■ 資産運用した方が良いの?
高橋さん、5か月間証券の部署で投資について学んできましたが、改めて資産運用に関して聞きたいことが出てきました。 何でも質問してください。 そもそも資産は運用した方が良いのでしょうか?? 元本割れのリスクを負ってまで資産を運用することには抵抗を感じてしまいます。 必ずしも資産運用をする必要は無いと思います。 公的年金制度・金利・物価の変化といった外的要因と、個人の収入や生活レベルといった内的要因が現状のままで進んだとして、今後死ぬまで豊かな人生が送れるのであれば、むしろリスクは取らない方が良いと思います。 せっかく得たお金が減ってしまう可能性があるのなら、減ることの無い定期預金の方が確実・堅実な道ですよね。 金利が低い昨今でも定期預金に入れておけば、元本を割り減ってしまうことも無いですし。 投資は、自分が出したお金が増えて戻ってきたら良いということになりますが、一般的に1万円を投資したとして何十万円にも増えることはなかなか無いですし、若いときは所得を上げられるように自分への投資に力を入れた方が良いかもしれません。 なるほど。 違う見方をすると、今の所得のままでも節約できる額が増えれば貯蓄は増えていきますよね。 はい。 だから亡くなるときまでの蓄えが十分なのであれば、資産を運用する必要は無いとも言えます。 では、自分は将来どのくらいの資産が必要になるのか、見通しを立てておく必要がありそうですね。
■ 見通しを立てる、とは?
はい、でもそのためには色々なことを考慮する必要があります。 どんなことがありますか? 例えば事故で働けなくなってしまったときは、収入が無くなってしまうなど見通しを立てていても大きく崩れてしまう可能性がありますよね。 そうですね。 生命保険に入っていたら働けなくなった分の損失を補填してくれるかもしれませんが、資産運用で十分なリターンがあって生活していけるのなら、保険料を払う必要が無いかもしれません。 それができれば良いですよね。 昔は預金でも、リターンが6%というすごい時代もありましたが、今はそんなことも無いですし。 昔はすごく金利が良かったですけど、今は0.01~0.2%なことを考えると、定期預金だけで資産を増やしていくことは難しいですよね。 出展元: 日本銀行 http://www.boj.or.jp/statistics/pub/sk/index.htm/ 銀行預金金利(1994年10月3日まで) 金融1 [PDF 256KB] 金融2 [PDF 232KB]より筆者がグラフを作成 ※定期預金は1998~1994年までは1年、1995~1998年までは1年未満2年以内、1999~2019年までは3年を採用
■ 財政検証とは?
将来の資産のことを考えると、給与所得のほかに公的年金についても考える必要があります。 公的年金は長期にわたる制度ですので、将来の公的年金の財政見通しを立てた「財政検証」というものを5年に1度厚生労働省が発表しています。 財政検証…先日新聞でそんな言葉を見かけましたが、何のことだかあまり理解できていません…。 保険料を支払っている人数・運用資金の額・公的年金を受け取っている人数と、経済が順調に成長した場合から、上手く成長しなかった場合を想定した6パターンを組み合わせてシミュレーションを作成しています。
出展元: 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html 国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-2019(令和元)年財政検証結果-[PDF:1,379KB] 財政検証は将来どのくらい公的年金がもらえるのか、検証するために作成されているのですが、10年前は0.7%、5年前は0.5%、そして今回は0.3%と経済前提の最低設定値がどんどん下がっているんです。 前回の財政検証を見ると、現実の経済成長率は、最も悪いとされたシミュレーションの更にその下を進んでいましたし、今後もそうなる可能性はあります。 それではきちんとしたシミュレーションになっていない気がします。 そうなんです。 だから公的年金に関しては建設的な見通しが立っていないと言えるかもしれません。 必要額の見通しを立てておいても、その見通しが崩れてしまう可能性が大きいということなんですね。 その通りです。 給与所得を増やす以外には、公的年金を当てにすることも難しそうですし、自分で生涯必要な資産を確保するためにも定期預金だけにしておくのではなく、資産運用を視野に入れていく必要がありそうだと感じました。
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