皆さま、こんにちは。 TOMA税理士法人 ヘルスケア事業部です。 今回は「医療法人関連の医療法改正情報」の第2回、「認定医療法人制度の非課税要件」についてお伝えします。 平成29年6月14日に公布された医療法等の一部を改正する法律により、持分の定めのない医療法人への移行計画の認定制度が改正され、平成29年10月1日から施行されました。 前回は改正された認定医療法人制度の概要についてお伝えしましたので、今回は改正に伴い、新たに追加された認定要件とそれをクリアするための主な対策等についてお伝えします。
1.相続税法第66条第4項及び相続税法施行令第33条第3項について
前回の復習になりますが、移行前の医療法人の出資者が、その出資持分を放棄したことによって親族等の相続税又は贈与税の負担が不当減少した場合には、相続税法第66条第4項の規定の適用を受け、医療法人を個人とみなし、医療法人に対し贈与税が課税されます。 この不当減少要件の判定は、相続税法施行令第33条第3項に書かれています。 主な項目は以下の通りです。
- 医療法人の運営組織が適正である
- 同族親族等関係者が役員等の総数の3分の1以下である
- 医療法人関係者に対する特別利益供与が禁止されている
- 残余財産の帰属先が国等に限定されている
- 法令違反等の事実がない
この要件が、改正前の不当減少要件となっていました。 特に 2. の「同族親族等関係者が役員等の総数の3分の1以下」の条件は、役員を親族外の人で多数占める必要があり、今まで親族経営をされていた先生方にとっては、ハードルが高い要件でした。
2.認定医療法人になるための運営に関する8要件
今回の改正では、親族経営を認めたうえで下記の8つの要件を満たせばよいことになりました。
- 法人関係者に対し、特別利益を与えないこと
- 役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること
- 株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
- 遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと
- 法令に違反する事実、帳簿書類の隠蔽等の事実、その他公益に反する事実がないこと
- 社会保険診療等(介護、助産、予防接種を含む)にかかる収入金額が全収入金額の80%を超えること
- 自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一基準によること
- 医業収入が医業費用の150%以内であること
6. の「社会保険診療等」には自費である予防接種の収入も含めて計算してもよいことになっています。
3.注意点と主な対策等
(1)役員社宅について
こちらは 2.- 1. の「法人関係者に対し、特別利益を与えないこと」に抵触することになります。 役員のみ社宅を利用している場合は認定要件を満たさない可能性があります。 ただし、役員も従業員も同じ社宅規定に基づいて利用している場合は問題ないと考えられます。 この場合は全役員と従業員と共通の社宅規定を作成、運用していくことでクリアできます。
(2)役員報酬について
2.- 2. の「役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準」とは具体的にいくらになるのでしょうか。 厚生労働省が参考にしたのは、社会医療法人の認定基準の『不当に高額なものとならないような支給基準』と特定医療法人の承認基準の『役員一人につき年間の給与総額が3,600万円を超えないこと』です。 今回はこの役員報酬3,600万円が認定医療法人になるための要件となりそうです。 この対策としては、出資持分の一部払い戻しの方法が有効と考えられます。 たとえば、現在の役員報酬が4,000万円だった場合、差額の400万円の6年分(移行後6年間は要件を満たしているかの報告義務があります)の2,400万円を、一部払い戻しとして受け取る方法です。
(3)MS法人について
MS法人を所有していることで直ちに認定要件を外れる訳ではありません。 ただし、MS法人との取引は個別の事案に応じて、その対価の適正性など、様々な事情を勘案して総合的に判断されます。 たとえば、MS法人との取引金額が、第三者の法人に対しての取引でもほぼ同等の金額で取引されていることが証明できれば、クリアできるのではないかと考えられます。 移行期間は、平成32年9月30日までの3年間です。 認定医療法人になるための準備期間と厚生労働省側の審査期間もあるので、直前のかけこみ申し込みには注意が必要です。 持分なし医療法人への移行に興味のある先生方はぜひご検討してみてください。
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