■ 背景
2018年の労働力調査によると、日本全体の労働者数は6664万人、うち非正規労働者数は2120万人、全体に占める非正規雇用の割合は31.8%となっています。 また、正規労働者と非正規労働者との賃金格差が2016年ベースで1.5倍~1.8倍となっており、その所得格差が子どもの教育格差などの新たな格差を生んでいるとされています。 国は、正規労働者と非正規労働者の待遇を均一にすることによって強制的に格差是正を行い、低所得者の所得ボトムアップと消費の拡大・財政の健全化を図ろうとしています。 労働力調査(基本集計)平成30年(2018年)平均(速報)結果の要約(総務省統計局) https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/youyaku.pdf 平成29年度 年次経済財政報告(内閣府) https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je17/pdf/p02013.pdf
■ 非正規社員の定義
今回施行されるパートタイム・有期雇用労働法では、「非正規社員」という言葉を使い、その「非正規社員」を「パートタイム労働者、有期労働者、派遣労働者」と定義しています。 「パートタイム労働者」とは、パートタイマー、アルバイトなど正社員と比べて勤務時間が短い、もしくは勤務日数が少ない労働者で、「有期労働者」とは、雇用期間が「令和●年●月●日から令和●年●月●日まで」と期間が決まっている労働者、また「派遣労働者」とは、雇われている会社とは別の職場で勤務する労働者のことを示します。 「パートタイマー」「アルバイト」「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」など、呼び方は異なっても、この「パートタイム労働者、有期労働者、派遣労働者」の条件に当てはまる労働者であれば、今回の「正社員と非正規社員の均等待遇」の対象となります。 また医師の場合、正社員よりも勤務日数が少ない方を「非常勤」と呼ぶことがありますが、この場合もパートタイム労働者(非正規社員)と位置付けられます。
■ どのように変わる?
実際にどのように運営していかなければならなくなるのか、重要な点をお伝えしていきます。 基本給・昇給 能力や経験、勤続年数に応じて基準が決められていれば、それと同一の基準で支給しなければならなくなります。 つまり、能力と経験が同じ正社員とパートタイム労働者の場合、正社員1時間当たりの給料がパートタイム労働者の時給と同額でなければならなくなります。 また正社員に毎年昇給がある場合、その昇給のタイミングおよび昇給の幅はパートタイマーも同じになります。 精皆勤手当 正社員に支給していれば、それと同一の基準で支給しなければならなくなります。 例えば、「正社員の月の所定労働日数」の半分のパートタイム労働者がいた場合、そのパートタイム労働者が所定の勤務日に1日も休まなかったときは、精皆勤手当を支給しなければなりません。 均等待遇に則れば、その金額は正社員の精皆勤手当の半額を支給することになります。 賞与 会社の業績等への「労働者の貢献」に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければなりません。 就業規則や雇用契約書に「基本給の〇か月分」などと記載があり、恒久的に支給されていると判断されるものであれば、パートタイム労働者にも賞与を支払う必要が出てきます。 慶弔休暇 それぞれの職場では、結婚・出産や家族が亡くなったときなどに対して慶弔休暇を与えているところもあり、正社員に対して就業規則などで慶弔休暇の日数が決まっているのであれば、非正規社員にも同じだけの日数を与えなければならなくなります。 正社員と比べて所定労働日数が同じで1日の勤務時間が短いパートタイム労働者(下図 短時間労働者A)であれば、慶弔休暇も同じ日数を与えるだけでよいのですが、例えば「週2日勤務」といった所定労働日数が少ないパートタイム労働者(下図 短時間労働者B)は、振替で対応するのか、同じ日数の慶弔休暇を与えるのか…というような問題が生じます。 厚生労働省の指針では、そのような所定労働日数が少ない短時間労働者(パートタイム労働者)に対しては、勤務日の振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみに慶弔休暇を付与することは問題とならないとしており、それぞれの職場に運用を任せています。 短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/content/000467457.pdf P22
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