意思さえあれば、色々なことができるということが分かっていただけたかと思います。

さて一つ目のご質問にもありましたように、「いつ検討するのか?」という点ですが、家族信託には【停止条件付(効力発生条件付)】という活用方法があります。

これは、家族信託契約は締結するものの、委託者に何かが起きた時に初めて効力を発生させるという内容で、例えば「認知症になったら。」という条件付きの内容にしておくことで、「委託者が認知症になれば家族信託の効力が発生し、委託者が元気なうちは何も変わらない。」という方法です。

これは活用方法の一つですが、家族信託は単純に先生の手元から資産を次世代に移すためというより、先生が『ご自身の資産を意思能力の有無に関わらずコントロールするためのツール』と呼べるかも知れません。

是非、先生のツールとしてお使いいただければと思います。

(※上記のいずれのケースも一般的な事例です。 法的な専門性、オーダーメイド性の高い設計に対応できる専門家は限られています。 まずは一度、ご相談ください。)

次回(最終回)は、家族信託を利用するうえで必要となる費用について解説をさせていただきます。 最後までお読みいただきありがとうございました。

ご不明点やご質問など、お気軽にお問い合わせください。

   ⇒ ご質問・ご相談はこちら