■ 「クリニックM&A」とは何か?
はじめに、M&Aとは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略で、企業の合併および買収の総称です。 複数の企業がひとつになる「合併」、ある企業が他の企業を買い取る「買収」などを意味します。 M&Aは、親から子などへの親族間での承継とは異なり、第三者への承継として行われます。 クリニックM&Aの基本のかたちはシンプルです。 現経営者であるA院長(承継希望者)から、新たな経営者となるB院長(開業希望者)にクリニックを譲渡するというものです。 院長が交代するだけなので、クリニックそのものは今まで通り地域に残り、引き続き診療が行われます。
■ クリニックM&Aにより承継開業した場合の主なメリット
- 新規開業に比べて初期コストが安く済む
- 患者様とのつながりごと経営を引き継げるので、事業としての立ち上がりが早い
- 従業員の人材確保ができる
- 事業規模や診療圏を拡大できる
特に資金面で見た場合、M&Aによる承継開業のメリットが際立ちます。 平成20年~25年に当事務所で開業に携わったクリニック(主な標榜科目: 内科)のデータを分析したところ、承継開業は新規開業と比べて、運転資金の面から見ると3,000万円~4,000万円、初期投資額を合わせると8,000万円~1億円の優位性があるという結果が出ました。 新規開業したクリニックの運転資金の推移を見ると、開業以降、長期間にわたって目減りしていました。 開業当初の患者数が少なく集患に苦労したためです。 新規開業では運転資金の目減りが収まるまでに1年~1年6か月、長い場合には2年6か月以上の期間を要しました。 一方、承継開業では常連の患者様の多くが引き続き来院していただけるため、開業直後でも十分な収益が上がり、多くの場合、運転資金は増加しています。 今後、患者数の減少や診療報酬の減額などで厳しくなっていく経営状況を考えると、このメリットには大きな意味があると言えます。 (参考文献:岡本雄三(2015)『開業医のためのクリニックM&A』(P.81-84) 幻冬舎メディアコンサルティング)
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